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    matuhane

    @matuhane

    らくがきをおいておこうかなと思いました
    アナログです

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    matuhane

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    GLAY仮シンオウ四天王のオーバは、リーグとナギサを行ったり来たりの生活だ。

    職場のあるリーグの近くに部屋を借りていて、ナギサに居宅はない。
    ナギサではホテルに泊まるわけでもなく、当然のようにデンジの部屋で寝食するのが通例だ。
    大まかなスケジュールはデンジと共有しているスケジュールアプリに登録しておくが、デンジ宅に訪れる日を予め決めているわけではなく

    「明日行くわ」

    「今日仕事終わったら行く」

    「よーデンジ、泊めてくれよ」

    と、急な来訪もしばしば。
    連泊することもままある。
    リーグとナギサと、どちらが本宅かわからないくらいの頻度である。

    気紛れに訪ねられてデンジはさぞ迷惑しているかといえば、そうでもない。
    アポなしの来訪には玄関先で顔を顰めることはあっても、今更である。
    気を遣う相手でもない。
    むしろオーバの差し入れや冷蔵庫のありもので作ってくれる野菜炒めや炒飯で腹は膨れる。部屋が散らかっていたら片付けてくれるし、天気が良ければ布団も干してくれる。

    (お母さんか)

    と思ったりもするが、迷惑よりも有り難いことの方が多いのが現実だ。




    「それってまるで、夫婦じゃない」

    シロナが言った。
    今日の四天王とチャンピオンによる定期報告会のあと、ナギサに帰る話しをしたオーバに向かっての言葉だ。
    どこに泊まるのかと聞かれて当然のようにデンジのとこ、と答えたところから、前述の通りの話しをしたらである。

    「単身赴任中の夫」
    と、リョウ。

    「夫だとしても、少なくとも前日には連絡してもらわないと妻だって困るわ」
    と、キクノ。

    「つまりあなたとデンジは、夫婦以上の仲…」
    シロナはしみじみと言った。

    「もしかして二人は付き合っているんですか」
    まさかこの話題に加わってくるとは思いもしなかったゴヨウにまでそう言われ、オーバは狼狽えた。


    俺とデンジの関係って、普通と違うのか
    もう何年もこれが当たり前で、感覚が麻痺していた
    そういえば俺達は、誰が呼んだか「ナギサの腐れ縁」。
    タッグバトルをすれば息もぴったりだし、もしかしたら紙の上の約束や法律上のなんやかんやはないけれど


    「俺達って、夫婦…なのか…」


    真面目な顔をして額に手を当てたオーバに一同は一度息を呑み、そしてプッと吹き出した。

    「いやいや、違うでしょう」
    とリョウ。

    「落ち着いてください、オーバ」
    続けてゴヨウ。

    一呼吸置いて
    「そうか、違うな…違ったわハハハ」

    と笑ってはみたが、本当に違うのかとオーバの脳内はまだ混乱している。

    そこにキクノがやさしく言った。
    「夫婦はともかく、とても素敵な関係だと思うわ」

    その声色とおだやかな表情に、オーバは少し安心した。

    しかしシロナがこう続けた。
    「でも、もしどちらかに恋人でもできたら、成立しないでしょうね」

    「恋、人…」

    考えたこともなかった。いつまでも、ヨボヨボのじーさんになってもこの関係が続くと思っていた。
    しかし言われてみればそうだ。
    いつか結婚して子供ができて、なんてあり得ない話しではない。
    そうして、この関係に終わりが訪れるのだろうか。

    喪失感のようなものがオーバを襲う。
    それと共に「恋人」という言葉が重くのしかかる。

    もしデンジに恋人ができたら

    想像しただけで胸が焼けるようだ。

    オーバは思わず胸を押さえた。

    オーバのリアクションに、シロナは「言い過ぎたわ、ごめんなさい」と謝罪を口にした。

    「でもデンジさんの顔面、国宝級だからなぁ」
    リョウが言う。

    「そうね、今まで浮いた話の一つもないのが不思議だわ」
    キクノも続けた。

    「誰か、オーバの方にも恋人ができるかもと言ってやってください」
    ゴヨウの発言でこの話題は笑いに変えられた。

    恐らく気を遣ってくれたのだと思いゴヨウに向かって小さく手を上げ「悪ぃ」とポーズすると、ゴヨウは本を持っていない方の手を小さく上げてそれを制した。
    やはり気を遣ってくれたのだ。

