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    瀬戸 佐久間

    @Seto_Sakuma

    主に小説書いてます!

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    瀬戸 佐久間

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    イザ武、(🎴🎍)人魚パロ!

    🎍が特別な声を持つ人間で
    🎴が人魚の国の王子という設定です

    特殊なパロなので設定を了承してくださる方のお読み頂ければ幸いです!
    読んだ後の苦情はお受けしていません

    人魚のイザナと歌うたいのタケミチの話海の上から、歌が聞こえるんだ
    僕を呼んでいるのは君なの?
    君の歌声に惹かれて僕は
    今夜も海の上へと繰り出すんだ

    *☼*―――――*☼*―――――

    その歌声は愛らしくて、どこか儚くもあってイザナは胸が締め付けられる思いで最近、毎日それを聴いている。イザナは人魚だ。海の王国の王子であるイザナは幼い頃から「人間に近づいてはならない」と言われている。そんなことを言われたら近づきたくなるものでイザナは幼い頃から海の上へと密かに通い続け、他の人魚よりも比較的、海の上の世界に詳しくなっていた。

    「綺麗な声だな……」

    静かな夜、海の中まで響くような歌声にイザナは聞き惚れている。しかし歌っている人間をイザナは知らない。というのも夜も深けた時間帯に歌っているため、いくら月や星が海を照らしても地上は暗いままだ。分かる事は男性の声ということ。

    人魚も生活リズムは人間と同じで昼に活動し、夜に寝る。陽が昇っている間は迂闊に海の上へと上がることができない。なのでイザナは夜中に部屋を抜け出すことが多かった。いつもは夜当番の衛兵の眼を盗んで出ることができるが、しかし今日は幼馴染で衛兵になりたての鶴蝶がイザナの宮殿の当番だったらしく、そっと部屋を抜け出したはずなのに後一歩のところで後ろから鶴蝶に呼び止められてしまう。

    「イザナ?」

    「……ッチ」

    「外に何か忘れ物でもしたのか?…それとも」

    下賎な人間がいる海の上に行くのか?と小さな、しかし問いただす様な強い鶴蝶の口調にイザナは少し黙り、鶴蝶へと向き合う。

    「鶴蝶、お前、幾つになった?」

    「十四だが…」

    「そうか、お前がいた施設、経営不振なんだってな?」

    「……」

    「いや、力になりたいが俺に出来る事と言ったら」

    金銭援助、しかないよなぁ?
    とイザナはニヤリと鶴蝶に笑いかける。鶴蝶は眼を細め、「何が言いたい」とイザナを睨みつける。本来は王族に対して砕けた口調や睨みつけるなどの行為は不敬と見做され、本人だけでなくその家族にもお咎めがいく。しかしイザナは鶴蝶のお気に入りともあって大目に見られていた。しかし、ここでイザナの機嫌を損ねただなんて、それは鶴蝶にとって施設にいる、血の繋がっていないものの家族と呼ぶ子供達の生活が危ぶまれる。

    「………何をすればいい?」

    「お前にしては勘が良いな、お前にもできる簡単なことだよ」

    俺が海の上に行く時は協力すればいい、とイザナは明日の天気を答えるように軽く言った。しかし鶴蝶にとっては困難な提案で無茶振りがすぎる…!と鶴蝶は混乱している。

    「………わかった」

    暫くの沈黙の後、イザナからの提案を了承した鶴蝶にイザナは満足そうに「何かあったら俺が責任を取る。お前はチビたちを守っただけだ」と不敵に笑い鶴蝶の肩をすれ違いざまに叩き、海の上へと泳いでいった。

    *☼*―――――*☼*―――――

    イザナは砂浜近くの岩場に着くと、辺りを見回す。月の光が差す海の中より陸の方が遥かに暗い。イザナは声のする方角を目指すがやはり暗いとどこにいるのかさえ分からない。毎日と言わずとも頻繁に海の上へと赴いているイザナでも陸の暗さは相変わらず慣れず、迷い、夜明けと共に歌声が止み渋々と海の中へと帰る…それが毎回のことだった。

    しかし今夜は違ったようでイザナのいる地点から遠い砂浜に小さな灯りが見える。あれは「火」というやつだ。イザナは一度海の中に潜り、灯りが見える砂浜近くの岩場まで近づく。

    すると砂浜で座りながら海に向かって歌う青年というには幼顔の少年がいた。
    眼を凝らしてよく見ると髪は灯りに照らされてキラキラと輝き、アクアマリンの瞳は海の底から見る太陽の様に眩く、美しかった。

    もっと側へとイザナは少年に近づこうと泳ぐと、イザナの美しい銀髪が月の光に照らされてキラリと光ったのか少年は急に歌うのを止め、「誰かいるんですか?」とか細い声で何かに恐れているように言葉を発した。

    「………」

    「誰かに知られたら…早く戻らないと…!」

    「っ!」

    イザナは聡く、頭がいいため人間の言葉が分かる。それもあって少年の言っている言葉と雰囲気でもう此処には来なくなってしまう、それを察したイザナは慌てて少年の元へ泳ぎに行き、砂浜間近の水面へと顔だけを出した。

