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    meepoJlo

    @meepoJlo

    呪術の狗🍙棘 夢小説をこそこそ書いています。

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    すきなところ「唯さんって、狗巻先輩のどこが好きなんですか?」

    無邪気に聞く野薔薇に、固まる唯。
    授業後の夕練の後、買ったばかりのアイスティーを手にベンチに座る唯は目を瞬かせる。

    「…えぇ…。今それ聞く?」

    唯は顔を真っ赤にして野薔薇を見ると、わくわくした顔で唯を見ている。
    真希は自販機を見ながら、

    「唯は1年の時からずっと棘一筋だったよな」
    「だよなー。逆もしかりだったけどな」

    唯に背を向ける形で飲み物を選びつつ、揶揄い混じりに真希が言う。同意するパンダ。

    「付き合うんだか付き合わないんだかで色々あって。そんなん見させられてた私らの身にもなってくれ」

    顔は見えないけど、たぶん真希は笑っている。
    自販機に小銭を入れて何やらボタンを押していた。ガコンッと缶が落ちる音がする。

    「それも聞きたいなぁ」
    「もう…言わないでぇ…」

    ここまでで既に唯のHPはかなり削られている。気がする。

    「野薔薇ちゃん…私は先輩よ」
    「関係ないですよ」
    「……えぇぇ」
     
    真希とパンダの後ろ楯に、ぐいぐい来る野薔薇ちゃん。真希は手にした缶を空けて、さも楽し気に唯を見た。パンダも楽しそうだった。

    「…で、狗巻先輩の何処が好きなんですか?」

    唯はアイスティーのペットボトルを見た。暑くなる顔を伏せる。

    「…棘は優しーー」
    「優しいは却下で」

    透かさず真希が突っ込む。

    「棘がどうだかはさて置き、優しいは大前提で。解答として面白くない」

    それに頷く野薔薇とパンダ。
    面白くない答えの時点でもはや…とは思ったけれど。ううーん、と唯は唸る。

    少し悩みながら、考えて。

    「一言では言えない、けど。好きになるキッカケとか、好きになる前や後。付き合う前とか後とかも…」

    悩みながら、言葉を続ける。

    「色んな姿を見て…たくさんの時間を共有して…たくさんの、棘を知ってるから…」

    優しい、は確かに大前提だ。
    棘はきっと、誰にでも優しい。それも含めて。

    「それも、全部を含めて全部が好き。かな」

    考えが上手くまとまらない。

    「あとは、可愛い…と、思ってる」

    「………」

    辺りが急にしんとして、唯が顔を上げる。
    ん?変な事言ったか?

    「途中までいい事言ってる風だったのに…。急に、最後だけえらく抽象的になったな」

    真希が唸る。

    「可愛いは、まぁわからんでもない。パンダにはわからん一般論だが」

    パンダと真希に言われて、また顔に熱が昇る。
    発案の野薔薇はただ笑うばかりだった。

    「もう。ほら、やっぱ言わなきゃよかったぁ」

    呟く唯に返事はない。
    項垂れる唯に、反対側から近付く足音と。それと同時くらいに声が掛かる。

    「おかかー!」

    「………?!」

    顔を上げると、思いの外直ぐそばに棘がいた。
    目元しか見えないけれど、眉間に皺を寄せて少し不機嫌そうだ。

    「棘?」

    無言で唯の元まで歩みを寄せる。
    片方の手をネッグウォーマーに、もう片方の手で、ベンチの背もたれに触れて、唯に目線を合わせて腰を屈める。

    「…おかか」

    棘の顔を目の前に、動けなくなる。

    違う?何が?

    きょとんとする唯に、少しだけネッグウォーマーをずらした棘の顔が近付く。
    紫がかった瞳に、微かに見える呪印の口元。ゆっくりと近付いてきて、唯の唇が塞がれる。
    唯は驚いて目を見開いた。

    「〜〜〜〜〜っ!!?」

    すぐに棘は離れていったけれど。
    唯は顔を真っ赤に染めて、身体が動かなくなる。
    恥ずかしくてみんなの方を振り向く事が出来ない。

    棘はその場にしゃがみ込んだ。
    何事も無かったようにパンダが唯の後ろから声をかけた。

    「悟の用事、済んだのか?」
    「しゃけ〜」
    「可愛いでは不満だと?」
    「しゃけ」

    唯は真っ赤な顔を隠して蹲る。

    「何処から聞いてたの…」

    ちらりと棘を見れば、ニヤリと笑って指を一本立てている。

    「始めから…?」
    「ツナマヨ」

    再び唯は力なく蹲る。
    パンダと真希は棘がいる事に気づいていたんだろうな。野薔薇ちゃんは…どうだろう。
    何にせよ、顔を上げる事が出来ない。

    「お前のせいだぞ棘。唯、何とかしとけよ」
    「しゃけ」

    真希が缶をゴミ箱に捨てる音が聞こえた。

    「じゃ、お疲れ〜棘」
    「ツナツナ〜」
    「唯さん、先輩、お先でーす。また色々聞かせてくださいねっ」
    「ツナ」

    それぞれに手を振る棘。


    「えぇ、置いてかないで〜」

    ぱっと顔を上げれば、蹲る唯の同じ目線でしゃがみ込んだまま、顔を覗く棘がいた。
    足音が遠ざかっていくけれど。
    棘が真っ直ぐに唯を見るので、目を離す事が出来なかった。屈託のない笑顔で、唯だけを写す深い瞳の色に、心臓が煩く鳴っていた。


    弱いんだよなぁ、この顔に。











    3人(?)になった寮への帰り道。

    「そうやって、ムキになる辺りが唯の言う“可愛い”になるんだと思うんだけどな」

    真希がぽつりと呟く。
    野薔薇はさも気にしていなさそうだったが。

    「2年生は、あんなの毎日見てるんですか?」
    「まぁ、棘はけし掛ければ割とノッてくれるし。否放っておいてもあんな感じか」

    質問にはパンダが応える。

    「…私は夕練だけでお腹いっぱいなんですけど。いつも距離が近い…」
    「慣れかなぁ。1年の時から見てれば、こっちもだんだん距離感がわからなくなってくる」

    ニヤリと笑う真希。

    「よし。明日土曜だし、唯呼び出すぞ。野薔薇付き合え」
    「了解です!L1NE入れときますね!色々聞き出すっ」

    ノリノリの野薔薇は早速スマホを取り出す。

    「女子は怖いなぁ。あんまり唯をイジメるなよ。棘に怒られるぞ、お前ら」








    End***






















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