    その後話題は変わり、やがて報告会も終わった。




    キクノが「前日までには連絡が欲しい」と言っていたことを思い出し、当日だけど連絡しないよりはマシだろうと、これから行く旨デンジにメッセージを送った。
    送った画面をしばらく見ていたが、既読はつかなかった。
    ジム戦や機械弄りなどしていたとしたら、デンジ宅に着くまでの間に既読がつかないこともあるかも知れない。
    オーバは画面を閉じた。

    さてナギサに行くか。
    そう、リーグの門を出ようとしたところで

    「オーバ」

    呼び止められて振り返ると、ゴヨウだった。

    「おお。さっきはサンキューな」

    改めて先程の話題転換への例を言うと、ゴヨウは首を横に振った。
    「礼を言われる程のことはしていませんよ。ところで少し話せますか」
    そして二人は近くのベンチに移動した。

    「話って何だよ」
    「いや確認なんですが、あなたとデンジさん、付き合ってるんですか」

    また話しを蒸し返されて、オーバは少し驚いた。

    「いや、付き合ってないけど」
    するとゴヨウは更に言った。
    「では、あなたはデンジさんに対して恋愛感情を持っていますか」
    予想打にしなかった質問にオーバは言葉を失った。

    デンジに対して恋愛感情
    デンジのことは、そりゃあ好きだ。好きだけど、恋愛とは違うだろ
    ん違うよな
    でもさっき、デンジに恋人ができたらって考えたらいやな気持ちになったな。
    もしかして俺、テンジのことそういう意味で好きだったのか
    いやいや軽率に答えをだすような感情じゃないんじゃないか

    頭の中がぐるぐるする。

    そんなオーバの様子を見て、ゴヨウは冷静に言った。
    「寝耳に水ですか」
    オーバはうんうんと頷いた。
    「なぜ私がこんな事を言うのかというと、先日読み終えた本に、主人公に片恋する主人公の同性の親友という人物がいたのですよ」
    ゴヨウは続けた。
    「その親友は自分の気持ちに気付かないまま主人公がヒロインと結ばれ、そのとき片恋していたことに気付いたのです。そして深く傷付いたのです。もし自分の恋心を自覚していたら、失恋の覚悟もできていただろうし、万が一だが自分が主人公と結ばれる未来もあったのかも知れないと後悔していました」
    オーバがゴヨウを見ると、ゴヨウもまたオーバーを見ていた。
    「あなたにそんな後悔をして欲しくないと思い、出過ぎた質問をしてしまいました」
    そのサングラス越しの眼差しが真っ直ぐで、圧倒されたオーバは少し背をのけぞらせてしまった。
    「テンジさんは皆の言う通り容姿がよく、ポケモン勝負も強い。もしかしたら遠くない未来、そのときは訪れるのかもしれません。オーバ、今一度自分の気持ちと向き合ってみてください、今すぐでなくとも」

    ゴヨウは茶化すわけでもなく、ただ真剣にオーバを案じただけだ。
    その気持ちは痛いほどにオーバに伝わった。



    「なんだか、デンジと顔あわせにくくなっちまったな」

    小さく呟いて、オーバはリーグを後にした。



    デンジの部屋の前でスマホを確認したが、先程オーバが送ったメッセージにはまだ既読がついていなかった。
    灯りはついているから在宅している筈。単純にスマホを見ていないのだろう。

    チャイムを押すと、少ししてライチュウがドアを開けてくれた。

    「ヨッデンジは」
    挨拶すると勝手知ったるリビングへ向う。
    するとソファではなく床に直に座ったデンジがいた。少し俯いて、その背中をエテボースがさすっているようだった。
    「デンジ、どーした」
    声をかけるとデンジは顔を上げ、パッと表情を明るくした。
    普段クールなデンジが顔をほころばせる。
    この表情を見られるのはオーバの特権だ。
    オーバは瞬時に優越感に浸り、そしてその端正な顔立ちが幼さを感じる程に緩められたのにつられ、自分も笑顔になる。
    「オーバ、来たのか」
    声も弾んでいる。
    今日は機嫌がいいらしい。

