ひとりでも、 これは、夢だ。途中でわかっていたのに、それでも止められなくて、顔がぐしゃぐしゃに歪むのがわかって、息が苦しくなって、ひたすらに何かをまくしたてて、目の前の兄の顔がよく見えなくて。
突然意識が覚醒する。
「勇作さん?」
兄の顔。現実の。真っ黒な瞳孔を微かに縮めて、こちらを伺っている。自分を、見てくれている。
息を吐いた。知らぬうちに、息を詰めていたらしい。一呼吸おいて、感覚が覚醒する。背中が汗でぬれて気持ちが悪い。口の中は粘ついているくせに、喉はひどく渇いている。
「……俺は、何かを、言っていましたか」
おそるおそる問う。兄の表情からして、口に出してはいないはずだったが、それでも聞きたくて。
「……意味のあることばは、なにも。うなされていたのは、わかりましたが」
1946