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    mamiya10192

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    mamiya10192

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    本当は去年の青山誕に上げるつもりだったものです。間に合わなくて放置してましたがオンリー開催ということでいい機会なので書き上げました。

    ##君のきらめきが止められない_展示

    パーティーゲーム僕の誕生日にパパンとママンはいつもたくさんのプレゼントをくれた。
    食べきれないほどに並べられた料理。ママンお手製の大きなチーズケーキ。ふかふかのぬいぐるみ。綺麗な洋服。
    そして最新のゲーム機とソフト。
    毎年「お友達と遊んでね」という言葉付きで贈られたそれらは僕以外の人の手に触れられたことはない。"個性"を貰う前は友達なんていなかったしそれから出来た数少ない友達もゲームに興味ない子ばかりだった。
    毎年両親は僕の誕生日を豪華にお祝いしてくれる。料理もプレゼントもとっても嬉しい。
    でも"ゲーム"に関してはあまりいい思い出はない。
    『どーなつ をたおした!』
    画面に出てくる敵プレイヤーの名前を確認しつつ他の敵に目を向ける。相手は僕側の味方を倒すことに夢中になっていて壁の後ろにいる僕に気づいていない。チャージを溜めてネビルレーザーを放つようにインクを放った。

    雄英に入ってから初めて迎えた誕生日は例年より一段と凄かった。家の外壁にはイルミネーション。大人数でパーティーしても余りそうな料理の量。プレゼントもいつもの10倍はあったはず。
    今年に限って異常なほど豪華になってるのはパパンとママンの罪滅ぼしなんだろう。もちろん僕を純粋にお祝いしたいという気持ちもあるんだろうけどそれ以上に息子を内通者として学校に行かせてる負い目の方が大きいんじゃないだろうか。じゃなきゃ誕生日に「ごめんね」なんて言葉は贈らない。
    勝手にいやな気持ちになっていたらいつのまにか試合は終わっていて"Finish!"と試合終了の文字が現れた。考え事をしていても指は動くから不思議だ。判定が出て僕たちのチームの勝利演出が流れる。そのまま次の試合を続行した。
    このゲームも今年の誕生日に貰ったものだ。人間のような、イカのようなよく分からない生物がインクを塗って陣地争いをするという珍しい設定で世間ではとても流行っているらしい。どれだけ敵を倒せたかではなくインクを塗った面積で勝敗が決まるのでシューティングゲームが苦手な人でも楽しく出来るのが魅力なんだとか。確かにこのゲームは純粋にやれば楽しいのかもしれない。僕は何も考えたくなくてゲームをやっているだけなんだけど。
    実家にいた頃は自室に篭って勉強かこのゲームをしていた。前より居間に顔を出さなくなった僕を両親は心配していたけど「プレゼントしてもらったゲームをやってる」と言ったらほっとしたように笑った。でも本当は2人の申し訳なさそうな目が辛くて自室に篭っていただけだしゲームをしていたのも多少気が紛れるからやっていただけだ。
    寮に入ってからゲームをする時間がもっと長くなった。登下校の時間がなくなったのも大きいけど何より自室に篭る時間が実家にいる頃より増えたのが1番の原因だ。下に降りて皆と仲良くお喋りすればいい?そんなこと出来るわけない。
    だって僕にはそんな資格ないんだから。
    「…あ」
    僕が操作しているキャラクターから悲鳴が上がる。敵にやられたみたいだ。
    ちゃんと集中しよう。こんなみっともないことは考えないように。

