傘は持たない 鯉登音之進は、進学校に通う男子高校生である。
そして学校の教師、月島に恋をしている。
月島の授業の前は必ず手鏡を見て身だしなみを整えて待つし、授業は真剣に聞いて、質問を見つけては授業後に聞きに行く。月島宛のクラスの提出物は積極的に引き受けるし、用事を作っては準備室を訪れる。校内で見かければちょっと遠くても「月島せんせーっ!」と声をかけて駆け寄り、宿題のノートには少しふざけて「月島先生♡お仕事頑張って♡」と書いて提出する。とにかく地道にチャンスを作ってはアピールしている。
それでも、月島はなびかない。大人で、教師だから適切な距離を保とうとするのは当たり前だ。でも、もしちょっとでも好意があるなら、何かサインを出してくれても良いのに。それとも本当は全然嬉しくなくて、ガキの戯言としか思っていないのだろうか。とはいえ現時点でははっきりと迷惑です、と言われたことはないから、嫌ではないんじゃないかと思っている。
1718