「先生!助けて!」
鍾離の所へと飛び込んできたのは旅人とその相棒である小さな生き物。二人は顔を白くし、慌てた様子だ。あまりの騒々しさに鍾離は目を見開いた。色々苦難の道を行く旅人達がこんなにも慌てるとは余程の事があったのだろう。
「そんなに慌ててどうした?」
「それが…」
「先生?何かの教師?」
はて。旅人とパイモン以外の見知らぬ声がする。旅人から視線を持ち上げると、扉の影からひょっこり顔を覗かせる女性が。鍾離に彼女との面識はない。過去数千年を余すことなく覚えている鍾離が言うのだ。初対面だ。初対面なのだが、彼女の風貌は知人を思わせる。旅人に視線を戻すとだらだらと尋常ではない汗をかいている。
「…まさか、」
「………公子です」
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