二十五万で買われたトモダチ 肌寒い風が頬を撫でる秋口。どんよりとした雲が一層体感温度を下げてくる。襟元を軽く閉じながら肩にかけた鞄を背負いなおすと、簡素な無地のケースに包まれた携帯がメッセージの着信を告げた。
確認すると、事務所から臨時の仕事依頼だった。この後は特に予定も無かったからいいか、と了承の旨を連絡する。
「なぁ夏油この後予定ないって言ってたよな? なら飲み行かね?」
「や、今日はパス。バイト入った」
後ろからがばりと肩を組んできた友人の腕をそっと外しながら、目線は携帯から外さずに断りを入れた。この時間なら家によって着替える時間もあるな、と頭の中で算段をつける。
「えー何だよ暇っつってたじゃんか! 急にシフト入れてくるとかブラックじゃね? サボっちゃえよそんなの」
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