その言葉は「ねぇ、棘。
君、本当は普通にしゃべれるんじゃない?」
言われて大きく目を見開く。
真っ直ぐにこちらを見る五条悟の手は、棘のネッグウォーマー、口元のチャックに触れた。
「おかか」
振り払うことも、もう出来ない。
ここまで来たらきっと、誤魔化しも効かない。
五条の手が、ゆっくりと襟のチャックを開いていく。
「実は呪言のコントロール、もう出来るんでしょ」
露わになる口元に。
「おにぎりの具しか話さないのは、うっかりボロを出さない為、とか?」
五条は笑う。
「おかか」
「三文芝居はもういいよ」
棘は微かに目を伏せる。
僅かに逡巡して、
「いつから、気付いてたの?」
と、呟く。
五条は笑顔のまま、表情を崩さない。
「交流戦の後くらいかな。
呪詛師と内通していたのは、棘だね?」
隠されたままの目を見て静かに頷く。
ここまで、かな。
棘がゆっくりと口を開く。
けれど。
「僕相手では、君の呪言は効かないよ」
「…知っています」
目を伏せてから、もう一度その顔を見る。
きっと、叶わない。
ごめんなさい。
でも、
もう。
これで終わりかな。
『 』
End***