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    瀬戸 佐久間

    @Seto_Sakuma

    主に小説書いてます!

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    瀬戸 佐久間

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    大寿くん、お誕生日おめでとう小説

    フライングですが
    お祝いだけして小説あげ忘れると思うので
    ちょっと3日ほど早いけどあげます

    全て終わった現代平和軸
    付き合って同棲してる
    ハッピー寿武
    捏造と幻覚多め

    読んだ後の苦情はお受けしていません

    君と僕とチョコレートマフィン家に帰ると君が料理を作って待っている
    君が家に居ると気持ちも明るくなる
    今日は何が作られているのか
    僕は帰るのが楽しみになっているんだ

    *☼*―――――*☼*―――――
     
    柴大寿は花垣武道と付き合っている。きっかけは昔、好きだった映画を観たくなったもののサブスクでは配信しておらず、ならば、とレンタルビデオ店に寄った先が武道の働いている店だった。

    再会を果たした二人は食事に行ったりなど頻繁に会うようになっていき、再会から二ヶ月後、大寿から結婚を前提としたお付き合いを申し込んだのだ。

    武道は住んでいた古すぎるアパートから大寿が購入した最新のセキュリティ付きのタワーマンションへと引っ越すことになった。広く、廊下も長い。「忘れ物したら取りに帰れないだろうなぁ」と思うほどには階数も高く、今まで住んだこともない、味わったことのない暮らしに「慣れるかなぁ」と若干、不安に思いつつも武道は大寿との同棲を始めた。

    しかし物は慣れ、武道はすっかり高層マンションでの生活に慣れた。変わったことといえば「忘れ物したら気軽に取りに帰れない」と言う気持ちから忘れ物が減ったと言うことだろうか。

    武道は本日は非番、今日が誕生日の大寿の為に何としてでも、と休みをもぎとったのだ。誕生日ディナーのために朝、出勤する大寿を見送った後に自分が作れる範囲の料理のレシピを調べ上げ、食材をメモをし、買い物へと出かける

    「財布よし、エコバッグよし、鍵よし…」

    大寿と住んでいるマンションがある土地はセレブが多く、買い物に行くには八百屋ではなく高級スーパーしかない。大寿からは「何かあればこのカードを使うといい」と言われ高級感溢れるカードを渡されていた。なるべく自分のお金で買い物をしたかったが近くに八百屋がないなら仕方ない、と武道は「大寿のためだから!」とカードを使うことにした。

    *☼*―――――*☼*―――――

    高級スーパーについた武道は小さなジャム瓶が五百円や珍しい食材が並んでいる商品棚をみて開いた口が塞がらなかった。

    「え、すごく場違いな気がするんだけど…」

    武道の服装はセンス皆無の半袖、七分丈のパンツ、そしてサンダル。しかし周りのセレブ達の服装は見るからに良いもので場違いもいいところだ。武道は肩身の狭い思いで青果、鮮魚、精肉の順に商品棚を周る。

    手早く買い物を済ませようと会計のレジに並ぶ。その時間はもはや拷問で一度そう思えば周りのセレブ達が自分の事を見ているのではないか?嗤われているのではないか?そう思って武道は少し遠くても職場近くの普通のスーパーへ行けばよかったと今になって激しく後悔していた。

    「次の方どうぞー」

    「あ、はい」

    レジ係にそう呼ばれ会計をする時に大寿から預けられている見た目からして高級そうなカードを財布から取り出すとレジ係はどこかギョッとした顔で「あ、暗証番号をお願いします…」と少し驚いたようだった。

    「ありがとうございました…」

    顔には見るからに「何で貴方みたいな人が!?」と言っていた、と思う。思い込みであってほしい。武道はレジ横の台でいつもより優しく商品を詰めてスーパーを出た。

    「拷問タイム終了…」

    誰に言うまでもなく呟く。外は丁度、昼ごろなのか炎天下と言うに相応しい暑さだった。これでは食材が傷んでしまう。そう思った武道はタクシーアプリでタクシーを呼ぶことにした。

    涼しい木陰でタクシーを待っていると近くにいたのか数分で来てくれたのが救いで足早にタクシーに乗り込むと涼しい車内は武道を生き返らすのに十分だった。

    タクシーの運転手は無口な人なのか行き先を告げると「かしこまりました」とだけ言って車を発車させた。武道は美容室で話しかけられるのが嫌なタイプなので、このタクシーの運転手の無口はとても有り難かった。

    窓の外を見ると日傘を差している人、帽子を被る人、扇子で自身を扇ぎながら歩く中年層など暑さ対策は様々で、この暑い中、食材のためとはいえ、タクシーに乗ることに武道は少し優越感を覚えた。

    *☼*―――――*☼*―――――

    大寿と同棲している高層マンションに着くと武道はカードではなく、自分の手持ちからタクシー代を出しマンションへと入っていく。広いエントランスを通り過ぎてエレベーターに乗り込み住んでいる階へのボタンを押す。

