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    カリフラワー

    @4ntm_hns

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    作品はすべて全年齢向けです。

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    カリフラワー

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    マ右ワンライ/ルスマヴェ/お題「覚えていない」と少し「涙」?
    自分たちのウエディングパーティーの後、ホテルのベッドで交わす会話。セクシーな意味ではない。

    思い出したこと ねえ、俺が生まれたばかりの頃のことって覚えてる?
     もちろん、覚えてるよ。信じられないくらい小さくて、奇跡みたいに可愛くて。ちゃんと抱き方を教わってね、僕は地球上で三番目に君を抱いたんだ。その姿を見たキャロルは泣いてたよ、"これが幸せっていう気持ちなのかな"って。つい僕ももらい泣きしたよ。嬉しくて泣くのは初めてだったかもしれない。
     ふうん。
     この子は自分じゃ頭も支えられないのに、小さな手は僕の指をきゅっと握るんだ。君が今僕の頬を撫でているのと同じ手でね。ほら、見せて……。
     同じ手とは思えないくらい大きいけどね。
     うん、だけどたしかにこの手だよ。どうやってこんなに大きくなれるのかなあ。
     それは俺も知りたい。
     あと、小さい頃の君は僕を見てよく笑ってた。僕は何もしてない、ただブラッドリーと呼んだだけなのに。だから僕は君のことを"よく笑う明るい子"だと思ってた。まさかグースに対してさえシャイだとは思わなかったんだ。だって仕事が終われば、グースは僕より長い時間ブラッドリーといたはずなのに。すごく羨ましかったのに、結局君は僕の方に懐いていたんだ。まあ、君は覚えてないかもしれないけど。
     もちろん覚えてないよ。
     そうだろうね。……君にもこの尊さを教えてあげられたらなあ。

     ブラッドリー、君が初めて一人で自転車に乗れた日のことを覚えてるか?
     覚えてる……かも?
     覚えてるはずだよ。僕はあの日の君の服装まで覚えてる。ボーダーのTシャツに黄色のパーカーを着て、ジーンズを履いてた。黒いヘルメットを渡したら、"マーヴはいつも被ってないのに、どうして僕は被らないといけないの?"って言うんだよ。当然、僕からは何も言い返せなかった。だから代わりにキャロルが言ったんだ、"そうね、でもあなたはマーヴみたいになっちゃダメなの。マーヴは本当はかっこよくないのよ"って。
     それは覚えてない、でもブラッド少年の気持ちも母さんの気持ちもよーくわかる。今だからこそ。
     まあ、今はいいじゃないか。
     よくないよ、マーヴにもヘルメットは必要。坊やよりもよっぽど頑丈なね。
     一応、バイクでは無事故だよ。
     そんなのたまたまだよ。
     とにかく、思い出してみて。あの日こと。
     ええ? まあいいけど……。たしかあの時の俺めちゃくちゃマーヴに怒ったよね? "大丈夫、マーヴがちゃんと支えてるよ"って言ったのに、振り返ったらマーヴが両手を離してて! 裏切ったな!って言う暇もなくそのままバーンと倒れて!
     自転車あるあるだな。
     ほんと、大人ってひどいよね。前を見て漕ぎ続けろって言うだけで、具体的なことは教えてくれないし、簡単に裏切るし。自分はもう乗れるからって余裕な態度なの。そりゃあ少年も怒るって。
     僕が洋上任務に出るまでに乗れるようになってほしかったんだよ。実際、それから乗れるようになっただろう?
     結果的にはね。でもマーヴのしたこと、忘れてないから。
     許してほしいなあ……。
     そんな可愛い顔で見てもダメ。
     だけど、僕のおかげとは思ってくれる?
     はいはい、マーヴのおかげだよ。できなかったことができるようになったのは、全部マーヴのおかげ。

     じゃあさ、初めてのデートは?
     ……どれが初めてのデート?
     マーヴ、本気で言ってる?
     君からのアプローチがしつこくて、どれをデートにカウントしていいかわからないよ。
     マーヴを尾けてバーで無理やり隣に座ったのはデートじゃないよ。任務後の謹慎が解けて、それぞれの基地に帰るほんの少し前の話。
     ああ、あれか……。思い出した。帰る前に一度でいいからちゃんとしたデートをさせてくれって、頼まれたんだよな。
     そう、俺が必死だった日ね。でも、マーヴが俺を好きになったのはその日でしょ?
     どうかなあ、それはわからない。明確な境界があるわけじゃないんだ。その前の日だって君のことは好きだったから。だからデートに行ったんだよ。
     んで、どんな男か見極めてやろうって?
     はは、僕はそんな偉そうな奴じゃないだろ?
     そうだけど、俺は見極められても構わなかったよ。俺には後がないって思ってたから。ここで必ずマーヴの心を掴まなきゃ、東海岸に帰ったらもう絶対に俺を"ブラッドリー坊や"以上の存在としては見てくれないだろうからってさ。
     覚えてるよ、君の緊張した顔。頬だけが赤くなるんだ。あと、落ち着くために無理に声量を抑えるから、掠れた声が出るんだよ。うん……よく覚えてる。あれは僕に緊張していたんじゃなくて、自分を追い詰めていたから緊張していたのか。
     わかんない、たぶんどっちもだよ。マーヴがいつもより百倍かっこよかったんだもん。だからこんなに綺麗な人が、しかも色んな意味でいまだ現役の人が、誰にも声をかけられずに過ごせるはずがないと思って焦るのは当然のことでしょ?
     それは僕に聞かれても答えられないな。
     いいよ、答えなくて。今はこうして同じベッドにいて、しかも今までのマーヴなら絶対にしなかったことをしてるんだから。
     ベッドの上でハンバーガーを食べること?
     "結婚式の後、二人きりで、ドレスホワイトを着たまま"ね。
     うん、これはたしかに人生で予期していなかった時間だ。

