鷹が交わすは赤い羽羽繕いは命の次に大事なものと心得よ。有翼族の邑に生まれた者は例外なく、その教えを叩き込まれて育つ。危険が差し迫ったとき、空へと飛び立てば大抵のこと——主に人族の魔の手——からは逃げられるというのが主な理由だ。
兵力として。労働力として。慰み者として。あるいは、明らかに異なる見目をしているものへの嫌悪感。もしくは、自分達とは違う宗教が根差している集団の排除。動機は何であれ、人族による半獣人の奴隷狩りや迫害は、大陸全土で蔓延っている。特に半獣人の中でも数が少ない有翼族は、人族の間で珍獣扱いを受けており、高値で取引されることから密猟者が後を絶たない。そのため、命綱に等しい羽は、常にベストコンディションを維持する必要がある。親の手を借りずに、自分一人で羽の手入れができるようになって初めて、邑の外に出ること、通称「巣立ち」が認められるくらいに、羽繕いは重要なものとして位置づけられている。
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