やがて染まりゆく世界によせて 始まりは花壇の隅の紺碧だった。
いつもならてきぱきと、けれども丁寧に花壇の手入れに取り組んでいる彼女が、珍しく何か悩んだ様子でちょこんと花壇の端でしゃがみこんでいる。
そんな小波美奈子の様子が気になって、御影小次郎は軍手についた土や枯れ葉をパタパタとはたき落としながら、ゆっくりと彼女のほうに近づいていった。
「おう、美奈子。どうかしたのか?」
「あっ、小次郎先生…。」
「なんかおまえの手止まってたけど、なんかあったか?大丈夫か?」
極力明るい声を装って俺は声をかけた。そうして、彼女の視線のあった先をサッとたどると、夏の名残の露草たちが、紺碧の花をキリッと秋の青空にもたげていた。
「ん…?露草?」
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