    ☆☆☆

    眠い。結局寝る気になれなくて深夜の1時頃までゲームをしてしまった。深夜までゲームをしてしまうと次の朝起きるのが辛くなる。理解してるはずなのにいつも僕はゲームをしてしまう。布団に潜るといろんなことを考えてしまうから。それでも日中は眠くなってしまう。しょうがないから夕飯の時間になるまで寝ようかな。
    「…!……」
    「………!!」
    なんだか談話室が騒がしい。また上鳴くんや峰田くんがいやらしい話で盛り上がってるのかな。
    寮のドアを開けると男子全員が1つのソファーに溜まって騒いでるのが見えた。爆豪くんもいるのは珍しい。みんな上鳴くんと常闇くんのスマホを覗いて何か盛り上がってるみたいだった。
    「あ!青山くんおかえり!」
    最近仲良くなった緑谷くんが僕に笑いかけてくる。僕もいつものキラめくような笑顔を返した。
    「ただいま☆みんな何でこんなに盛り上がってるんだい?」
    「今度発売されるゲームの話をしてたんだ!知ってるかなこれなんだけど…」
    緑谷くんがスマホの画面を見せてくる。そこには僕もよく知ってるゲームの紹介画面が表示されていた。
    このゲームはオープンワールドのアドベンチャーゲームで“どこに行って何をするのも自由"が売り文句だ。戦いを避けて探索するのも良し、なんならラスボスを倒す為の手段を一切無視して真っ先にラスボスに向かって行ってもいい。最終目的はラスボスを倒すことだけどそこに行くまでの道筋は何をしたって良い。いろいろ好き放題やれるのがこのゲームの良さだ。
    僕も数年前プレイしていて結構やり込んだ記憶がある。ただよく見ると僕がプレイしていたものとはタイトルが違う。グラフィックも前作よりは向上してることから画面に表示されているゲームは前作の続編ものなんだろう。
    「続編出たんだ」
    ぼそっと呟いた言葉はしっかり緑谷くんに届いたようで彼は目を大きく見開いた。
    「えっこのゲーム知ってたの?」
    「うん、これの前作やってたから」
    「そっか…青山くんもゲームとかするんだね!あんまりそんなイメージなかったからちょっと意外だな」
    「え」
    彼のびっくりしたような顔を見て僕はしまったと思った。もしかして今のは「僕」らしくなかったのかもしれない。
    「…でもそんなやってたわけじゃないよ☆謎解きとか難しくて途中で投げ出しちゃって」
    慌てて取り繕うように嘘をつく。
    別に嘘をつく必要はない。でもみんなが知ってる「青山優雅」のイメージを必要以上に崩したくなかった。
    「あぁ僕もこのゲームやったことあるけど結構祠とか謎解き難しいとこあったよね。四体の神獣もギミック難しいところあって特に雷のところは苦労したよ僕スニーキング上手くないからアジトとのところとかも苦労して…待てよそれは雄英入る前の話だから今やったら前より上手く攻略できるんじゃないか?スニークを極めるのもヒーローにとっては必要なことだし…ゲームで練習するのも無駄じゃないよなあぁでもあのアジトは1回やったらもう出来ないんだよな…ヴァッ!!」
    「そのブツブツやめろやクソデク!!」
    爆豪くんからコントロール抜群の箱ティッシュが投げられて緑谷くんのいつものブツブツが止まった。
    ああだからこんなに盛り上がってたんだ。みんなの様子を見る限り男子の大半がこのゲームをやったことがあるんだろう。
    頭を抑える緑谷くんとまだ怒っている爆豪くん。それを苦笑いで見守ったり注意するクラスのみんな。
    ちょっと勇気を出せば僕だってその輪の中に入れるはずなのにずっと纏わりついてくる罪悪感のせいでただみんなを見つめることしか出来ない。
    「…青山くん大丈夫?何か顔色悪いよ」
    緑谷くんが僕を心配そうに見つめてくる。その心配をとても嬉しく思うと同時に僕の中の罪悪感が加速した。
    「ちょっと具合悪いのかも…夕飯まで寝てるね☆」
    「えっ大丈夫!?なんならご飯部屋まで届けるけどー」
    「そこまでじゃないから平気だよ。じゃあまた後でね」
    彼の言葉を遮って逃げるようにエレベーターに乗りこむ。これ以上心配を掛けないように扉が閉まる前に軽く手を振った。扉が閉まりエレベーターがゆっくりと振動するのを感じながら息を吐き出す。
    「しんどいなぁ」
    自分の何もかもが。
    普段はあんまり気にしないようにしてるのに何で今日はこんなに気になってしまうんだろう。やっぱりあんまり寝てないからかな。部屋に戻ったらさっさと寝てしまおう。寝ればきっとこの嫌な気持ちも少しは消えるはずだから。

    ☆☆☆

    時計は午前1時。しっかり深夜だ。
    なのになんで僕はこんな時間に起きてるんだろう。
    あのまま部屋に戻って夕飯まで寝て、お風呂に入ってそれでまた22時ごろに寝てー
    …そりゃそんなに寝てたらこんな変な時間に目が覚めるよね。
    ずっと布団の中で寝返りを打ったりしてるけど眠ることができない。変に目が冴えてしまった。また寝返りを打つ。ふと机に置いてあるゲーム機が目に入った。
    「…………」
    布団から出て上着を羽織る。どうせ明日(もう今日だけど)は休みだし深夜にゲームをしたって支障はない。
    ついでに何か飲もうと思い立ち部屋から出た。

