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    meepoJlo

    @meepoJlo

    呪術の狗🍙棘 夢小説をこそこそ書いています。

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    こんぽた「わー。寒いっ」

    陽は落ちて辺りは暗い。
    談話室でしばらく休憩して出会った棘に、ジュースを買いに行くと告げると、一緒に行くと着いて来てくれた。

    自販機は戸外にある。
    建物を一歩出ると予想以上に寒くて、ジュースが欲しかったけど、急にコンポタの気分になった。はぁーっと息を吐けば、それは白くなって消えていく。

    元々外に出るつもりはなかったからパーカーしか羽織ってないけど、自販機まで距離がある訳でもない。走ればいいか、と隣を見ると、ちゃっかり棘は上着を着ている。
    そこで気付いたけれど。

    「最初から自販機かコンビニでも行くつもりだったの?」
    「しゃけ」

    笑って棘が頷き、自販機の方角を指差した。
    たまたま通りかかった談話室で唯を見つけた、と言う事だろう。

    「じゃあ、自販機まで競争」

    寒い。早く行こう。
    棘がこちらを見て一瞬何か言いかけた気がしたが、唯は気にせず走り出す。

    「よーい、どんっ」

    言うのが早いか、走り出すのが早いか。
    距離はさほどないから、このくらいズルすれば棘に勝てそうだ。
    唯は思い切りスタートダッシュを決める。

    「おかか?!」

    少し戸惑ったような声が後ろから聞こえた。
    でも、すぐに棘の動く気配があって。

    「明太子っ」

    気合いが入って、走り出す。

    それは一瞬。気がつけば、棘はすぐに唯の背中を捕らえていた。そして、そのまま追い抜く。
    簡単に追い抜いて。
    どんどんと距離を離されて行く。


    はぁはぁと息を切らす唯に、割と平気そうな棘。

    「ズルい…」
    「すじこ〜」

    我ながら訳の分からない言葉を投げるが、棘は笑ってピースを見せつけて来た。

    「早いなぁ。やっぱ叶わないや」

    唯は小さく独言て、自販機に向き直る。
    一瞬走ってみたけれど、やっぱり吐く息は白くて寒い。

    …やっぱりジュースは辞めよう。部屋にはまだお茶もあったはず。
    財布を出してお金を入れた。
    温かいコーンポタージュを押す。

    横に居た棘は何かペットボトルを買って取り出していた。
    唯は座って自販機から缶を取り出し、冷えた指先を温めるように握りしめる。

    「やっぱり寒いね。早くもどろう」

    と、立ち上がると。


    ふわりと、何かが唯の肩にかかる。

    温かいぬくもりと。
    何度も感じた事のある、棘の匂いと。

    あ、棘の上着だ。



    「こんぶ?」

    覗き込むように後ろから棘が首を傾げる。

    「いいよ。私は大丈夫だから」

    唯が上着に手をかけると、その手を棘がぎゅっと握る。

    「おかか」

    「棘が寒いよ」

    棘は長袖のラフなTシャツを着ていたけれど、薄手のパーカーを羽織る唯よりはるかに寒そうに見える。

    棘は首を振った。

    「ツナマヨ」

    缶を持たない方の冷たい唯の手をそのまま握り、行くよと引っ張る。

    包み込むように繋がれた棘の手は、やっぱり今日も温かい。










    End***






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    _aonof

    PROGRESS時間と世界を跳躍するトリッパーな女主と夏油の話。救済系。
    あの春の日、あの少女を死から救えたら、私の選択肢はまた変わってただろうか?
    前中後編のうちの前編。まとめた。
    雨の音がずっとしている。水があちこちにぶつかり、跳ねては地に落ちるて流れていく音が重なり合って響いている。今、世界のノイズはそれだけで、通り過ぎていく傘がいつもよりも人間の情報を減らしていた。今は何も見たくない。特に『普通の人間』を視界に入れたくなかった夏油にとって、この雨はほんの少しだけ救いだった。行く宛もない。そろそろ戻らなければ門限に間に合わないと分かっていても、どうしても足を元来た道の方へ向けられない。帰っても今は誰もいないのを知っている。出迎えてもらったところでなんになる。そう思う自分と、傘も差さずに馬鹿みたいに濡れて、どうするつもりだと自分が問いかけてくるのを聞こえないふりをした。夏油は俯いて毛先から雨が滴り落ちるのをそのままに、ただただ黙ってただ足を進める。止まることは出来ない。自分が決めた道を歩んでいる。でも行き先が分からない。救うこと。その対価に傷つくこと。見返りを求めているわけじゃない。でも、この世界はあまりにも──自分達に優しくない。
     ふと、前に人が立っていて足を止めた。
     避けようとした瞬間に、雨が止む。
     違う、頭の上に傘を差し出されたのだ。
     顔をあげると 7892