幸せと地獄の象徴『誕生日おめでとう』
チョコプレートにそう可愛らしく書かれたケーキがテーブルに鎮座している。
誰の目から見てもそれが誕生日ケーキであることがわかるだろう。
今日は息子……梅春葦切の11歳の誕生日、そのお祝いのケーキだ。
普通ならなんてことはない誕生日の光景だろう。だが俺たち親子にとってこの光景は重要な意味を含んでいた。
3年前、妻である梅春鈴と、娘であり葦切の姉である梅春つぐみが……俺の為に用意したという誕生日ケーキを受け取った帰りに交通事故で亡くなってからは。
「久しぶりだね〜こうやってケーキ食べるの!」
「そうだな……。写真撮ったか?じゃあ切るぞ」
目の前の葦切はケーキを食べれるのが嬉しいのか、純粋に笑う。その様子を見ていると、子供の成長は早いなと感心する……まだたった三年しか時は経っていないと言うのに。子供と大人は時間感覚が違うからだろうか。
2396