無題「今日も、ダメか」
軽い袋を手にして少女が呟く。どこも全く取り合ってくれず、収穫はない。ルナティックは少し唇を噛み、帰路につくことにした。
その家はこの街にしては治安のいい通りにある。大きな家だが、住んでいるのは2人。家主の19歳の少女と、居候の35歳の男性。少女は彼のために街を駆けずり回って帰ってきた。
パチ、とリビングの電気を付けるとソファの上で大きな体が薄手の毛布に包まれて丸まっている。明かりに反応したのか、ルナティックが部屋に入るともぞりと動き、体を気だるげに起こした。
男は少女よりもかなり体格も良く、身長も高い。ぼさぼさとした黒髪は肩甲骨の下まで伸びて、目つきは少し悪い。かなりがっしりとした見た目の割に、眠たげに半開きになった目とゆったりとした動作がちぐはぐさを感じさせる。
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