デザートリメイクここは2人の住む部屋。
今は夜ご飯の時間。
愛蔵が物凄く美味しそうに僕の作ったカルボナーラを頬張っている。
兄のものには劣るだろう…と思っていたけど、僕のも僕のでなかなかに大好きらしい。
うれしいとか思って見つめていたら、彼のほっぺにソースがついたのに気づく。
「ぁ…あいぞー、ほっ……」
「……?」
手を止め、口をもごもごさせながら愛蔵は僕の方を向いた。案外くりっとしている瞳とその仕草からリスを連想させられた。
ほっぺに付いてるよ。と指摘したかったけど、そんなのじゃつまらないよね。
だからいくつか思案してみる。
ティッシュで拭き取ってあげようかな?
指で拭ってそのまま舐めちゃおっかな?
どちらにせよ愛蔵は顔を赤くして照れちゃいそう。想像しただけで口角が上がってしまいそうだ。
けど、
僕は立ち上がって、向かい合って座っていたところから彼の横まで来た。
「どうしたんだ?」
咀嚼し終わって言葉を発せるようになった愛蔵は不思議そうに僕を見つめあげて問う。
僕は返事の代わりに少し屈んだ。
「」
ほんのちょっとだけ、クリーミーな味がした。
「ついてたよ。ソース」
「……」
彼はぽかんとして思考停止した。
すごい、宇宙猫になってる(笑)
これはこれで可愛いんだけど、隙だらけだなぁ。
こちら側に引き戻すために僕は彼の耳元に口を寄せて伝えた。
「おーい、もっと食べられたいの…?」
耳に軽くちゅっとした。
「ぅあっ…?!」
ガタッと椅子から落ちそうになりつつ耳を庇う愛蔵がおかしくて、加虐心をくすぐられる。
「あはっ、驚き過ぎだよ」
思わず笑ってしまう。
すると愛蔵は少し俯いてだんまりしたのち、
「……」
チラリと僕に視線を寄越してきた。
「?なに…?」
僕が聞くと、愛蔵はもう一度視線を逸らし、また僕に戻した。
「お、俺は…デザートに…とっておけ、よ…」
と呟いた。
いつもやられっぱなしじゃ悔しいからと少し強気に出た言葉なのか、自信なさげに軽く睨み上げられる。
普段言わない様なことを言い出した彼に驚いた。
そっちがその気なら……
僕は彼の顎をグイッと上に向かせてやや横向きから、
「んむぅっ?!」
そのままぢゅーっとキスをした。
あ、この角度すごくキスしやすい…なんてくだらないことに関心している僕と、普段と違う向きからのキスで変に吸いつかれて困惑している愛蔵。
彼は仰け反るものの、背もたれが邪魔で逃げられない。
彼はしばらく僕を押し離そうとして足掻いたものの、だんだんふにゃりとしてきたから解放してあげた。
「はぁっ……ゆじろっ、」
どこか物欲しそうな目で僕の名前を呟く愛蔵。
それを見て僕は目を細めた。
「デザートのつまみ食いはおしまい」
呆気なく離れていく。
愛蔵の顔に "もっとほしい" と書かれてたけど、そう簡単に欲しいものを与えちゃだめだもんね?
僕が背を向けると彼は
「っ……!」
慌てて僕の服をきゅっと掴んだ。
「……何?」
ゆるりと振り向いてまっすぐ見据える。
愛蔵はそれに少し怯んだのか、思わず目を逸らしてしまった様子だ。
今日は何回…目をそらされたかな? 残念ならが僕の愛情は少し曲がったる節があるから、僕を意識してると、だから嬉しいと、可愛いと感じてしまう。
そして、好きな子はいじめてしまう性分だ。
少し待ってみるも、何も言葉を発さない愛蔵。
だから僕はもう少し引いてみる。
「……用がないなら僕は皿を洗いたいんだけど?」
「っ…ゃ……だ…ほし、ぃ…」
彼はポソりと俯いて呟く。
「何が欲しいの」
僕はぶっきらぼうに聞き返した。
「…もっと……いま、き…きす……」
「……はーっ…」
「ぅ……」
僕がため息をつくと、彼は掴んでいた裾を離して「や、やっぱ…ぃぃ……」と呟いた。
しょぼくれた姿が可哀想だから、そろそろ押してもダメなら引く、方式はやめてあげることにしよう。
ちゅっ
「…!」
「今はこれだけね」
「__1番美味しい所は今夜のお楽しみだよ」
アフターストーリー2種類⤵︎
愛蔵がどう思っているか、で2パターンです。
▶︎今、もっとしたい…っ……
▶︎恥ずかしいから後でまで待ってみよう……
▶︎今、もっとしたい…っ
「ぅ…い、今じゃ…ダメなのかよ……?」
顔を赤くしながらも頑張って聞いてくる愛蔵。
そんなこと言われたらすぐにでもかぶりついてしまいたい。けど、
「……今はだーめ」
その可愛らしさにキスを与えたいのは山々だが、やっぱり焦らしたい欲が勝ってしまう。
だからとりあえず適当な理由をつけて断る。
「カルボナーラ味のキスなんてしたくないでしょ」
「そ、れは…そうだけど……」
またもしょぼくれる愛蔵。
するとすぐにピコン!と音がしそうなほどに閃いた顔をした。
彼は立ち上がってキッチンの方へとパタパタと向かって行った。
「あいぞー……?」
不思議に思って後を追うと、彼はお菓子を置いているバスケットの中からチョコを取り出す。
これは普段僕が食べているチョコで、その中でも特に甘いものだ。
