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    少年🦊が、地下牢に囚われた👹を見つけてしまう話

    途中で終わってます!!!!!!!

    籠の中の鬼 からり、ころり。下駄の音が冷たい空気に反射して返ってくる。明かりの何もない地下廊下は、夏だというのに凍ってしまいそうなほどに涼しかった。ちいちゃな提灯をぶら下げて辺りをキョロキョロと見回しながらも、確実に歩みを進めていく。茶鼠色の髪を誇った少年─ミスタが、今こうしてほの暗い地下廊下を歩いているのには、とある理由があった。
     村の名家の息子であるミスタは、立派な屋敷に住んでいる。それも、離れやら母家やらがあるような屋敷に、だ。

     その日はすることもなく大層暇であった為に、母親に何かすることはないかと問うたところ、蔵の掃除を頼まれた。蔵、と言えば過去の頭首の日記、武器、生活用品などがたんまりと収納してある。好奇心の絶えないミスタにとって蔵の中は楽園であり、そんなところの掃除を頼まれたとなれば喜んで引き受けたのだった。箒、塵取りやは雑巾など、必要そうなものを適当に見繕い、早足で倉庫に向かう。じりじりと夏の日差しが照りつける庭をぱたぱたと走るのはまァ少し辛いところもあったが、蔵のことを考えるとワクワクして仕方がなかった。

     ぎぃ、と長年使われたことで嫌な音を立てて軋む扉をあけて、真っ暗に近い蔵の中に足を踏み入れた。定期的に掃除をしている為に埃が舞うことはないが、特徴的の木の匂いが鼻孔を擽る。ミスタの好奇心を一等刺激するそれに、思わず下駄を鳴らして前回見切れなかった奥の方に駆けた。子供のミスタからしては随分と広い蔵の奥にたどり着くのは、少しだけ時間がかかる。奥だけをまっすぐに見据えて走っていると、ナニかに躓いてどたん、と大きな音を立てて転んでしまった。甚兵衛が捲れ、膝小僧を擦り剥いてしまい、じんじんと伝わってくる痛みにじわりとまぁるい瞳に涙が浮かぶ。べしゃりと崩れ落ちた姿勢のまま、ナニにぶつかったのかを確かめようと顔を後ろに向けると、地面に生えているような取っ手が目に入った。

    「……なに、これ」

     今まで気にしたこともなかった取手に、釘付けになってしまう。滲んでいた涙も、驚きで引っ込んでいた。おそるおそる手を伸ばし、取手の冷たさにぴくりと肩が震え、一つ深呼吸をしてから持ち得る力で思い切り取手を引っ張る。遥か昔に開けられた以降、今に至るまで一度も開けられなかったのか、錆びついた蓋はあまりにも開けにくく、手が真っ赤に染まる頃にようやっと重い音を立てて蓋が開いた。それは蓋、というよりも扉と称した方が正しいのだろう。開いた扉の下には、長い階段が続いていたのだ。それなりの空間があるのか、奥の方からひゅうひゅうと風が通り抜けるような空洞音が聞こえ、少しだけ恐ろしくてミスタは扉から手を離してしまう。ぎぎ、と耳の痛くなるような音を響かせてゆぅっくりと扉が落ちていくものだから、ミスタは慌てて支え、開けることの出来るギリギリまで開ききる。思った以上の重労働で、肩を息をしながら、もう一度階段の方を覗き込んだ。中は光がなく、大分暗いようで何が続いてるかさえ分からない。途中で階段が途切れているのか、すぐそこに通路があるのかも見ることが出来ないのだ。恐怖の中に、ひょこりと好奇心が顔を出す。この奥には何があるのか、もしかしたらこの蔵に眠る道具たちよりももっと昔のお宝とかが置かれているのかもしれない。そう考えを巡らせてしまったが最後、気になってしまって仕方がなくてミスタはごくりと期待するように唾を飲み込んだ。

    「少し、だけなら怒られない……はず」

     掃除をする気になんてなれず、ミスタはきょろきょろと辺りを見渡してマッチと提灯を持ってくる。慣れた手付きでマッチの火を擦り、提灯に光を灯す。ミスタの祖父が、骨董品のコレクターであるために、その使い方などもミスタに甘い祖父から伝授されているのだ。こうして蔵の中でぼんやりと光る提灯を手に、ミスタは恐る恐る階段に足を踏み込んだのだった。

     誰もいない、真っ暗な廊下をぼんやりと提灯が照らす。階段を降りて歩き出してから約数分。真っ直ぐに続く通路の途中に何か部屋や仕掛けがあるわけでもなく、ただただ石の通路が続くだけであった。木製の屋敷とは全くもって異なる通路の作りに、最奥に何があるかが一層気になってしまって進む足が早くなる。体感では十数分だが、本当はもう少し短いのかもしれない。ついぞ、最奥をミスタの瞳が捉えた、ようやっと見つけたのは、決してお宝のような煌びやかなものではなかった。冷え切った廊下にいかにも相応の鉄の格子。深い知識の無いミスタでも、その格子を使う理由は、わかってしまった。

    「……牢屋?」

     困惑の色に染まりきった声が響いたかと思うと、奥の方からズル、と何かを引き摺るような音が聞こえた。今この場にはミスタしかいないというのに、ミスタが出してはいない音が聞こえるのはおかしい。それも、人為的であろう音が。大袈裟なほどにミスタの肩が跳ねて、後退りする。ナニかがいるのは確実なことで、あまりの恐ろしさに脚が震える。今や恐ろしさの方が十分に勝り、ゆっくり、ゆっくりと後ろに下がって元の道を戻ろうとしたところに、ゴロゴロと地の鳴るような低い音が掛かった。