    「ひゃ!?!?……え?人?お化け??」

    「………」

    「だ、大丈夫ですか?水に濡れて…風邪引いちゃいますよ?」

    恐る恐る手を差し出す少年にイザナは胸が高揚するのを感じ、何かを考えるよりも先に、その手を掴んでいた。少年はイザナの冷ややかなその手に驚きながらそっとイザナの手を砂浜の方へと引く。イザナの褐色の肌、そして赤い尾鰭の部分が露わになる。

    「って…え?にん、ぎょ??」

    少年の驚いた顔にイザナは微笑み静かに頷く。大きな声を出しそうな少年の口元を片手でそっと抑え、そして自らの口元にも人差し指を持ってくる。

    「あ、ご、ごめん…」

    「…………」

    イザナは「いつもお前の歌声を聞いていた」「お前の名前が知りたい」と言葉を発するが、どうやら少年の耳には自分の言葉は言葉として認識されていないらしい。イザナは言葉を発するのをやめて身振り手ぶりでコミュニケーションを取ることにした。

    イザナは少年の喉元に人差し指を当ててゆっくりと顎、唇へと移動させた。そして口元で拳を作り広げた。「お前の声が好きだよ」と伝えるように。

    「え?俺の声?」

    どうやら伝わったようだ。イザナはお前の名前は?と少年の胸に指をトンと突き立て、首を傾げる。

    「あ、俺の名前?俺は武道って言うんだ」

    少しおどおどした顔で笑う武道にイザナは何度も発音を真似した。

    「た、たけみ、ち」

    「…!そう!俺、武道!君は?」

    イザナはダメもとで人魚の言葉で「イザナ」と伝えるが、やはり武道はいまいちピンと来ないらしい。それでも武道は何となく「ざ、な?」と言葉に出した。

    「……!!」

    イザナはゆっくりと口元を見るよう促して、ゆっくりとイザナと動かした。すると何度か試して漸く伝わったのか武道は「イザナ?」と口に出した。イザナは首を縦に振る。武道もイザナの名前が知れて嬉しかったのか「イザナ!イザナ君!!」とニコニコと笑いかけ、イザナはその笑顔に心が温かくなる気がした。

    「イザナ君は俺の声が好きなの?」

    武道の言葉にイザナはコクリと頷くと武道は嬉しそうに「ありがとう!」と伝える。

    「じゃあ、何か歌おうかな。俺ね、実はあそこにあるお城からきたんだ」

    あ、別に王子とかじゃないよ!と武道は手を振って慌てるそぶりを見せる。

    「普段は出れないから出れそうな時を見計らって出てるんだ。専属の歌うたいっていうやつで…」

    イザナは武道の話を「うん、うん」と頷きながら聞いていた。
    武道はどうやら特別な声帯を持っているらしく、主にその特別な声帯は歌声によって発揮されるらしい。人の心と傷を癒し、大きな声を出さずとも遠くまで響く様な歌声を利用され様々な金持ちの間を渡り歩き、先の戦に負けた隣国の王族から戦利品として来たらしい。しかも幼い頃から見知らぬ他人の家を渡り歩いて来たから親の顔すら知らないという。

    イザナはどこか自分に近しい何かを感じていた。境遇とかではなく、武道の声帯が、だ。人魚の中にも特別な歌声を持つ個体がおり、しかも年々数も少なくなっている。その個体の特徴が武道と一致していることにイザナは気付き、しかも聞いたことのない「傷口さえ治す」という能力を聞くに、もしかしたら武道の親、もしくは祖先がイザナと同じ人魚だったのでは?と思い至った。

    「って…こんな話聞いても興味ないよね」

    「…」

    イザナは武道の頭を人魚特有の冷えた手で撫でた。そしてそっと抱きしめる。
    武道は他人からの愛情を久しぶりに感じ、思わず眼を潤ませる。

    「う、うぅ〜…イザナ君…ありがとう」

    ポンポンと頭を二回ほど撫で、イザナは武道に「歌って」と身振りで伝えた。武道は頷き、綺麗な歌声を夜の海とイザナに捧げた。それはイザナが生きてきた中でどの夜よりも美しい夜だった。


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    Replies from the creator

    瀬戸 佐久間

    DONE大寿くん、お誕生日おめでとう小説

    フライングですが
    お祝いだけして小説あげ忘れると思うので
    ちょっと3日ほど早いけどあげます

    全て終わった現代平和軸
    付き合って同棲してる
    ハッピー寿武
    捏造と幻覚多め

    読んだ後の苦情はお受けしていません
    君と僕とチョコレートマフィン家に帰ると君が料理を作って待っている
    君が家に居ると気持ちも明るくなる
    今日は何が作られているのか
    僕は帰るのが楽しみになっているんだ

    *☼*―――――*☼*―――――
     
    柴大寿は花垣武道と付き合っている。きっかけは昔、好きだった映画を観たくなったもののサブスクでは配信しておらず、ならば、とレンタルビデオ店に寄った先が武道の働いている店だった。

    再会を果たした二人は食事に行ったりなど頻繁に会うようになっていき、再会から二ヶ月後、大寿から結婚を前提としたお付き合いを申し込んだのだ。

    武道は住んでいた古すぎるアパートから大寿が購入した最新のセキュリティ付きのタワーマンションへと引っ越すことになった。広く、廊下も長い。「忘れ物したら取りに帰れないだろうなぁ」と思うほどには階数も高く、今まで住んだこともない、味わったことのない暮らしに「慣れるかなぁ」と若干、不安に思いつつも武道は大寿との同棲を始めた。
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