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    meepoJlo

    @meepoJlo

    呪術の狗🍙棘 夢小説をこそこそ書いています。

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    meepoJlo

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    君のみぎがわ好きな子がいる。

    初めは言葉が噛み合わなくて、申し訳なく思っていたけれど。身振り手振りで次第にコミュニケーションが取れるようになっていった。

    優しくて。いつも笑顔で。

    棘が任務から戻ると必ず、
    「おかえり」と言ってくれる。
    その言葉に、いつも安心感を覚えていた。
    胸が温かくなる気がしていた。


    体育が苦手だと言う唯に、休み時間や放課後、真希が稽古を付けているのを知っていた。唯が頼み込んだらしい。棘もパンダも時々憂太もそれに付き合う。
    それ以外の日はいつも授業が終わると1人グラウンドで走っていた。そんな一生懸命な所を、つい目で追ってしまって。
    目が合うと、適当に誤魔化してしまうけど。
    彼女はいつも笑ってくれた。



    今日も、唯はひとりでグラウンドにいた。
    10周程走ってから、次第に速度を落として行く。立ち止まり呼吸を整える唯に、棘は後ろから声を掛けた。

    「ツナマヨ」

    いつもの悪戯のように、ペットボトルを唯の頬にピッタリとくっつけてみる。
    冷たいと笑って彼女はそれを受け取った。

    「ありがとう」

    唯は言って棘を見る。


    いつからだろう。
    その笑顔が欲しいと、思ってしまったのは。






    端の階段に座って唯は休憩をとる。棘も隣に座った。
    学生は少ないのにやたらと広いグラウンド。
    陽が傾きかけ、建物の影が伸びたその場所には、棘と唯の2人しかいなかった。

    渡したスポーツ飲料に口を付ける彼女の隣で、棘も一緒に買ったお茶のペットボトルを空けた。一口飲んで、声を掛ける。

    「ツナ」

    棘は顔をそのままに、目線だけを唯に向けた。

    ネッグウォーマーの下で口を開く。
    けれどそれ以上の言葉が続かない。それ以上の言葉が、見つからなかった。
    棘は目を伏せて、ペットボトルを見た。



    不意に、唯が口を開いた。

    「知ってたんだね。私が此処にいたの」

    「しゃけ」

    振り返って頷いた。

    見に来て、何度も声を掛けようとしたけれど。
    実際にこうして声を掛けたのは初めてだった。

    棘は唯の顔を覗き込む。
    彼女はそっと目を逸らした。

    「ツナマヨ〜」

    腕を伸ばして、唯の頭にぽんぽんっと軽く触れてみる。
    いつも頑張っているのを、本当は棘だけではなくてみんなも知っていたから。

    「そんな褒められる事でもないよ。週に何日か走ってるだけだし」

    目を細めて笑う唯。

    「なんか恥ずかしいから、みんなには内緒にしてたんだけど。棘くんにバレちゃった」

    言われて目を瞬いた。
    …バレていないつもりだったのか。

    「ツナ」
    「また今度。体術教えてね」
    「しゃけしゃけ〜」

    ピースして笑って見せた。


    辺りは静かで。
    風で擦れる葉の音がやたらと響く。

    「ねぇ、棘くんは、その…」

    唯は棘を見る事なく呟く。
    何処か遠くを見ているようだった。

    「好きな子とか付き合ってる子とか、いないの?」

    言われたその言葉に、身体が震えた。
    ぐっと奥歯を噛む。


    他意はないのかもしれない。
    否、他意がないからこそ。

    それを、聞かれると言う意味に。

    少なからず動揺してしまった。


    心臓が、煩く鳴る。
    苦しくて。


    「………」

    一瞬振り向いた唯と、動揺する棘の視線が絡まった。
    あ、と小さく漏らす唯。

    「…ごめん」

    唯は小さく呟いて、その場に立ち上がった。

    「ごめん、私。無神経な事、聞いちゃって…」

    彼女の声が、震えていた。
    直視する事が出来なくて棘は目を伏せる。

    こんな姿を、見せたかった訳じゃない。


    ただ君に、
    好きだと伝えたかっただけなのに。


    そんな当たり前の事も出来ない自分が、悔しくて。
    言葉がひとつも見つからない。

    高菜?
    こんぶ?
    ツナマヨ?

    きっと伝わるけれど。
    どれも、違う気がした。

    拳をぎゅっと握る。食い込む爪が痛んだ。


    「私、部屋に…、」

    言う唯の言葉を無理矢理遮る。

    「おかか」

    …遮ってしまった。

    意を決して棘は立ち上がる。


    好き、を。
    おにぎりの具に載せた事はなくて。

    特別な言葉だから。


    「いくら、明太子っ!」

    自分を鼓舞して、階段を駆け降りる。
    唯の手を掴んだ。

    「ツナツナ」

    「……?」

    戸惑う唯の腕を軽く引っ張り、階段の下を指差した。
    唯は素直にそれに従う。
    その瞳は、やはり涙をいっぱいに浮かべていた。

    きっと、彼女を泣かせてしまったのは、自分だ。
    好きだと伝えたら、優しい君は困ってしまうだろうか。


    階段を降りると、棘は唯の手を離して背を向ける。砂地の地面にしゃがみ込んだ。

    人差し指で、ゆっくりと文字を書く。

    通じなくてもいい。
    伝われば。


    ごめんなさいと言われたら、冗談だよって笑って返そう。


    「棘くん?」

    「…ツナマヨ」

    座ったまま振り向いて唯を見た。

    恥ずかしくて、ネッグウォーマーを握る。目元近くまでいっぱいに赤い顔を隠した。
    少しだけ動いて、目線で地面を指す。


     “ 唯 が 好 き ”




    「………っ」

    唯は真っ赤になって、顔を両手で覆った。
    肩が震えている。その頬は、隠していても分かるくらいに濡れていた。

    棘は大きく目を見開く。
    そんなに困らせるつもりはなかったけれど。

    「…こんぶ…?」

    唯は何も言わずに、ただただ涙を拭っていた。

    「ツナ…ッ、お、おかか?」

    棘は慌てて立ち上がる。
    思わず手を伸ばしたが、途中で止めた。
    触れて良いのか、わからなくて。

    困ったように唯を覗き込む。

    「こんぶ?たかなっ」

    ごめんと、謝る事しか出来なかった。
    そんな棘に唯は首を振る。ふるふると何度も首を横に振った。

    「…違う。違うの…。嬉、しくて…っ」

    唯は袖で涙を拭った。

    「私も、棘くんが、好き…」

    か細い声で、でもハッキリと。
    唯は棘を真っ直ぐに見た。

    眉を顰めて。
    棘も唯を見る。



    時が止まったような感覚があった。
    辺りの音の一切がなくなる。

    「…しゃけ?」

    小さく息を吐いて、唯を見た。
    唯が頷く。

    頬は濡れていたけれど、唯はいつものように優しく笑っていた。
    棘が目深に被っていたネッグウォーマーをズラす。思わず笑みが溢れた。

    少し迷ったけれど。
    まだ涙を零す彼女が愛おしくて。
    やっぱり可愛くて。

    棘がゆっくりと腕を伸ばすと。
    唯は笑った。

    腕を背中に回してその小さな身体をぎゅっと包み込む。唯の頭が棘の胸に触れた。
    その髪をするりと撫でる。柔らかな、唯の匂い。


     す き 、


    だと。小さく口元を動かせば。
    唯は腕の中で微かに頷いた。










    End***



































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