予行演習(ハードモード)「助けてください」
恐妃の都を訪れた最終皇帝は、六人の幼子を連れゲンナリとした様子の恋人に懇願される。
「……産んだのか?」
バキッ
「はっ倒されたくなければ今すぐ手を貸すか二度とここに来ないでいただきたい」
「既に殴られたのだが!?」
「言葉足らずでしたね。
『本気で』はっ倒されたくなければ、選びなさい」
「手伝おう」
頭蓋骨粉砕は免れたい最終皇帝は、痛む頬から手を離し降参のポーズを取る。
「……とはいえ、具体的に何をすれば良いか……
まずは確認したいのだが、彼らは……」
「ええ、七英雄ですよ」
拳を解き広げた手で自身の服の端を掴んでいる顔色の悪い少年の頭を撫でながら、ボクオーンはため息をつく。
今、彼らはそれぞれのエリアで存在する事が出来る幻影。
意思の疎通は可能らしいが基本的に不干渉となっているはずなのだが、何故か全員がボクオーンのエリアに集まっていた。
それも彼を除いた六人ともが、幼子の姿で。
「ここに私達が存在し続けている理由も不明だというのに、一体何が起こっているのか……」
皆目検討がつかないと、ボクオーンはため息をついた。
「この様子だと、記憶も幼くなっているようだな」
最終皇帝は「こっちに来んな」と言わんばかりにすね当てを蹴りつけてくる橙色の髪少年を軽くあしらいながら、遠巻きにこちらを警戒する他の子ども達を見る。
不安そうな少女の盾になろうと前に立つ兄、何者か見極めようと見つめてくる少年の側で身構えている同世代の子ども。
昔からこうだったのかと、最終皇帝は思わず苦笑してしまう。
「すぐに原因を探ろう。まずは変化が起こっている場所が無いか確認を……」
「いえ、その前にすべき事が」
「何だ?」
「休ませてください」
「……休む?」
「来たばかりの貴方は知らないでしょうが、彼らがこの姿でここに現れてもう一月ほど経つのです。
その間ずっと……ずっっっっっっと目が離せない状態が続いて、正直もう限界です寝かせてくださいお願いします」
泣きそうな様子のボクオーン、よく見ればその目元は足元の子どもと同じ様な隈が出来ている。
「……わかった、私がこの子達を見よう」
「よろしくお願いします」
そう言ってボクオーンは六人に彼に従う様にと言い残し、最終皇帝に子ども達を託してふらふらと建物内に入っていく。
この後、とっても大変だった。