それを愛蔵は個包装を開けて口に放り込む。
「えっ…?」
甘いものは断固として食べない愛蔵がチョコを口に含めたのに驚いた。
すると彼はやると決めたとでも言えような顔で僕の方に向き直り、こう言う。
「ん。ほら、これひゃったらきす、れきるれひょ?」
そして、ぐいっと僕の顔を両手で包んで引き寄せる。
「はっ?! ぁいぞ…っんぅ!」
驚いて口を開いてしまった。
そこからチョコの絡んだ愛蔵の舌が入ってくる。
「んっふぅっ…はっ、…ふうっ……ん…」
彼は不慣れながらにも必死に舌を使ってキスをしてくる。
僕もだんだんとそれに応えるように舌を差し出した。
愛蔵の舌は甘くて、トロトロしてる。僕はそれをじっくりと堪能した。
次第に絡め合いは愛蔵の口の中へ移った。
僕がどんどん攻め込んで、必死に応えようとするも翻弄され、思考がチョコと同じようにとろとろになっている。
自分で舌を動かせず、ただ僕に絡められ、掻き回され、吸い上げられるだけ。
もはや甘い吐息を漏らすしかできない。
「ふぁ♡ …ぁ……んんっ、んぅ…♡」
彼は酸素が欲しくて一度身を離そうとしたが、僕に腰に手を回されてそれは叶わなかった。
もう一つ抵抗として上半身を引くものの、僕は更に上からかぶりつくようにキスしたから逃げられない。
「はっ…ゅ…ひろ……♡ っ、んむ…♡」
目から涙がこぼれそうになり、再び僕の名前を呼ぶ愛蔵。
一旦解放する。
「ん、……はぁっ、……、」
「ふ、ぁ…♡ …はぁっ……っ」
彼はこぼれそうな涙の膜を張らせて僕を焦点の合わない目でみつめる。
すると若干呂律の回らない口を開く。
「ゆじろ…っ、あっちれしたい、いこ…?」
そう言って廊下の方向へ弱く指を指す。
「っ、ほんっっっ……と……、」
僕は眉をひそめて愛蔵を軽く睨む。
「覚悟しなよ」
▶︎恥ずかしいから後でまで待ってみよう…
今夜のお楽しみ……愛蔵はそう言われて色んな恥ずかしさでぷしゅーっと黙り込んでしまった。
俺はシャワーを浴びながらもんもんと考えていた。
結局デザートって…今夜って……どこまでするんだ…?
「キスだけ…?」
主にキスをしていたし、あの場でもし続いていてもキスだけだろう。流石にあんなところでおっぱじめはしなかった…はず……
でも……
もし、するなら…後ろは……
「解かしておかないとといけない、よな…」
散々迷った末、やるだけ損はしないだろうと思い、とりあえず準備した。
風呂上がり、彼がどう出るのか…と、様子を見ることにした。
寝室に向かうと既に勇次郎がいた。ベッドに軽く腰をかけてスマホをいじっている。
「っ……」
若干緊張しながら戸を閉めてベッドへと向かう。
と、勇次郎が俺に気づいて立ち上がる。
「!」
俺は足が止まってしまった。
「ふふっ何ビビってんの?」
彼は面白がって俺に歩み寄った。
「べ、つに…?ビビってねぇし……?」
そんなことを口で言うが、目線が明らかに泳いでいる。
勇次郎はそんな俺の顔を撫でる。
「ぅ……」
俺は困ってしまって、思わず声を漏らしてまう。
それにクスリと笑いをこぼして勇次郎はお構い無しに、
「いただきまーす」
「へ…?!んっう……っ、」
デザートを食べ始めた。
最初は、触れるだけ。
「んっ、う……っ、」
俺は身を固くした。
繰り返しちゅっ…ちゅっ…と触れられて、それだけで柔らかくて、気持ちよくて、俺はそっと彼の肩に手を添えた。
すると、トン…と勇次郎の舌先が俺の唇に開けるように促してくる。
「ひっ……っ、」
恥ずかしながら体をビクつかせてしまった。
おずおずと口を開くと、そこからぬるりと舌が入ってくる。
「んっ、う……ふぅっ、」
不慣れでどうすればいいか未だに分からない俺はきゅっと勇次郎の服を掴む。
それに気づいた彼は舌をゆっくりと、エスコートするように絡ませる。
それはとっても脳が痺れて気持ちいいもので、思わず甘い声を漏らす。
「ふぁ…♡ んっ、ぅ…♡、はぁっ…♡」
お互いにペースを合わせながら溶け合う。そしてだんだんといい雰囲気になって……
おしまい。
「ぷぁ…っ、………ぅ…え……?」
俺は無意識にもっとしないの?と目線で訴えてしまった。
「何? 期待してたの?」
と黒い笑みを向けてくる勇次郎。
「なっ?! き、期待とかじゃ…ねぇし…!」
「もしかして…」
慌てて否定する俺を他所に彼は俺の腰に手を回して聞いてくる。
「準備、してきたの?」
そしてするりと俺の尻を撫でられた。
「んっ…?!」
急に触られてびくんとしてしまい、変に反応してしまったことが恥ずかしくて真っ赤になる。
でも正直満更でもないから離れずに俯くしか出来なかった。
彼の顔は見えないけど、何となく想像出来る。酷いにやけズラだろうな。惚れた弱みが悔しい。
「ふふっ、いーよ? あいぞーの全部……」
俺の耳元に口を寄せながら吐息と甘さを含めて勇次郎は言う。
「ぜーんぶ食べてあげる」
「ぅっ……ど、どうぞ…お手柔らかに……」