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    kiyu_1v

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    kiyu_1v

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    前に書いていたお話が出てきたので供養。
    設定とか細かく決めてたし書こうと言う意思はあったんだと思うけど…設定のメモどこ行った?状態なので思い出したら続き書きます。
    タイトルはしっかりあったので、人間8と猫のような犬(オオカミ)な獣人2の話を書きたかったんだねと言うことはわかった。

    中身はお犬さま「あんたが俺を予約した八乙女楽ですか」
    会って第一声がそれかよ、と俺は顔をしかめた。

    目の前で不機嫌さを隠しもせずに問いかけてきたこいつは二階堂大和。
    鋭い目つきに少し薄い唇、背丈もあって程よく付いた筋肉、どう見ても人間の男。今日から俺はこいつと一緒に住む事になる。

    「予約って、まぁ俺が二十歳になるのを待ってもらったのは事実だが…これからよろしくな二階堂」
    「はぁ、これからって言ってもまだお試し期間ですよね」
    「まぁな、俺はすぐにパートナー契約を結びたいって言ったんだけど施設長の大神さんにそこはキッチリしてくれって言われてさ」

    二階堂は俺の言葉を聞くと「ふーん」と言ったきり何も話さなかった。興味があるのかないのかよく分からないが俺にとっても二階堂にとっても重要な事だ、もう少し聞いているフリの一つでもしてくれないだろうか。
    『パートナー契約』とは言ったものの、俺と二階堂は会話をしたのも直接会ったのも今日が初めてだ。ここで言うパートナー契約は『獣人との契約』の事だ。
    この世界には何百年も前から人間と動物が交わり『獣人』が存在していた。
    その姿は動物、立ち振る舞いは人間。どっち付かずだが両方の特徴を併せ持ったその存在は純粋な人間には恐れを成していた。

    そんな時代もあったらしい。
    らしい、とは今は全く違うからだ。

    人間と獣人も混ざりに混ざり、今では動物の姿をしている者はあまり見かけず、獣人と言っても見た目は完全に人間。
    どんなメカニズムなのか、獣の耳や爪を持っていても人間のような髪や爪にする事ができる。その獣の習性や能力を使いたい時のみに物体化させるまでに進化している。
    そんな獣人たちはほぼ人の姿でも人間よりも何らかの力があるわけで、法律で定めて縛りつけようという訳だ。
    その一つが、獣人は人間の家族やパートナーがいなければ普通に生活をすることが出来ないという法律だ。

    まぁ獣人にも普通に家族がいるわけで、大抵は人間と同じように生活をしている。だけど二階堂の様に施設にいる獣人はそうはいかず、人間の引取先がいないとずっと施設の中で暮らすことになる。こうしてパートナー契約を結べなければずっと施設暮らしだ。

    その契約をこの二階堂と結ぶ前の1ヶ月間のお試し期間が今日から始まる。

    二階堂を部屋に通してひと通り間取りを説明する。
    「二階堂の部屋はここだから」 
    最後に二階堂のために用意した部屋へ案内すると、ゲンナリした顔をしていた。
    「俺なんかに一部屋丸々くれて、ボンボンなんですね」
    「俺は、ちゃんと自分の稼ぎでこの家に住んでるんだ。ボンボンでもなんでもねぇ。それに一緒に住むんだから二階堂の部屋は必要だろ?」
    二階堂に視線を移すと、くるっと丸みをある瞳になっていて、鋭い目つきが無くなっていた。
    「どうしたんだ?そんなにびっくりして、俺変な事言ったか?」
    「あ、いえ…では有り難く使わせてもらいます」
    指摘された表情を直ぐに元の鋭さに戻すと、二階堂はそそくさと案内された部屋に入る。キョロキョロと周りを見渡して、隅っこに持ってきていた小さな荷物を下ろした。
    「荷物、それだけなのか?」
    「ずっと施設にいたので、自分の物は少ないんです」
    「ずっと、って言っても今みたいに他の人の所に行ってた時期だってあるだろ。その時に物増えるだろ」
    「…」
    何も言わずにこちらを睨んでくる二階堂を見て、流石に無神経だったかと反省する。
    獣人のいる家庭やパートナーはそれはそれは優遇されるから獣人の孤児は少ない。優遇される理由は色々あるが、簡単に言うと獣人は重宝される。
    だから孤児になってもすぐに家族が見つかるんだ。だがどうだろう。二階堂は成人を迎えてもずっと施設に居た。
    施設の人に聞いてみたが、お試し期間を満了する事なくすぐに戻ってくるらしく、その理由が口を揃えて「怖い、睨んでくる、良好な関係を築けない」と言うらしい。
    まぁ確かに人相は良い方ではないな、と思ったが話してみた感じは普通だ。
    「疲れただろうし部屋で休んでても良いぞ、俺はリビングにいるから」
    「…」
    「メシできたら呼びに来るからな」
    やはり返事がなく、悲しみと若干の苛立ちを感じる。きっと反抗期の息子を持った世の中のお母さんはこんな気持ちなんだろう。

