逃避行から始まるhpnz 逃避行から始まるhpnz
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「──ネズさん?」
なんでこんな所にいるんだ? 雨音しかなかった世界に背後から声を掛けられて振り返ると、妹の男友達である少年が傘を差し出して立っていた。
天候の変わりやすいここガラルでは、外出時に天気予報をチェックしてもそうそう当てになるものではない。だから、大抵のガラルの人間は荷物になる傘を持たない。
ざあざあと降りしきる雨の中、ずぶ濡れで歩いていたネズは、水で重たくなった前髪を流しながら不思議そうに見上げてくる少年ホップに微笑んだ。
「やあ、良い天気ですね」
「曇り空が好きなのは知ってるけど、今日は散歩には向かないんだぞ」
「皮肉ですよ」
ネズさんらしいなぁ、と言いホップはネズを傘に入れる。ポタポタと全身を伝い落ちる水滴に、もはや傘など必要はないのだが、ホップの気遣いに大人しく従う。
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