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    meepoJlo

    @meepoJlo

    呪術の狗🍙棘 夢小説をこそこそ書いています。

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    ひざまくら新しい本を買った。

    本当はネット注文した方が早いけれど、寮にそうした郵便物は運び込めないと言われてしまった。学校にも郵便物が皆無と言う訳ではないだろうに。と、毒吐きつつも。コンビニとかに届けてもらうのなら、もう本屋に行くのと変わらないかと思って、一番近い本屋へ行った。学校の帰り道に、遠回りをして本屋へ寄ってから寮に戻る。

    ほくほく顔で部屋に戻って、包みを開き表紙をめくる。


    けれど。
    その文字はもう頭に入って来ない。



    学校帰り、一緒に行くと着いてきた棘は、そのままコンビニで買ったココアとスナック菓子を手に唯の部屋を訪れる。

    唯は部屋に戻ると本を開封して、自分で買ったジュースを開けながらピンクの座布団に座って本を開いた。
    棘もそこにある座布団に適当に座り、もう慣れた唯の部屋でスマホを見たり、それぞれの時間を過ごす。何で事のない、日常。


    ふと、棘がスマホを置く。
    ことん、とローテーブルに物を置く音が微かに聞こえたが、唯はさほど気にしなかった。
    本に目を落としたままでいると、それからしばらく静かに時間が流れる。

    不意にその気配が唯を捉えて動く。
    腰をかがめて、本と膝の間を器用にくぐってその頭がふわりと唯の膝に乗った。
    棘の柔らかい髪が膝に落ちて、少しくすぐったい。

    …妨害されている。

    こんな状況では、文字の意味など頭に入って来ない。
    少しだけ本をずらしてチラリと棘を見れば、仰向けの彼は唯から目線を外して自分の手元を見ている。片腕を伸ばして、白く長い棘の指先は唯の髪の先に触れる。くるくると指に巻いてみたり、それを離してさらさらと解いてみたり。

    「・・・・・」

    無言で表情のない棘は、少し不機嫌そうな顔で指が動かす。

    唯は本を閉じて、テーブルに置いた。
    それを合図にしたように、棘は唯を見る。唯の髪に触っていた手を離して、腕を伸ばしたそのまま、唯の頬にそっと触れた。もう片手も添えて、両方の頬に触れる。
    見つめたその紫の瞳はいつも綺麗で。
    じっと見つめていれば、吸い込まれてしまいそうだ。

    「高菜…?」

    棘が更に手を伸ばして、唯の頭に触れた。もっと近く、と。唯もそれに応えて背を屈め、棘の顔に自分の顔を寄せた。唇が、触れる。
    急に恥ずかしくなって唯は顔を赤らめた。
    状態を起こそうとしたけど、棘は頭に回した腕をそのままに、離す気はないらしい。棘が少しだけ、唯の頭を押さえると、もう一度唇が触れた。それが僅かに離れると、ペロリと唯の唇を舐める。

    「・・・・・?!」

    「おかか」


    耐えきれずに熱の昇る真っ赤な顔を上げると、今度はすぐに解放された。目が合えば、彼は口の端を上げて満足そう笑う。

    棘はそのまま寝返りを打って、唯のお腹あたりに顔を埋め、腰に手を回す。
    くぐもった声で、もう一度、おかかと聞こえた。

    どうするのが正解か…少し迷ったけど、唯は棘の頭に触れる。柔らかいその髪が、ふわふわしていて気持ちがいい。そっと撫でれば、腰に腕を回したまま少しだけ棘が身動ぐ。



    夕飯まであと少し。
    もうしばらく、このまま。






    End***










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    _aonof

    PROGRESS時間と世界を跳躍するトリッパーな女主と夏油の話。救済系。
    あの春の日、あの少女を死から救えたら、私の選択肢はまた変わってただろうか?
    前中後編のうちの前編。まとめた。
    雨の音がずっとしている。水があちこちにぶつかり、跳ねては地に落ちるて流れていく音が重なり合って響いている。今、世界のノイズはそれだけで、通り過ぎていく傘がいつもよりも人間の情報を減らしていた。今は何も見たくない。特に『普通の人間』を視界に入れたくなかった夏油にとって、この雨はほんの少しだけ救いだった。行く宛もない。そろそろ戻らなければ門限に間に合わないと分かっていても、どうしても足を元来た道の方へ向けられない。帰っても今は誰もいないのを知っている。出迎えてもらったところでなんになる。そう思う自分と、傘も差さずに馬鹿みたいに濡れて、どうするつもりだと自分が問いかけてくるのを聞こえないふりをした。夏油は俯いて毛先から雨が滴り落ちるのをそのままに、ただただ黙ってただ足を進める。止まることは出来ない。自分が決めた道を歩んでいる。でも行き先が分からない。救うこと。その対価に傷つくこと。見返りを求めているわけじゃない。でも、この世界はあまりにも──自分達に優しくない。
     ふと、前に人が立っていて足を止めた。
     避けようとした瞬間に、雨が止む。
     違う、頭の上に傘を差し出されたのだ。
     顔をあげると 7892