無題「おっ、今日も救助要請を発信してるな。真面目で結構結構」
　ストーカーはひび割れたモニターの片隅で点滅する表示を見て満足げに笑った。現在、ガーラス９のネットワークはストーカーの支配下にある。外からの通信も内からの通信も、だ。もっとも、最高指揮官オーバーロードの命により外からの通信は全て無視し、内からの通信は外につながらないよう全て弾いているのだが。
　点滅する表示は内側からの通信――フォートレス・マキシマスが体内の通信機を使用して外へ救援を求めた時――の、外部への接続を遮断したことを知らせるものだ。
「とはいえ頻度は下がってきてるな。諦めたか、それとも」
　ストーカーは端末を操作し、スピーカーを作動させた。オーバーロードの命令とは関係なく、ストーカーはフォートレス・マキシマスの通信データを保存している。
『……ガーラス９看守長、フォートレス・マキシマスだ……たすけてくれ……ガーラス９は今オーバーロードに……はやく……』
「ふ、ふふふ……いやはや、最高警備刑務所の看守長とは思えぬまぬけな救援要請ですなぁ」
　最新のデータを再生しながらストーカーは楽しそうに肩を震わせた。ストーカーは感情のノイズが真面目な通信に乗る瞬間が好きだ。それはディセプティコンを名乗るよりも昔からであって、自らその瞬間を生み出すために拷問の手法を覚えたと言える。フォートレス・マキシマスに関しては己の手で行ったわけではないが、最初期からの通信ログとスネアの監視映像を突き合わせれば疑似的に体験することはできる。（スネアはそうそう監視データを他人に渡そうとしないが）
「こんなの見ないわけにいかないだろ、スネアに頼んで……ああ、でも最近は医務室でヤってないんだったか？　カメラの無いとこに移動してるとなると……玩具が壊れるのも時間の問題か」
　フォートレス・マキシマスの悲鳴のような通信ログを聞きながら、ストーカーはオーバーロードが次の暇つぶしに使いそうなオートボットを考え出した。