無題敵わない、あの日密かに決めた覚悟を胸に貴方に全力で挑む。だがそれは圧倒的な経験と力量でねじ伏せられ、滲む汗すら見せない。
敵わない、果てしない距離を走り続けたと言うのに貴女は眩いほど笑顔を見せる。誰もが引きつった笑顔で降参の意を示す。
敵わない、その腕は見事なもので、いくらでも経験を積んだといえ貴方とは差を埋めれそうにない。誰もが舌を巻き、もう一度その味を占めたくなる。
敵わない、あなたに何を言われようと私はいつもあなたの言う事を受け止めてしまう。愛しく思えば思うほど、あなたの我儘をいくらでも聞き受けてしまう。
.........敵わない。
......何時からか同じ目標を目指し隣に立っていたあなたは手が届かなほど前に立っていた。何時だって2人で困難を乗り越えていたのに、いつの間にかあなたは1人で困難を乗り越えていた。あなたの危機に立ち向かえば、あなたはいつの間にか握っていた手を手放し1人でわたし達の知らない真実に目を向けていた。
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