    ゴヨウの話しからデンジを意識してしまっているため、ぎこちなくなってしまうかもと危惧したが、杞憂に終わりそうだ。会ってしまえばいつも通り。
    ではあるが、心なしか普段よりデンジが可愛く見えてしまっている気がする。
    やはり恋なのか
    「ちょうどいいところに来てくれたさっそくだが、ちょっとエテボースと替わってくれないか」
    替わるって何をと思いながらデンジの方へ行くと、エテボースがすっと退いた。
    デンジは「お疲れ」と言ってエテボースをボールに戻した。
    エテボースのいたところに座ると、目の前はデンジの背中。
    「で、俺は何すればいいわけ」
    オーバが問うと、デンジはこう返した。

    「肩揉んでくれ」

    機械弄りで細かい作業を長時間していたため、肩がガチガチに凝って仕方がないとのこと。
    手持ちで肩揉みができそうなのがエテボースしかおらず、(エレキブルだと力加減ができなかった場合大ダメージを受けるため除外)しかしやはり力加減が難しいのと、手の大きさも微妙に合わず、思ったように揉めなかったという。

    「へーへー。俺は都合の良いマッサージ職人ですよ」
    それでいつになく嬉しそうに出迎えてくれたわけかとオーバは不貞腐れながらも、言われた通りに肩を揉んでやった。
    「うーん、そこそこ。上手いぞ、マッサージ職人。あと、首の方も」
    「へーへー。でもどうしてお前マッサージチェアとか作んねーの手持ちに揉ませたり、俺待ってるより効率よくね」
    「作ろうと思えば作れるんだが、やっぱり人の手に勝るものはないだろ」

    オーバ以外にデンジの肩を揉めるような仲の奴なんていないのに。「人の手」じゃなくて「オーバの手」だろう。
    まあでも、デンジが気持ち良さそうだからいいか。
    と、結局デンジに甘々なオーバであった。

    マッサージしやすいように、デンジは上着を脱いで黒いTシャツ姿になっている。
    肌着は着ておらず、素肌に直接Tシャツを着ているため、身体のラインがよくわかる。
    金髪にナギサの海と同じ色の瞳。顔立ちもさることながら、長身の上ほどよい筋肉の付き具合で腰の位置も高くスタイルがいい。
    ジムリーダー最強と言われる程にポケモン勝負も強いし、ナギサタワーを作ってしまうくらいに頭も良くて手先も器用。
    本当に何で今まで気付かなかったのだろう、この男に浮いた話の一つもないのが不思議だということに。

    「なーデンジ、お前付き合ってる女とかいんの」

    言うとデンジはバッと振り返って、オーバの顔を見た。その眉間には深い皺が寄っている。
    「は何言ってんのいるわけないだろ」
    しっかり振り返られたため、マッサージする手が肩から離れた。
    訝しげにデンジは言った。
    「何でそんな事言うなんて、逆にお前に彼女でもできたわけ」
    「違う違うそうじゃなくて、今日リーグでさ、その…」
    と言いかけたものの、どこまで言ったらいいものか。
    夫婦とか言われた、はちょっと言えないかな、と少し考えてオーバは言った。
    「お前イケメンだし、その内彼女ができて、俺も今まで通りにお前と過ごせなくなるんじゃねーかとかそういう話しになって」
    気まずいというわけではないのだが、デンジと目を合わせては言えなくて、オーバは視線を逸らした。

    するとデンジはため息をついた。

    「ばーか。そんな心配してんじゃねーよ。彼女とか興味ねーし」

    「でも、いつか気が変わるかも、運命の出会いしちまうかも」
    デンジの言葉に安堵しつつも、やはり絶対ないなんてことはないと不安になる。
    しかしデンジはそんな不安はないとばかりに堂々と言った。
    「だって俺にはお前がいるのに」