    家に着くと敢えてつけっぱなしだったクーラーに武道は思わず「あぁ〜涼しい…」と誰に言うでもなく一人で呟く。クーラーが大活躍の季節、武道はそのままシャワーでも浴びてアイスを食べ、寒い寒いと言ってクーラーの効いている部屋でブランケットに包まれたい…と考えたが、まずは手洗いを済ませ食材を冷蔵庫に入れてから汗だらけの服を脱いでシャワーを浴びることにした。

    全ての支度を終え、先ほど考えた「僕の最強の夏休み」という武道の理想の夏を実現しようとしたところで大変な事に気付く。

    「あ、アイス買い忘れた…」

    武道にとって夏といえば海、お祭り、スイカ!と言うより夏といえば、クーラー、カップアイス、棒アイス!なのだ。わざわざ暑い所に行くなんて暑さに弱い武道にはとてもじゃないが信じられなかった。

    「あーショックだ…もう外には出たくない…大寿くんに買ってきてもらおうかな」

    いや、今日誕生日の人にお金を使わせるなんてどうなんだ?しかもアイスって…と思った武道はアイスを泣く泣く諦め、夕飯の仕込みをする事にした。

    大寿はお洒落な食べ物を好む。と思いきや、反応が良いのはハンバーグ、オムライス、ナポリタンなどの少しイメージとはかけ離れてる料理な事が多い。いつもは何だかよく分からない料理を接待で食べている分、家庭料理的なものが好きで、大寿の今は亡き母親がよく作ってくれたのがハンバーグだったと言うのを付き合った当初、一度だけ聞いたことがあった。

    「よし、作るぞ!」

    ハンバーグは挽肉をボウルに移し入れ塩胡椒と混ぜる。挽肉を混ぜる時のヒヤッとした冷たさとグニョグニョとした感覚は相変わらず慣れないが、美味しさの為だと手を洗い捏ねる事にした。

    塩胡椒とよく混ざったらパン粉と卵を予め混ぜておいて、またそれもボウルの中に入れ再度混ぜる。すると馴染むのが早い気がするからだ。

    ハンバーグのタネを丸めて形を整え、両手でタネを叩きつけるように空気を抜く。なぜ空気を抜くのかというと、空気が入っていると焼いている時に膨張し、破裂した後に肉汁が溢れ出てしまうからだ。

    そして膨らまず、中まで火が通るように指でタネの真ん中を押し、フライパンに並べて焼き始める。油が跳ねてこない網状の蓋をかぶせ、下側が少し色づいてきたのを確認したら裏返し、火が通るのを待つ。菜箸でタネを刺し、赤い汁が出てこなかったら成功だと武道は最近学んだ。

    「よし!初めて成功した!!」

    大寿は身体が大きい分、沢山食べる。付き合う前から何となく思っていた事だが大寿はよく食べる。コース料理に接待以外で行かないのはそういう理由があるからだと武道は思う。

    「良い匂い!…よし、次は付け合わせのサラダとソースと…」

    *☼*―――――*☼*―――――

    「ただいま」

    大寿が家に帰ってくると部屋中に良い香りが漂っていた。肉の焼ける匂いが鼻腔を擽る。大寿は手を洗いリビングに入る。すると真剣な顔で料理をしている武道が目に入った。真剣故に武道は大寿の帰宅に気付いていないようで大寿は武道に近付き、「おい?」と声をかける。すると武道は「ひゃい!?」と身体が宙に浮かんだのではないかと思うほど驚いた。

    「す、すまない、そこまで驚くとは…」

    「や、俺こそ気づくの遅れちゃって!大寿くん、お帰りなさい!」

    未だスーツのジャケットを脱いでいない大寿に抱きつき、見上げ「えへへ」と照れたように笑う。それに大寿は心がギュッと締め付けられるのと同時に、武道を強く抱きしめた。

    「うぐっ!大寿くん、ぐるじい…」

    潰れたカエルのような武道の声にハッと大寿は気付き、勢いよく武道を引き離した。

    「大丈夫か?」

    「うん、ちょっと苦しかったけど平気です!」

    嬉しかったし!と大寿の手を握り、微笑みかける武道に大寿は心が温かくなる。

    「今日の夕飯は随分と豪勢だな」

    「でしょう!?大寿くんの誕生日ですからね!」

    誕生日?誰の?とポカンとした顔の大寿に武道は「へ!?」と急いで自分のスケジュール帳とリビングの壁に掛かっているカレンダーを見比べる。どちらにも大きな赤丸がついており、間違いなく今日は大寿の誕生日なのだと確認し、武道はホッとした。

    「大寿くんの誕生日、今日でしょう?」

    「……あぁ、忘れていた」

    今気づきました、と言わんばかりの大寿に武道は「もー!焦りましたよ!」と頬を膨らませた。

    「大寿くん、先にシャワー浴びてきてください!後少しかかるので」

    「わかった。」

    大寿は自分の誕生日を忘れているという事実に若干驚きつつも、歳を重ねるのにも何の嬉しみも面白味も抱かなかった大寿にとっては自身の誕生日は最早、なんの変哲もないただの平日だ。