    こんな時間だから当たり前だけど談話室には誰もいない。夕方あんなに騒がしかった談話室も今はしんとしている。
    冷蔵庫のドアを開けて共用の麦茶を取り出そうとしたとき片手が塞がってることに気づいた。
    「ゲーム機…持ってきちゃってる」
    飲み物を取りに行くときに部屋に置いてきたはずだったけど無意識に持ってきてしまったらしい。
    「まぁ別にいっか…」
    どうせ誰も来ないだろうしここでゲームしたって誰も困るわけじゃない。
    麦茶をワイングラスに注いで昼間男子が集まっていたソファーに座る。そのままゲームを起動した。
    「とりあえずこのモードでいいかn」
    「ギャアアアアァッ!!!」
    「!!?!?」
    物凄い叫び声がした方を見ると上鳴くんがエレベーターの中で座り込んでいる。声も出せない状態なのか口をぱくぱくさせながら呆然としていた。
    「上鳴くん!?一体どうしたんだい!!」
    「あ………あ、あれ?青山…?」
    急いで上鳴くんに駆け寄り状況を把握する。
    上鳴くんは腰が抜けてしまったようで1人で立つことが出来ずどうにか支えてソファーに座らせた。電気をつけて彼のところに戻ると上鳴くんは少し落ち着いたようで深く溜息をついた。
    「めっちゃビビったわ…やばいお化けかと思ったらお前かよ……」
    「え!?僕を見て驚いてたの?」
    「暗闇ん中で1人顔面だけ照らされてる奴いたらビビるだろ!」
    暗闇…ブルーライト(ゲーム画面)に下から当てられて顔だけ照らされてる…
    あぁ、うん。想像したらちょっと怖いかもしれない。
    「ていうか電気もつけないで何やってたんだよ?」
    「…ちょっと何か飲もうとしてただけだよ☆そういう君は?」
    「俺も喉乾いて下降りてきただけ」
    「そっか☆じゃあ僕そろそろもど…」
    「あれ、それゲーム機?なんかゲームやってたの?」
    ゲーム機をすっと背中に隠そうとしたけどあっさり上鳴くんに見つかってしまう。一瞬躊躇したけど隠す方がおかしいと思ってゲーム画面を上鳴くんに見せた。
    じっとゲーム画面を見つめる上鳴くんを見てるとなぜか焦るような気持ちになってくる。
    「あーやっぱり!これめっちゃ気になってたやつ!」
    「えっ このゲーム知ってるの?」
    「うんだってこれ超有名じゃん!実況動画見てずっと気になってたんだけど金無くて買えなくてさー」
    目をキラキラさせて画面を見つめる上鳴くんはまるで子供みたいだ。その幼い様子が少し可愛く思えきてゲーム機を彼に差し出した。
    「良かったらやってみる☆?」
    「え!?いいの?…あーでも俺操作いまいち分かんないから先に青山やってみせてよ」
    「いいよ☆僕のキラめくプレイを見せつけてあげる☆」
    1番定番かつシンプルなモードを選んで試合を開始する。このモードのルールは至って単純でインクが塗られた面積が大きい方が勝ち。試合時間も3分で終わるからちょっと暇を潰したい時にもちょうどいい。初心者の上鳴くんに見せるにはピッタリだろう。
    「え、めっちゃ上手くね!?それ当てられるんだ」
    僕が愛用してるスナイパーライフルの様な武器で敵を倒したのを見て上鳴くんが賞賛してくれる。ちょっと得意げに「このぐらいお手のものだよ☆」と返すと彼は素直に再度感嘆の声を上げてくれた。
    試合は終わり無事勝利の演出が流れる。一度ゲームから離脱しゲーム機を上鳴くんに渡した。
    「ほら☆やってみる?」
    「あ、うん!おすすめの武器とかある?」
    「とりあえず初心者にはこれかな…」