    「え、えっ」

    聞き間違いじゃないよな
    「俺にはお前がいるのに」って何どういう事
    もしかしてデンジは、俺のことを…

    オーバの心臓はドキドキと早鐘を打ち、顔に熱が溜まるのを感じた。

    「え、今の言葉、どういう意味」
    汗をかきながらオーバが問う。
    「言葉のまんまだろ。お前とつるんでるのが一番気楽で面白いのに」
    ちょ…

    愛の告白かと若干勘違いしたわ…

    ゴヨウのせいで意識しすぎていたオーバは、早とちりだったと恥ずかしくなり、更に顔を赤くした。

    「そんなアホなこと言ってないで、ほら、マッサージ職人」
    そう言ってデンジはまたオーバに背中を向けた。

    ここまでキッパリアッサリ言われると、デンジからオーバへの恋愛感情はのぞみ薄、という感じだろうか。
    逆にドキドキしているオーバは、デンジへの恋愛感情があるのかも知れない。
    もやもやしながらオーバはひたすらマッサージを続けた。

    俺、デンジのこと、好きなのかも…

    「なー、背中も揉んでくんない」

    人がこんなにもやもやしてるってのにデンジの奴、俺の気も知らないで。

    イラっとしたが、それは八つ当たりだ。

    「へーへー。じゃあうつ伏せになれよ」

    うつ伏せになったデンジの上に少し腰を浮かせて乗る。
    腰の辺りからだんだんと肩の方に向かって押してやる。
    「イテテ、痛気持ちいい〜」
    デンジの声はご満悦そうだ。
    「肩甲骨のとこも、頼む」
    オーバは言われるがまま押してやった。
    そして黙々と押しているところに、デンジが話しかけてきた。


    「あのさ、オーバ。もし法律とかで誰かと絶対結婚しなければいけない、てなったら、俺オーバと結婚する」

    「ファ」

    突然の仮想の提案に変な声が出た。

    「オーバとなら楽だし、お前しょっちゅうウチに来てっから一緒に住んでもあんまり変わらなそうだし」

    「お、オウ」

    ドギマギしながら、何とかマッサージを続ける。

    「俺、オーバ好きだし」

    「ファッ」

    また変な声出た。

    「お前も、俺好きだろ」

    「お…オウ」

    この好き、は、多分恋愛の好きとは違う。
    違うとは思うのだが、違わないかも知れない。

    オーバの心臓はバクバクいっている。
    顔も熱い。

    「でもさデンジ、俺らが結婚するってなったら、夫婦らしいこともするわけ」

    恋愛感情が伴えばそうなる筈だ。
    オーバからのガチ質問に、デンジの返答は。

    「まーそうなるかな」

    そんなアッサリと…
    少しは悩むとか恥じらうとかそれはないとか。
    勘違いが勘違いじゃなくなるだろ

    これ以上頭の中をぐちゃぐちゃさせたくない。白か黒かはっきりさせたくなったオーバは更に核心をつくことに決めた。

    「じゃあ、お前俺とキスできる」

    これにイエスと言えば、まず黒だろう。
    デンジが黒だったとして、ならばオーバはどうなのだろうか。
    これまでの会話を通して、オーバの中でほぼ答えは出ていた。

    「………できるよ」

    オーバはマッサージの手を止めた。

    「マジ」

    思わず聞き返した。

    それにデンジはこくりと頷いた。

    後ろから見たその耳が、真っ赤だった。

    「なあ、なあデンジ」

    ぐい
    オーバはデンジの肩を掴んだ。

    「こっち向けよ。お前、どんな顔してんの」

    肩を掴んで無理にでもこちらを向かせようとするのだが、デンジはそれを拒んで頑なに振り返ろうとしない。
    顔の下に敷いているクッションを両腕で掴んで顔をきつく埋めた。

    「ずりぃよデンジ、顔、見せろっ」

    力任せに身体ごとひっくり返した。
    しかしデンジがクッションは離さなかったため、仰向けになっても顔を見ることはできなかった。

    「往生際」

    そうしてクッションの引っ張り合いがはじまった。
    デンジがクッションを掴む力はなかなかのもので、オーバが本気になっても引っ剥がすことは難しかった。

    「この…隙あり」

    と、ガラ空きになっていた脇をくすぐると、呆気ないほど簡単にクッションはオーバの手に奪い取られた。

    そうして露わになったデンジの顔は、耳まで真っ赤だった。
    それでも両腕で顔を隠そうとしたが、両の手首をオーバに掴まれてしまい叶わなかった。

    真っ赤な顔をして、ジト目でオーバを見るデンジ。
    さっきまでは饒舌だったが、一変して何も話そうとしない。口を真一文字に引き結んでいる。
    そんなデンジを見下ろして、オーバはぽそりと呟いた。