     それなら、プロポーズの日は覚えてるだろう? 君の大切な日。
     うん。マーヴにとっても大切な日ね。
     大好きなんだ、あの景色が。いつもと同じ格好で、でもやっぱりその時の君も緊張してた。明らかにこれから特別なことが起きるんだって感じたよ。
     隠すの下手だなあ、俺……。
     そこが君のいいところだよ。いつもの緊張した時の掠れ声だったけど、一言目に僕の名前を呼んだ瞬間、君がぽろぽろ涙を流して。まだ本題にも入っていないのに。
     ……覚えてないなあ。
     本当のことを言えばね、君が話し始める前、黙って僕と目を合わせた時には君はすでに涙目だったんだ。
     ……そんなに格好悪かったっけ。
     格好悪くなんてないよ。一生懸命で真剣な姿が格好悪いわけないだろう? きっと君は色々なことを考えて、頭がいっぱいだったんだと思うよ。成功させなきゃ、とか、そんなことで。
     それもそうだけど、それだけじゃないよ。
     覚えてないんじゃなかったのか?
     マーヴとの思い出とか、マーヴを忘れようとしていた時の苦しさとか、それでもまたマーヴに愛してもらえる嬉しさとか。そんなことを考えてたら、プロポーズの台詞が飛んだ代わりに涙が溢れたの。"どうして君が泣くんだ"って言うマーヴの声が優しくてさ……ああダメだ、また泣きそう。
     今? 相当飲んだから酔ってるんだな。
     もう酔いは醒めてるよ。パーティーの主役が酔い潰れるわけにはいかないでしょ。本当に思い出して泣きそうなの。よく今日まで来られたなって。もうダメだと思ったこともあったけど、結局はマーヴが運命の人だった。マーヴが俺の人生そのものだったんだ。マーヴがいなきゃ俺の人生には意味がないんだ。
     ……ブラッドリー、君は僕以外のことにも人生の楽しさを見出した方がいいぞ。
     マーヴ、泣いてるの?
     泣いてないよ、あくびをしたんだ。
     本当かなあ。
     
     マーヴ、夜はまだこれからだよ。新婚夫夫として過ごす初めての夜なんだから、まだもう少し話そうよ。
     うん……でも年寄りに夜更かしはキツい。
     何時間か前まで楽しそうに歌って踊ってたのに?
     年寄りが無理をしてたんだよ。
     たしかに、まさかマーヴが俺と一緒にあの曲歌ってくれるなんて、あんまりマーヴらしくないかもね。俺はウエディングパーティーであの曲歌いたいってずっと言ってたけどさ。……あ、もしかしてそのことを覚えてたんだ?
     ……覚えてないなあ。
     それはどっち? 羽目を外した自分のこと? 俺があの曲を歌いたがってたこと?
     しいて言うなら、羽目を外した自分の姿を忘れたことにしておきたいかな。ファーストダンスのことさえ覚えていられたら僕は十分だよ。あとのことはもうすでに恥ずかしい思い出だよ。
     大丈夫、俺が全部覚えてるから。何年経っても同じ思い出話ができるようにね。それに今時はカメラとかスマートフォンとか、そんな機械で何でも記録できちゃうんだよ。
     ……年寄り扱いするならもう寝るぞ。
     待ってよ。まだフレンチフライが残ってるのに。
     あとは全部君にやる。にやけて能天気な君にね。
     幸せなだけだよ。幸せな時って、にやけるものでしょ。

     ねえ、マーヴ。
     うん?
     今夜のこの瞬間、ずっと忘れないでね。
     ああ、ずっと覚えてるよ。

     なあ、ブラッドリー。
     なあに。
     愛してるよ。
     ん、俺も、愛してる。
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    Replies from the creator

    カリフラワー

    DONEマ右ワンライ/ルスマヴェ/お題「歌声」
    わかりづらいですが、段落ごとに時間が進んでます。本当にわかりづらいです。反省してます。
    Sing for me 幸せだと感じる時、聞こえてくるのはいつも彼の歌声だった。
     ブラッドリーは歌が上手い。ピアノも弾ける。彼の父親もそうだった。二人揃って音楽の才能があった。だけどそれをブラッドリーに伝えると、彼はこう答えた。「俺が親父と違うのは、俺はマーヴを惹きつけるために歌ってるってこと。俺の歌声はマーヴのためにあるの」だから同じにしないで、と彼は笑った。

     繋ぎっぱなしのビデオ通話で、かつて僕たちは会話もせず黙って時間を過ごした。ブラッドリーは料理をして、僕は洗濯物を片付けて。お互い画面なんてあまり見ていなかったと思う。自分が映っているかどうかも気にしていなかった。ただ画面上で繋がってさえいれば、二人の時差も距離も忘れてしまった。時々思い出したように画面を見ると、ブラッドリーはナイフや缶切りを持ったまま、同じタイミングで僕の様子を確認しに来る。そして安心したように微笑み、また画面の前から消える。それを何度か繰り返していると、そのうち彼の歌声が聞こえてくる。
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