    チュートリアル用で渡される武器を彼に選択させる。少し試し撃ちをして彼も試合を始めた。
    結論から言うと初めてにしては上鳴くんはかなり上手かった。塗りも意識しつつ敵をちゃんと処理する。実況動画を見てたと言っていたけどそれだけでコツを掴んだのだろうか。
    「あーっまたやられた!でもこっから巻き返せるよな!」
    敵に倒されて悔しそうにしながらもすぐに切り替える上鳴くんを見て少し羨ましい気持ちになる。僕はこんなふうに切り替えて前を向くなんて事は出来ない。自分では切り替えられたと思ってもまたすぐ自己嫌悪に陥る。
    「…すごいね君は」
    「え?なんか言った?」
    「ううんなんでも☆」
    試合が終わる。戦況は互角のように見えたけどギリギリ上鳴くんのチームが勝ったようだ。彼は結果を見て嬉しそうにガッツポーズをした。
    「やった!一瞬負けたかと思ったわー…」
    「かなり僅差だったね☆次は別の武器使ってみる?」
    「やりたいけどこんな時間だからなー…さすがにそろそろ寝ようぜ…あ、そうだ青山」
    「?なんだい☆?」
    「ゲーム貸してくれてありがとな。インターンの給料入ったら俺も買うから次は一緒にやろーぜ!」
    なんの邪念もない純粋な笑顔。この笑顔だけで彼が本当にそれを望んでいることが分かる。
    上鳴くんはこのゲームを買ったら今みたいに純粋な気持ちで楽しくプレイするんだろう。僕みたいに雑念を抱きながら自分を慰めるためにゲームなんてしない。このゲームだって彼みたいに純粋な気持ちでプレイすれば本当はとても楽しいはずなのに僕は自分のせいでちゃんと楽しめていない。
    僕にはこのゲームをする資格なんてないんじゃないか?
    嫌な考えが頭をぐるぐると回る。目の前の彼は笑顔で僕を誘ってくれてるのにどうしてこんなことばかり考えてしまうのだろう。
    いっそゲームから離れたら、こんなことは。
    「…上鳴くん、手出して」
    「え、手?…はい」
    何の疑いもなく掌を差し出す彼に僕はゲーム機からソフトを抜いて彼の掌に置いた。
    「……え。なにコレ」
    「さっきのゲームのソフト。君にあげる」
    「は!?いやいいよ、自分で買うから!さすがに受け取れねぇし…!」
    返そうと差し出す手を無理矢理押し返してなるべく淡々と聞こえるように話す。
    「もう飽きたから。あと…僕には必要なくなったから」
    上鳴くんは困惑した顔でその場に佇む。『お前の言ってる事が分からない。』そんな風に思ってる事は表情だけで分かってしまった。
    「ッ…じゃあ僕寝るね。おやすみ」
    「えっ…ちょっ青山…!」
    自分でやったことなのに上鳴くんのそんな表情が辛くて逃げるようにエレベーターに乗る。扉が閉まるまで下を向いていたから彼が今どんな表情をしていたのかは分からなかった。
    部屋のドアを開けてベッドに倒れ込む。少しゲームをしただけなのにどっと疲れてしまった。それも自分のせいなのだけど。
    上鳴くん意味が分からなかっただろうな。一緒に楽しくゲームをしていた相手に急にソフトを無理矢理押しつけられて。もしかしたら怒ってるかもしれない。
    勝手に涙が出てくる。全部自分で決めてやった事なのだから泣く必要も資格もないのに。
    「ッ……う…ぅ」
    初めてあのゲームをプレイしたときのことを思い出した。ゲーム性を理解せず敵を倒せば倒すほどいいと勘違いしていた僕はとにかく敵の陣地に前進してひたすらインクを放っていた。でもその後はただ返り討ちに遭うだけで結果的に僕はただ自滅しに行っただけだった。
    あのときと同じだ。僕はいつも勝手に自分で自分を追い詰めている。

