元、子供アイドル 芸能界と言うモノは、良い方向に表現すれば“懐が深い”“身内に甘い”“掌返しがすさまじい”等が上げられる。…最後のは良い方向に取れることも有る、と言う事で。
大仰に言えば社会の縮図と言ってもいいかもしれないし、一般社会とは異なる理の世界とも言えた。
つまり結局何が言いたいのか。単純に闇が深いと言う事だ。
光の表舞台に立つ一握りの成功者。世間に一度でも、それこそ少しでも名を知られれば幸せな方。
大多数は名有りのモブであるからして、表舞台に立ち目立とうと暗い底で足掻く。
演者だけではなく製作側でもそうだ。他人と同じ事をしていては、この世界で目立つ事も、のし上がる事も出来ない。ありきたりな設定では、企画書に目を通してさえ貰えず打ち捨てられて埋没していく――
そんな中、とある事務所が10歳から13歳限定の男児だけで結成されたアイドルグループを生み出した。
ただの子供アイドルグループなら既に世に放たれている。とある事務所はそこに付加価値をつけた。
社会全般に受けようとするから駄目なのだ、だったら一部のニッチな嗜好を持つ者にピンポイントでウけるようなネタを仕込めば良い、と。
これが一部界隈でのみ一時期少しだけ話題になった、『妖怪ボーイズアイドルグループ・YO!怪』の誕生秘話?である。プロデューサーのネーミングセンスは死んでいた。
主要メンバー(コスプレ)の内容は、都市伝説であるゲゲゲの鬼太郎をパク…オマージュして、鬼太郎とその仲間達。
鬼太郎をセンターとし、猫娘・砂かけ婆・子泣き爺・一反木綿がメンバー。流石にねずみ男はメンバーに選ばれなかった。世間的に色んな意味でバッチいと広く認識されてしまっていた後なので。というか布は良いのかというツッコミは無しの方向。
ニッチ通り過ぎてキワモノだと突っ込まれなかったのは、プロデュースを決めた責任者が無駄に偉かったせい。むしろ失敗して失職してしまえばいいと思われたか、どちらにせよ世知辛い。
本物と真逆のカラーリングにしたり、キャラ付けを元ネタから酷く遠ざけて変えたり、年齢を弄ったり。本物から訴えられても「別人ですが何か」と逃げる気満々のそれら。
と言うかネタ的に地下アイドル向きじゃないかコレ?
男児グループなのにわざわざ性別が女のコスプレを二人も入れて居るのは仕方がない。流石に目玉親父の全身タイツ+被り物コスプレをいたいけな少年にさせる勇気は事務所に無かった。と言うか布。手足の生えたふんどしデザインだって等身大の目玉親父張りに酷い。本当に何で目玉には引いて一反木綿には誰も突っ込まなかったんだ…?
まあ、必死に集めた情報が固定化された面子だけだったからと言うのでどうしようもない。
というか鬼太郎周辺に拘らずに他の妖怪に目を向ければ、わざわざ弄らなくとも格好良いのから可愛いのまで選り取り見取りなのになと今なら思う。
ちなみにマネージャー♀はグループ活動中ずっとメンバー候補から外されたねずみ男のコスプレだった。ネイルをピカピカにする事も、色つきリップも、隠れたオシャレさえ許されなかった。本物は素足だけれど流石に履物は許されたが今時普通の靴売り場では見かけない正真正銘の草履だったし、誰が作ったのか編み方が非常に荒くて足裏がチクチクして痛いし小石踏んだら足裏に刺さってガチで痛いと嘆いていたっけ。彼女だけは全力で泣いて良い。
更に言うならメジャー級人気になれる前に解散。猫娘役が「女の子だと思っていたのに男だった!騙された!」と言うトンデモな理由で過激派ファンに襲われて、それを庇った鬼太郎役が大怪我をして病院送りになったせいだった。
そもそもボーイズグループって最初ッから表現していただろうが。騙されたも何もお前が勝手に女の格好をしている男を女と思い込んでいただけだっつうの、とは同僚猫娘♂の言。それな。
まあ、最初から何の力も無いものが妖怪の世界に係わるべきではなかったのだと、鬼太郎役を担っていた少年は治療を受けた病院で溜息を吐いていた。勝手に姿を使った罰だ、因果応報。ツケは払わなきゃなァ?
ちなみに彼だけは、コスプレ内容を知った時にそりゃあもう本気で反対した。その時点では“記憶を取り戻してすらいなかった”にも係わらず。
親戚が勝手にサインした契約内容と、仲間内での多数決に負けて今まで流されて来たが、これで良かったのだ。記憶を取り戻してからはそうとしか思えない。
結果的に「傷物になった子供なんて金儲けにも使えないし要らない」と保護者代わりの親戚に捨てられはしたが、こちとら外見上は未だに10歳のちびっこでも、記憶を取り戻した今となっては精神面が昭和の頑固親父だ、愛も恩も感じていない相手に捨てられても精神的に傷付く事は無い。
外見上は酷く傷付いたように見せて、心では清々したとド派手に舌を出す。二度と俺の人生に係わってくるなよ!!
あ、その前に両親の保険金や財産を取り戻さなくちゃだ。
情に脆くて正義感が強くてチョロ…御しやす…話を聞いてくれる大人を見つけなくちゃだな!