    さっきの質問はやっぱり失敗だったようだ、と諦めて静かに二階堂の部屋の扉を閉める。
    閉まる直前の細い隙間から見えた二階堂はこちらから視線を外す事なく真っ直ぐと睨み続けていた。
    『睨んでくる、良好な関係を築けない』と言う証言はあながち間違いではないみたいだ。でもまぁこれからだよな、と気を取り直してリビングへ向かった。


    キッチンから時計を見ると19時を指そうとしている。夕飯には丁度いい時間だな。
    今日は俺お手製の手打ちそばと天ぷらだ。打ちたての蕎麦と揚げたての天ぷら、喜んでくれると良いけど。
    二階堂の部屋の扉をノックして「ご飯できたぞ」と声を掛けたが返事もなく、音すら聞こえない。と言うか、扉一枚向こう側に人がいる気配がない。まさか、逃げ出したか?と焦って「開けるぞ」と言い終わる前にドアノブを押し込み部屋に入ると部屋は真っ暗で静まり返っていた。二階堂の荷物は来た時に置かれた場所から位置を変えずに、カーテンが開けっぱなしの窓から差し込む僅かな光で影を落としている。
    外に出た形跡はない。
    「二階堂?」
    この部屋から出る事がなければ、隠れるところは備え付けのクローゼットだけだ。
    今度は慎重に「開けるぞ?」と言ってからゆっくりとクローゼットの扉を開ける。
    二階堂の為に2日前に掃除したばかりの何も仕舞われてないクローゼットの中、その隅っこで抱えた膝に顔を埋めて小さくなっている二階堂の姿があった。
    「二階堂、大丈夫か?」
    膝を床につけ目線を合わせて肩に触れようと手を伸ばすと、二階堂は触れる前にピクリと反応してのろのろと埋めていた膝から顔を上げた。
    「触るな」
    鋭い目つきと一緒に投げかけられた言葉に圧を感じるが、その瞳には怒りや殺意ではなく
    怯えを映していた。
    「悪かった、メシが出来たから呼びに来たんだ。腹減ってるだろ?一緒に食べようぜ!ほら、立てるか?」
    出来るだけ優しく声を掛けて、手を差し出した。その瞬間、二階堂は大きく体を揺らして素早い動きで俺の横をすり抜けクローゼットの中から出る。あまりの身のこなしの良さに俺は呆気に取られた。
    「行くから、触らないで…」
    広い窓の前に立つ二階堂の顔はよく見えなくてどんな表情をしているから分からなかった。
    ただ、ひどく悲しそうな声をしていて抱きしめてやりたくなったがその行動は怖がらせるだけだと今の一連の流れから読み取れる。
    「触らないよ…なぁ、ここで一緒にメシ食うか!今持ってくるから」
    「はぁ?なんで…」
    「クローゼットが気に入ってるんだろ?その中に入って食べてても良いからさ」
    二階堂は猫の獣人だと聞いている。猫は狭いところ好きだしな、良い案だ!なんて考えが伝わったのか、二階堂は「はぁ」と溜息をついた。
    「そんなわけないでしょ、獣人って言っても行動とか感情とか思考はほぼ人間と一緒なんですよ。動物の特性はあんまり反映されない」
    『動物』の様な扱いをされていると思ったのだろうか、二階堂は苦言を呈した。
    「そ、そうか…勉強不足ですまん。でもずっとこの部屋にいたし、ここの方がまだ落ち着くだろ、ここで食べよう」
    「…わかりました」
    二階堂の表情は相変わらず見えなかったが、ほんの僅か、声に緊張がなくなり柔らかくなったような気がする。機嫌は悪そうではあるが…。
    「今テーブルとか持ってくるから待ってろよ」
    「…俺も手伝います」
    そう言って俺の後をついてくる。その距離は歩幅2歩分。近いようで遠い、この距離を少しでも短くしたいところだ。
    「そこに折りたたみのテーブルがあるから、持ってってくれ」
    「はい」
    テレビ台と壁の隙間に立てかけてある簡易テーブルを指さすと二階堂は目を細め眉間に皺を寄せ俺が指差した方に目を向け、テーブルを見つけたのかそちらに歩みを寄せる。その後ろ姿を見届けて俺は蕎麦と天ぷらを盛り付けようと視線を下に戻したその瞬間、ガンッと大きな音が先程見ていた場所から聞こえてすぐに目線を戻すと二階堂が脛を押さえて蹲っていた。どうやらテーブルの角にぶつけたらしい。こいつは案外おっちょこちょいみたいだ。
    「二階堂、大丈夫か?」
    二階堂のそばまで駆け寄ると
    「…っはい、だ、大丈夫、です」
    「痣になってるかも…見せてみろ」
    「っ!!!触るなって!!!!」
    「そんなこと言ってられないだろ!本当に異常がないか確認するだけだ、大丈夫だから」
    今にも噛みつきそうな二階堂にもう一度大丈夫だと言い聞かせて、そっとぶつけたであろう足に手を伸ばす。パンツの裾を捲ればぶつけた所がすぐにわかるほど赤くなっていた。
    「結構派手にぶつけたな…湿布もってくるよ」
    「そこまでしなくても大丈夫ですよ」
    「一応な、すぐに処置した方が治りが早いかもしれないだろ」
    「…すみません」
    「何で謝るんだよ、悪いことしてないだろ」
    「迷惑かけてますから」
    「迷惑じゃないし、そういう時はお礼を言うもんだろ」
    「…ありがとう、ござい、ます」
    「ん、今持ってくるからな」
    「…」
    二階堂は俺のことをガン見してるのか、湿布を撮りに行く背中に痛いほどの視線が刺さる。湿布を取って戻ってくると、赤くなっている部分をすりすりと撫でていた。やっぱり痛いんじゃん。
    「ほら、手退けろ。貼ってやるから」
    そう言うと二階堂は大人しく手を退けた。湿布が吸い付くように二階堂の皮膚に貼り付く瞬間、一瞬の冷たさにピクリと肩を揺らした。
    「明日には痛くなくなってるといいな」
    「あ、ありがとうございます…」
    少し照れた表情でこちらを伺っている。
    また怒られるだろうかと思いつつも、今その頭を撫でてやりたいなと言う気持ちが勝ちそっと手を伸ばした。二階堂はその手を見てピクリと反応するが先程のように激昂せず、ゆっくりと動く手に合わせて同じ速度で頭を近づけて手の平が頭に触れると優しく擦り寄せてきた。
    「あ…」
    二階堂はハッと我に返ると、途端に顔を紅潮させて「頭が…痒かっただけですから」と無理ある理由をこじ付けて2、3歩後退り俺から距離を取った。そのまますくっと立ち上がるとテーブルを抱える。
    「テーブル準備しておきます…」
    そう言いながら逃げるように部屋に戻って行った。