    シャワーを浴び終わった大寿は髪を軽く乾かし、リビングへと戻って行くと、食卓の上には沢山の料理が並べられており、「この食材を暑い中、買い出しに行ってくれたのか」と、大寿はそれが一番、嬉しかった。

    「あ、大寿くん、グッドタイミングです!もう食べられますよ!」

    「あぁ」

    二人揃って椅子に座り、手を合わせる

    「いただきます」

    「召し上がれ!」

    ハンバーグをナイフとフォークで切ると中から肉汁がジュワ〜と溢れ出てきてお肉!と言う香ばしい匂いが部屋全体に広がる。それを見る嬉しそうな大寿の顔が武道は一等好きだった。

    「美味しい」

    「本当!?」

    やったあ!と嬉しそうな武道に頷く大寿に思わずニコニコと笑顔になる。最近は料理も成功が多く、生焼けや焦げが少なくなったのもあり、自信がメキメキとついてきた武道は難しい料理にも挑戦するようになっていった。

    「大寿くんに褒められると嬉しいな」

    「本当のことだ」

    「へへっ」

    その後もカボチャの冷製クリームスープやカプレーゼなどのサラダを一通り食べ終わり、大寿の「ご馳走様でした」を聞いた武道は「お粗末さまでした!」と元気よく応えた。

    大寿は本当に美味しい時は「うまい」ではなく「美味しい」というし、食事の最初と最後では手を合わせる。それが武道は大好きで、大寿がどんなに遅く帰ろうとも起きて食事の用意を続けられている。

    「ケーキありますけど、食べます?」

    「いただこう」

    「まぁ、ケーキと言っても流石にスポンジからって言うのは難しかったのでチョコチップマフィンとサクランボのマフィンなんですけど…」

    どれくらい食べるのか分からなくて量産しちゃったんですけど…と言って台所から持ってきたマフィンは一つひとつラッピングしてあって大寿は、えも言われぬ幸福感に包まれた。

    「良かったら会社の皆さんにも配ってください」

    「いやだ」

    「へ?」

    「俺が全て食べる」

    「えっ」

    武道は少しポカンとした顔をした後、あははっと笑った。大寿は何がおかしいのかさっぱり分からないが、武道がいいならそれでいいか。と首を傾げるだけだった。

    「あ、ごめんなさい。いや、大寿くん可愛いなって思ったら…」

    「可愛くなどない」

    「あはは」

    自身のことを可愛いなどと言って笑う武道に大寿は若干不満に思いながら「フン」と顔を逸らす。二人はチョコチップマフィンとサクランボのマフィンを一つずつ食べることにした。

    「明日のお弁当につけておきますね。おやつかデザートとして食べてください」

    「あぁ」

    *☼*―――――*☼*―――――

    「社長、お祝いの品が複数届いておりますが…」

    「後で中身を確認する。机に乗せて置いたもの以外は捨てるか配るかしてくれ」

    「承知しました」

    翌日、大寿が会社に出勤すると、取引先から誕生日プレゼントが沢山、届いていた。毎年のことだが他社から届くプレゼントには大寿をお祝いするものではなく、「うちを御贔屓に!」と言う隠しきれていないメッセージが多く、しかも女社長の場合はネクタイや万年筆なども贈られるため大寿は贔屓はともかく自分への好意を持つ者からのプレゼントは男女問わず持ち帰らないのが恒例だ。

    休憩時間になった大寿は昨日、武道が作った本来なら一口で食べ終わる大きさのチョコチップマフィンを噛み締めるように少しずつ食べていた。それを偶然にも見かけた女性部下たちの間では「社長、ギャップ狙ってる?」と少し噂になったとか。
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    瀬戸 佐久間

    DONE大寿くん、お誕生日おめでとう小説

    フライングですが
    お祝いだけして小説あげ忘れると思うので
    ちょっと3日ほど早いけどあげます

    全て終わった現代平和軸
    付き合って同棲してる
    ハッピー寿武
    捏造と幻覚多め

    読んだ後の苦情はお受けしていません
    君と僕とチョコレートマフィン家に帰ると君が料理を作って待っている
    君が家に居ると気持ちも明るくなる
    今日は何が作られているのか
    僕は帰るのが楽しみになっているんだ

    *☼*―――――*☼*―――――
     
    柴大寿は花垣武道と付き合っている。きっかけは昔、好きだった映画を観たくなったもののサブスクでは配信しておらず、ならば、とレンタルビデオ店に寄った先が武道の働いている店だった。

    再会を果たした二人は食事に行ったりなど頻繁に会うようになっていき、再会から二ヶ月後、大寿から結婚を前提としたお付き合いを申し込んだのだ。

    武道は住んでいた古すぎるアパートから大寿が購入した最新のセキュリティ付きのタワーマンションへと引っ越すことになった。広く、廊下も長い。「忘れ物したら取りに帰れないだろうなぁ」と思うほどには階数も高く、今まで住んだこともない、味わったことのない暮らしに「慣れるかなぁ」と若干、不安に思いつつも武道は大寿との同棲を始めた。
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