    「だれか、おるのか」
    「えっ、」

     問い掛けに思わず声を放ってしまってから、慌てて己の口を両手で塞ぐ。か細く紡がれた声が届いたのだろう、奥─と言っても牢屋しかないのだが─からもう一度ちゃんとした声が掛かった。

    「今更何の用だ。まさか、私を解放する気になったとは言うまいな」
    「……だれ?」

     捕まっている人がいる。そう思った瞬間に、誰なのか問う。捕まっている人がどうしようもない悪人かもしれない、という考えは芽生えてこず、聞こえた声があまりに寂しそうにミスタには響いたために、声を放ってしまった。寂しそうな声の正体が知りたくて、ミスタはおずおずと足を踏み出す。提灯を上げて、ぼんやりと牢屋の中を照らすと、人のような形をしたモノが目に入った。ソレも、ミスタを視認したようで提灯の光が眩しそうに目を細めている。

    「童、お前はこの家の子か」
    「……ウン」
    「名は?」
    「知らない人に、名前言っちゃダメって」
    「はは、躾はされているようだな」
    「しつけ?」
    「いいや、俺の名はヴォックス。ヴォックス・アクマだ。ほら、知らぬ者ではなくなったろう?」

     屁理屈を捏ねるヴォックスだが、それに納得してしまったミスタは、提灯を下げて地面に座っているヴォックスと視線を合わせるためにしゃがみ込んだ。

    「オレは……ミスタ・リアス」
    「良い名だ。それにしとも……リアス、か。まだ絶えていないようだな」

     ヴォックスの紡ぐ言葉の意味が分かりづらく、首を傾げているとヴォックスはかんらかんらと笑って無造作に伸びた髪を手でとく。

    「ねぇ、ヴォックスはなんでこんなとこにいるの」
    「俺?俺か……そうさな、悪いことをしたのやもしれんなァ」
    「エ」

     ミスタは目を見開いて、勢いよく牢屋の前から離れた。その早い行動に声を上げて笑い、ヴォックスは琥珀を誇る瞳をミスタに向けた。

    「冗談だ」
    「ホント?」
    「嗚呼。俺はこの村の人間に怖がられているようでな。自ら入ったのだよ」
    「そう……なんだ……?」

     通常ならば自分から牢屋に入るなんて信じたりなどしないが、地下に入ってから気分が高揚しているミスタにとって、何もかもが現実味がなく、ヴォックスの話すらも本当のことかもしれないと捉えてしまったのだ。

    「それじゃあ、ヴォックスはここから出られないの?」
    「……そうさなァ、そういうことになるな」

     悪いことなんて一個もしてないのに? と告げるミスタに、ヴォックスは面食らったように目を見開いてからケラケラと笑う。

    「確かにおかしいのやもしれんな。俺は何もしておらん」
    「じゃあ出てもいいんじゃないの? どうしてヴォックスだけが苦しんでるの?」

     子供特有の無邪気な質問に、長いこと人と話すことのなかったヴォックスも納得するような素振りを見せる。ミスタに告げたことは少しだけ嘘が混じっているのだ。村人がヴォックスのことを恐れているのは事実であるが、この牢屋には自ら入ったわけではない。酒盛りをしていた隙をつかれ、牢屋に入れられたのだ。どこぞの八岐大蛇のような扱いだな、とその時は面白がっていたものだが、よく考えれば相当酷な行為ではないのだろうか。数十年経ってから数えてはいないが、食事も運ばれなくなった上、娯楽もないものだから暇で暇でしょうがないのだ。

    「ミスタといったか」
    「ン」
    「西暦で言うと、今は何年だ?」

     うぅん、と唸りながら答えたミスタの言葉を聞いて、ヴォックスは驚愕を受ける。アレから、牢屋に囚われてから既に百数年経っていたのだ。ヴォックスの存在は秘匿されていたのだろうから、当然食事が運び込まれることも無くなったのだろう。俺がヒトであればとっくの昔に死んでいたぞ、とその言葉は口に出さずにケラケラと笑った。
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    MOURNING少年🦊が、地下牢に囚われた👹を見つけてしまう話

    途中で終わってます!!!!!!!
    籠の中の鬼 からり、ころり。下駄の音が冷たい空気に反射して返ってくる。明かりの何もない地下廊下は、夏だというのに凍ってしまいそうなほどに涼しかった。ちいちゃな提灯をぶら下げて辺りをキョロキョロと見回しながらも、確実に歩みを進めていく。茶鼠色の髪を誇った少年─ミスタが、今こうしてほの暗い地下廊下を歩いているのには、とある理由があった。
     村の名家の息子であるミスタは、立派な屋敷に住んでいる。それも、離れやら母家やらがあるような屋敷に、だ。

     その日はすることもなく大層暇であった為に、母親に何かすることはないかと問うたところ、蔵の掃除を頼まれた。蔵、と言えば過去の頭首の日記、武器、生活用品などがたんまりと収納してある。好奇心の絶えないミスタにとって蔵の中は楽園であり、そんなところの掃除を頼まれたとなれば喜んで引き受けたのだった。箒、塵取りやは雑巾など、必要そうなものを適当に見繕い、早足で倉庫に向かう。じりじりと夏の日差しが照りつける庭をぱたぱたと走るのはまァ少し辛いところもあったが、蔵のことを考えるとワクワクして仕方がなかった。
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