    「可愛いじゃねーか」

    「可愛いとか言うな」
    と吠える様がまた可愛いのだが。

    そしてオーバは一呼吸置いて、ゴクリと生唾を飲み下してから意を決して言った。

    「おい、するぞ」

    目を丸くしてぽかんという顔をしたデンジが、ワンテンポ置いて返した。

    「なにを」

    「キス」

    「」

    今までの会話で主導権を握っていたのはデンジだったが、今はすっかりオーバのペースになっていた。
    ゆっくりと顔を近付けてくるオーバに、デンジは慌てた。

    「急すぎる」

    「今しなかったらいつするんだよ」

    そんなのまたいくらでも機会があるだろうと言いかけて、やっぱりないかもとデンジは言葉を飲みこんだ。
    この長い付き合いの中で、今、初めてなのだ。
    だから今を逃したら、次いつこういう流れになって、こういう雰囲気になるか。いや、もう二度とならないかもしれない。

    「わかった、わかったから、手、離してくれよ」

    観念したデンジが言った。

    また顔を隠す気じゃないなかと疑念するオーバに、「もう隠さないから」とデンジは言い、ようやく両手は開放された。
    手首をおさえていたオーバの手は、代わりにデンジの熱い頬へと添えられた。

    そして開放されたデンジの両腕は、オーバの背中にそっと回された。

    そうして腐れ縁の二人は、初めてお互いの唇を重ね合わせた。






    ふにふに
    その柔らかさは新発見だとばかりに、口づけの後飽きないのかと思うほど、オーバはデンジの唇を人差し指で触り続けた。
    「おい…いい加減ヤメロ」
    しばらく好きにさせてやっていたデンジがとうとう口を開いた。
    「いやーだってこの感触、くせになる」
    と、一向に止めようとしないので、デンジはぺちんとオーバの手を払った。
    そしてオーバの下から起き上がると、脱いでいた上着を羽織る。

    「メシ食い行くぞ」

    「え、えぇ~余韻の睦言とかないわけ」

    「むつ…お前、アフロのくせにそういう言葉使うなホラ行くぞ」

    ずんずん玄関に向かってゆくデンジの後に、仕方なくオーバも従った。


    外は薄暗くなっており、丁度夕飯時だ。
    風が冷たく、デンジは肩を竦めた。
    上着を着ているデンジよりもだいぶ薄着なオーバは、適温なようで涼しい顔だ。
    「寒かったらもっと寄れよ」
    と、普段しているようにオーバはデンジと肩を組んだ。
    抱き寄せるとまではいかないが、少し自分の方に引き寄せると、デンジはほぅと息を吐いた。
    「あったけ…」

    密着したところから、デンジの低い体温と、ふわりと香る体臭を感じた。
    すっきりした中に甘さが香る。シャンプーかボディソープのにおいだろうか、どちらも一般的な量産品を使っている筈だが、なぜだろうとても心地よいかおりだった。
    今までこんな風にデンジに「いい匂い」なんてしみじみ思ったことはなかった気がする。
    合わせた両手にはあ〜っと息を吐きつける横顔。
    白い息を吐くこの唇に、触れたんだ。
    キスした。
    改めて感覚が蘇り、オーバの心臓は高鳴った。
    そして知りたくなった。

    「デンジっていつから俺のこと、好きだったの」

    問いかけると、デンジは弾かれたように顔を上げた。

    「いつって…」

    そして俯く。

    「わかんねー。本当にそうだったのかも、実際さっきまでよくわからんかった」

    と言って、頭をオーバの肩に乗せた。

    「お前は」

    聞き返されて、オーバも首を傾げて肩に乗ったデンジの頭に自分の頬を寄せた。

    「俺もそんな感じ」

    「んだよ、なのにキスしてきやがって、盛りのついた中学生か」

    「中坊の頃はポケモン勝負ばっかりで色恋興味なさすぎだったなー」

    「遅れてきた思春期か」

    「かもなー」

    それからしばらく無言で歩く。
    その無言と、お互いの体温が心地よかった。


    とりあえずこのことは、後でゴヨウに報告しようと思うオーバであった。
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