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    もろきゅう

    @snd_housamo

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    もろきゅう

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    注意散漫なサモナーと補う忍者の話

    #東京放課後サモナーズ
    tokyoAfterSchoolSummoners
    #放サモ
    #モブ
    Mob

    いまそかり 忍者は種をかじる。
     サモナーが手渡してきたATKの小種を、ためらいがちに奥歯で噛んでいた。

     我らが主は、戦闘慣れしていないらしい。
     忍者がそう結論付けたのは、今までのアプリバトルを控えメンバーとして散々観察してのことだ。
     何度も敵を打ち漏らしては、参謀であるシロウの範囲攻撃で沈めてもらい、何度も不意打ちされては、振り返る余裕もないのか硬直し、アカオニのチャージスラストに助けられている。
     リーダーとして、いささか頼りないと言わざるを得ない。
     高校生なのだから仕方ないとはいえ、場数に比べて成長の度合が遅い。
     今だって、我らがリーダーは直進するばかりで、脇に意識を向けていないのだ。
     ああ、ほら、死角から敵が飛び出してきて……
     アカオニの金棒に突き上げられた。

     レベルの種を一粒、もぐもぐと咀嚼しているアカオニが、ATKの小種をちびちびと食らっている忍者の隣にやって来る。
     その体には細かい傷がいくつもできており、リーダーの注意散漫さがよく見て取れた。本来ならば、気をつけていれば避けられた傷なのだ。

    「こちらの持久力を削ろうという作戦のようですな」

     忍者はアカオニに目を向けて告げる。
     アカオニは一度、軽く頷くと、忍者にちらりと目を向けて返した。

    「モウスグ呼バレルゾ。気ヲ引キ締メテイケ」

     それは気を引き締めなければならないだろう。なにせ、先程も振り返らず走ったギルドマスターだ。こちらが助けてやらねばならない素人だ。
     戦闘に不慣れと言えばいいのだろうか。それにしては不自然だ。
     戦闘が苦手と表現すればいいのだろうか。それにしては身のこなしが軽い。
     ただ、注意を向けるべき時に無防備なのだ。
     致命的な場面でも、平気な顔で無防備を晒すお方なのだ。
     我らがギルドマスターは。

     サモナーが連れていたスライムが戦線離脱したのを見計らい、忍者はするりと戦場に躍り出た。サモナーはそれに気づいているのかいないのか、ただ真っ直ぐに前を向いて、剣を構えている。
     おそらく気づいていないのだろう。なにせ高校生だ。部活感覚でアプリバトルをしているのだろうし、部下……いや、ギルドメンバーの不備を補うなど考えたこともないのだろう。
     微笑ましくも、苦々しい。

     サモナーが走り出す。目指すは敵将だ。

     いつもそうだ。我が主はいつも、最短ルートで敵将の首を狙いに行く。
     無駄のない動き。だからこそ読まれやすい。返り討ちにされやすい。
     現にサモナーの背後には、ピタリと迫るフェンサーの姿がある。

    (邪魔はさせぬぞ)

     忍者が射った矢が鋭く、フェンサーの左肩甲骨下を射抜いた。
     声もなく倒れゆく敵に、息をついた。

    「ありがとう」

     不意にかけられた声。
     はっとして顔を上げると、サモナーがこちらを一瞥もせずに駆け抜けていくところだった。……聞こえたのは確かに、サモナーの声。気の所為か? 否。
     サモナーが背後……物影にひそむ忍者のほうに、確かに親指を立てていた。
     そして、そのまま敵将に向かって走っていった。

     無防備じゃない。
     不注意じゃない。
     注意散漫でもない。
     素人じゃない。
     下手なのではない。
     成長していないわけじゃない。
     我らがリーダーは、全てわかった上で、我らに任せる選択をなさったのだ。
     ゾクリと背筋が粟立つ忍者を、アカオニが笑いながら横目で見ていた。

    「殿、三下奴はお任せくだされ」

     静かに、誰にも聞こえないような声で忍者は呟く。
     懐から取り出したのは、サモナーに渡されたATKの小種だ。
     それらを一気にを口の中に放り込む。
     思い切り、バリバリと威勢よく噛み砕いて、彼は弓を構えた。

     主の背を守る、そのために。
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