幸せの受難「イテテまた噛んだ」
「どうした?」
「朝飯のときに口ん中噛んじゃったんだよ」
「噛んだ?」
どこをという意味で問いかけられ、
「ほほ。おふのほー」
口の端に指をかけ広げて見せ、患部を示した。
口の中を切ったといっても呪霊との戦闘で負傷したわけではなく、食事中に誤って頬の内側の肉を噛んでしまったそれだけの小さな怪我。
「噛みグセついちゃったかも。はーヒリヒリする」
口を閉じ頬をさする。そこへ脹相の手が伸び、虎杖の手ごと包まれたと思ったら
「痛いの痛いの、とんでいけ」
そう言って、ちゅ、と唇が合わせられた。
「えっ! あ⁉」
「こういうまじないがあるんだろ」
「ある、けども! 子どもにやるやつ、だし……キスもするもんじゃ……」
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