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    meepoJlo

    @meepoJlo

    呪術の狗🍙棘 夢小説をこそこそ書いています。

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    meepoJlo

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    帰り道大好きな人とお出かけ出来るなんて、本当に幸せだなって思う。


    学校も任務もない日曜日の夕方。
    規則的に揺れる電車に、狗巻先輩と並んで座る。都心から離れた位置にある高専に向かう電車は、次第に人が少なくなっていく。

    昼過ぎから何となく出掛けた唯たちは、買い物をしたり、お茶をしたり。よくある普通のデートを楽しんだ。
    唯は手元にある今日買ったばかりの服を入れた紙袋を、ぎゅっ握り締める。先輩が選んでくれたのは、桜色のワンピースだった。

    電車の窓からは遠くに沈む夕陽が見える。電車内全体が、オレンジ色に輝いていた。
    ちらりと狗巻先輩を盗み見れば、何やらスマホを覗いているようだった。時間でも確認したのか、すぐにポケットにしまう。

    「明太子?」

    首を傾げた狗巻先輩が唯を見る。
    黒のマスクに、紫がかった深い色の瞳。その顔と目が合うと、やっぱり恥ずかしくて唯の胸が高鳴った。顔が赤いのは夕陽のせいにして、唯は先輩から目を逸らす。

    「…なんでもない、です」

    逸らした目を追って、狗巻先輩は唯の顔を覗き込む。

    「ツナツナ」

    言って、いたずらっ子のように笑う。
    狗巻先輩は、唯の身体に自分の身体を寄せて、片手で唯の手に触れる。唯と先輩の真ん中にふたりの手を持って行き、ひっくり返して掌を上に向けた。

    「狗巻先輩…?」

    もう片方の手の人差し指で、唯の掌に文字を書いていく。わかり易いようにゆっくりと、くすぐるように、狗巻先輩の細長い白い指先が動く。


     か わ い い ね


    一文字ずつ読んで言葉が繋がると、唯の顔は真っ赤になった。そんな唯を見て笑う狗巻先輩。

    「狗巻先輩、…からかってますよね?」
    「おかか」

    握っていた掌を、もう一度狗巻先輩がくすぐった。唯はまだ赤い顔でその指先を見る。


     と

    そこで指が止まって唯を見た。

    「…と?」
    「しゃけ」

    親指を立てて満足げに笑う。そして再び指を動かす。


     げ

    「げ?」
    「しゃけ!」

    「………!」

    意味は察したけれど、恥ずかしくて声が出ない。狗巻先輩はわくわくした様子でこちらを見ている。

    「狗巻先輩…?」
    「おかかー!」

    マスクの中の頬を子どものように膨らます。
    納得いかないらしい。

    唯は真っ赤な顔を下に向けた。
    狗巻先輩は、出会った時から“狗巻先輩”だったから、今更恥ずかしくて声に出来なくて。口を開いては恥ずかしくて止める。
    そんな唯の掌に、自分の掌を重ねるように持ち替えて、狗巻先輩の指先が絡まった。細く長い指先だけど、男性のそれだとわかる骨張った先輩の手。

    「……先輩…?」
    「おかか」

    「………とげ…先輩…」

    唯は小さく小さく呟いた。

    「おか、…?しゃけ…?」
    「………?」

    顔を上げると、先輩は少し戸惑ったような顔を見せる。何かが想定外だったらしい。今度は唯が首を傾げた。


    「……とげ…?」


    呟くと、狗巻先輩の顔が明るくなる。

    「しゃけ」

    目を細めて優しく笑う。
    よく出来ましたと言わんばかりに、頭をぽんぽんと撫でてくれた。
    絡まった唯の指をぎゅっと握る。そのまま狗巻先輩は唯の肩にもたれ掛かった。肩にかかる髪がくすぐったい。ふわふわした髪からは石鹸の匂いがした。唯も、広い肩に身体を預ける。

    「……棘…先輩」

    口の中で先輩の名前を小さく呟くと、やっぱり恥ずかしくて唯は少しはにかんだ。また心臓がドキドキと早くなる。隣からツナマヨ、と小さく返ってきた。
    呼び捨てはなんだかまだ気恥ずかしくて、ハードルが高い…。

    唯は目を閉じる。
    最寄りの駅までは、あと少し。







    End***










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    _aonof

    PROGRESS猿と見下した相手に恋という意味で心をおられる夏の話。完成。
    「価値があるから殺さないだけ」
    「あのこ、呪われてるんです」
    「呪われてる?」
    新しい相談者の言葉に、真摯に耳を傾けるふりをする。他の信者の伝手を辿りやってきたこの相談者には、金銭と言う意味で価値が見えた。
    新たな利用価値の高い信者を増やすために、面倒でもリアクションは重要だ。相手にとって気持ちいい反応をしてやれば、話はトントンと進む。猿の話はどれもこれも誰かのためと知って結局自分の本心や見栄や保身のためであり、正直反吐が出るが、糧になる相手なら差し引き少しマイナス程度。それくらいの労力は、いずれの呪術師の世界のためなら割いても苦じゃない。
    今回相談に来た白瀬一族は日本でも有数の富豪の一族であり、上手くいけばそれなりの資金を引き出せるだろう。会社経営すら娯楽といっても構わないほどの富を築き、その才能ゆえに富を増やすことこそあれ、衰える気配は今のところ見えない。
    「嘘をつくんです。ありもしないことを、本当のように滔々と」
    相談にやってきたのは、他の信者の紹介を受けた白瀬当主の夫人だ。一人娘が居るとは聞いていた。写真を見せられたが、表情のない写り具合は人形のようだ。何を言い出すか怖くて表に出せないという夫人が言う。ありも 8333

    nnmnchudock

    MAIKING記憶喪失になった七と、じゃあ(傷つきたくないし)にげちゃおーした恋人の話 前半
    (後半は七視点で夢主を追い詰める話)
    #じゅじゅプラス
    「私からはなんと申し上げて良いか……」

    申し訳なさそうに背を丸める伊地知潔高の肩をぽんと叩いて笑みを作った。わらえ、わらえ。そう強く自分に言い聞かせれば、意外と表情筋はきちんと仕事をしてくれた。
    「何も言う必要は無いよ。きれいさっぱり忘れたんなら、そのままで。その方が建人のためでしょ」

    ✕月✕日 東京都内✕✕学校内に発生した一級相当の呪霊祓除時発生した事故により、東京校所属七海建人一級呪術師の記憶障害が起きたと見られる。

    呪霊の術式効果により✕月✕日から一年前までの記憶の喪失が確認され、現在──




    恋人の記憶が無くなった。そう知らせを受けあわてて自分の家に帰り、七海建人の私物をかき集めた。キャリーケースに詰め込んで、手伝いを申し出てくれた伊地知潔高の運転で恋人のマンションへと向かった。

    「いいのですか、きちんと七海さんに話せば分かってくださると思うのですが」
    「やー伊地知さんは分かってないよ。一年前って建人が高専に戻ってきたあたりでしょ。
    もーモテにモテまくって凄かったの忘れた?」

    一年前と言えばまだ普通の同僚だった時だ。
    跡継ぎの男子に恵まれなかった家からぜひ婿に、 1602