もうすぐ死んでしまう私と君の話 16 君の時※死ネタを含むオリジナルです。
自己責任でご覧下さい。
何でも許せる方向け。
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伸ばしたその手が届く事はもうないと。
……わかっていた。
瞼がとても重くて。
しばらく開きそうにない。
でも、握ったその手の温かさは、いつもと変わらないの棘くんのもので。
近くに彼が居てくれて。抱き締めてくれて。
ただそれだけで、何だか嬉しかったから。
『 唯 』
呼ばれたその声は、聞き慣れた彼の声だった。
酷く悲しいような冷たい声。
でもたぶん、冷たくて世界で一番優しい声。
それは溢れて落ちて。
空っぽの胸に広がるように染み渡っていく気がした。
私は何度かそれを聞いたような気はしていたけれど。
たぶん、初めて聞いた声だった。
それはきっと、棘くんの[[rb:呪い > こえ]]。
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