    ☆☆☆

    入り込んだ日の眩さで目が覚める。あのまま泣きながら寝てしまったみたいだ。
    だるい身体を起こして鏡を見ると瞼が少し腫れぼったくなっていた。良かった、この程度なら泣いてたとは思われないはず。
    ベッドから降りたところでとん、とんと控えめにドアが叩かれる。青山いる?と上鳴くんの声が聞こえてきた。
    正直いま上鳴くんとは会いたくないけれどそれは僕の都合だし昨日のことがある以上寝たふりをしてやり過ごす事はできない。
    「いま開けるからちょっと待って」
    前髪を軽く直しながらドアの向こうに呼びかける。鏡に映る僕はどうにも顔色が良くないけれど徹夜してたからで十分通せる。同じように徹夜してた上鳴くんもそんなに顔色は良くないだろう。意を決してドアを開けた。
    「おはよう☆昨日はごめ……ウィッ☆!?な、なにその隈…!」
    僕と同様上鳴くんも顔色は良くないだろうと思っていたけど想像より彼の顔はひどいものだった。顔色は青白くて目の下も隈で真っ黒だ。あと何故か片手にゲーム機を持っている。
    「いやー…あの後なんか徹夜しちゃってさ…一睡もしてないんだわ」
    「一睡も!?一体どうして…」
    「まぁいろいろあって…あとこれ返すよ」
    「あ…」
    上鳴くんから渡されたのは昨日僕が渡したゲームのソフトだった。
    「さすがに悪いしさ。こんな高いの貰うの」
    「あぁ…うん」
    彼から渡されたゲームカセットを素直に受け取った。そりゃそうだ。急にこんなもの渡されても困るよね。
    「でさ」
    「?」
    「俺も買ったんだよね。このゲーム」
    上鳴くんはゲーム機を起動させて画面を僕に見せる。そこにはあのゲームのアイコンが表示されていた。
    「えっ…買ったの!?でもお給料入ってから買うって言ってたよね…?」
    「その予定だったんだけどさーなんか調べたら一万でソフト2個買えるチケットが公式から出てるんだよね。で、昨日みんなでゲームの話してたじゃん。ほらオープンワールドのやつ」
    「あ…続編の?」
    「そーそー!俺それは買うつもりだったんだけど一万のチケットのやつそれも対象になってんのね。だったらあのゲームと合わせて買った方がお得じゃん!?個別に買ったら一万超えちゃうし、じゃあ今買っちゃえーって」
    「…でも」
    もしかしたら気を使わせてしまったんじゃないか。困惑する僕の思考を読んだかのように上鳴くんは慌てて弁明した。
    「別にお前に気を使ったとかじゃねーからな!俺が欲しくて買っただけだから!」
    「…ウィ」
    「あぁもうそんな沈んだ顔しなくていいから!んなことよりこれ見ろよ、めっちゃランク上がったっしょ!?」
    上鳴くんはソフトを起動させる。確かにそこに表示されてるランクは一晩にしてはかなりやり込んでいるように見えた。
    「もしかして一睡もしなかったのってゲームしてたから?」
    「あ、分かっちゃった?そこは恥ずかしいから秘密にしてたんだけど……」
    「そりゃこんな上がりよう見たら分かっちゃうよ☆」
    「本当はダウンロードしたらちょっとやるだけのつもりだったんだけど止まんなくなっちゃって。でもランク上がったおかげでやれるモード増えたから…あー……だからさ…
    これで一緒に色んなモードで遊べるじゃん。だから飽きたなんて寂しーこと言うなよ」
    上鳴くんは照れくさそうに笑いながら頬を指でポリポリ掻く。
    彼が徹夜したのはゲームに夢中になっていたから。というのは本当だと思う。でもゲームソフトを買ったのは確実に僕の為だ。決して自惚れなんかではなくそれは彼の態度だけで分かってしまった。
    さすがにここまでされて自分の意地を貫き通すことはできない。それでも素直に甘えるのはまだ怖くて僕はウジウジと弱音を吐いてしまう。
    「でも僕ゲームするときあんまり良くないこと考えちゃうけど…」
    「えっ?そんなん普通じゃねーの?俺も負けたらイライラすること全然あるし、なんなら爆豪とか暴言すげぇぞ!あんなんでもゲームめっちゃ上手いからそもそも負けること自体めっちゃ少ないけど」
    「普通……」
    普通なんだ。ゲームを純粋に楽しめない事は。僕だけじゃない。
    なんだろう。今まで抱えてきたものがちょっとだけ軽くなった気がする。
    「…またゲームやりたくなったかも☆」
    「っ!マジで!?じゃあ今すぐやろーぜ!一晩鍛えた俺の腕前見せてやるよ!」
    「君はまず一眠りした方がいいよ☆」
    上鳴くんと笑い合いながらこのゲームにストーリーモードがあることを思い出した。
    ヒーローになったプレーヤーが地球の危機を救うストーリー。その設定が今の僕には重くてほぼプレイしてなかったけどなんだか無性にやりたくなってきた。
    きっと心が軽くなった気がするのは今だけでまた後で自己嫌悪に苛まれる瞬間が来るだろう。それでも今だけは彼の優しさに甘えることを許してほしい。
    ひとまず僕も一眠りしたい。起きた後はストーリーモードをプレイしてみようかな。
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