雪解けのように 一目その姿を見て、厳しくも美しい故郷エスカトルそのものだ——そう強く感じた。
方舟にやって来たのは巨神戦役の英雄であり、エスカトルの先代族長でもある、つまり僕の父だ。
その報せは瞬く間に方舟中へと広まった。
(父上が、やって来た……)
喜ばしい事であるはずなのに、なぜか心にどんよりと重たいものが広がる。とにかく気持ちを落ち着けたくて向かった屋上庭園、そこで父の友人だったというフーゴから背中を押してもらった。
『僕から見たら、君たちは親子そのものさ』
父をよく知る彼が言うのなら、そうなのだろう。
エントランスには人集りができていた。その中心にいる男の頭には、僕と同じ冠が添えられている。
族長の証、僕にとっては重くて煩わしくて仕方なかったそれも、父の頭上ではしっかりと輝いているように見えた。
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