    触れた柔らかくも芯のある髪の感触が残る手の平を見つめる。これから二階堂と上手くやれるのだろうか。心配もあるが取り敢えず飯だ、と天ぷらの準備を再開するためにキッチンに戻る。
    だけど一つだけ思った事を言っても良いだろうか。

    「…動物の本能、あるじゃねぇか」
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    MOURNING前に書いていたお話が出てきたので供養。
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    タイトルはしっかりあったので、人間8と猫のような犬(オオカミ)な獣人2の話を書きたかったんだねと言うことはわかった。
    中身はお犬さま「あんたが俺を予約した八乙女楽ですか」
    会って第一声がそれかよ、と俺は顔をしかめた。

    目の前で不機嫌さを隠しもせずに問いかけてきたこいつは二階堂大和。
    鋭い目つきに少し薄い唇、背丈もあって程よく付いた筋肉、どう見ても人間の男。今日から俺はこいつと一緒に住む事になる。

    「予約って、まぁ俺が二十歳になるのを待ってもらったのは事実だが…これからよろしくな二階堂」
    「はぁ、これからって言ってもまだお試し期間ですよね」
    「まぁな、俺はすぐにパートナー契約を結びたいって言ったんだけど施設長の大神さんにそこはキッチリしてくれって言われてさ」

    二階堂は俺の言葉を聞くと「ふーん」と言ったきり何も話さなかった。興味があるのかないのかよく分からないが俺にとっても二階堂にとっても重要な事だ、もう少し聞いているフリの一つでもしてくれないだろうか。
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