あれもこれもぜーんぶ、メラックのおかげ『 午前0時 』
秒針が時を刻む音のみ響く、仄明るい寝室。アナログなその音さえ耳に入らぬ宵のひとときに、アルハイゼンがしていることと言えば当然読書である。
明日もこれといって予定はない。本は半分を折り返したばかりで読み切るにはまだまだ時間がかかるが、夜更かしをしたところで起きる時間を遅らせるだけだ。アルハイゼンはまた一つ頁を捲ると、薄ら眠気を催す瞳で次なる文字を追う。
それから少し読み進めた頃、視界の片隅でスマートフォンの液晶がパッと光った。同時に、鳴り始める陽気なメロディはいつだったか酔っ払いが勝手に設定し、そのままにしていたもの。静かなる寝室とは不釣り合いの音楽は、通知画面を横目で見るアルハイゼンを急かすように主張を続けている。
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