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    ぎゅうにゅう

    @milky_gyunyu

    月鯉🌙🎏何もかも初心者

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    ぎゅうにゅう

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    月鯉。現パロ。先生と生徒。
    ただ密着したかった鯉登くんと、エロい目で見てしまう月島先生。

    傘は持たない 鯉登音之進は、進学校に通う男子高校生である。
     そして学校の教師、月島に恋をしている。

     月島の授業の前は必ず手鏡を見て身だしなみを整えて待つし、授業は真剣に聞いて、質問を見つけては授業後に聞きに行く。月島宛のクラスの提出物は積極的に引き受けるし、用事を作っては準備室を訪れる。校内で見かければちょっと遠くても「月島せんせーっ!」と声をかけて駆け寄り、宿題のノートには少しふざけて「月島先生♡お仕事頑張って♡」と書いて提出する。とにかく地道にチャンスを作ってはアピールしている。

     それでも、月島はなびかない。大人で、教師だから適切な距離を保とうとするのは当たり前だ。でも、もしちょっとでも好意があるなら、何かサインを出してくれても良いのに。それとも本当は全然嬉しくなくて、ガキの戯言としか思っていないのだろうか。とはいえ現時点でははっきりと迷惑です、と言われたことはないから、嫌ではないんじゃないかと思っている。
     
     もう自分の気持ちを自覚してどれくらい経つだろう。仕方ないとはいえ、こんなに進展しないなんてもうやっていられない。
     こうなったら、物理的に距離を詰めて少々強引に意識させるしかない。月島密着作戦だ!

    ◇◇◇◇

     季節は夏。梅雨が開け、もうすぐ夏休み。連日酷暑猛暑の令和だが、今日は湿度が高く、暑さはそこそこだ。
     数日前にテストも終わっており、開放的な気候も相まって消化試合のような緩んだ空気感で授業時間は過ぎた。生徒たちは各々の部活動へ散っていった。

     鯉登は部活中も空模様を気にしていた。今日が作戦決行日になる可能性は十分高そうだ。天気予報で夕立の可能性が高いと出ているのだ。今日は傘を持ってきていない。もちろんわざとだ。
     雨が降るのか、夕立が来るならいつ頃か。結局雨は降らずに部活動は終わり、帰り支度を終えて外へ出る。もうすっかり夕方だ。月島も大体これくらいの時間に退勤することが多いのは知っている。駅に向かう方の校門を出て、空模様と校門を交互に観察する。空の方は文字通り雲行きが怪しくなってきた。これは夕立が来そうだ。
     あとは月島を待つだけだ。さすがの月島も、傘も持たずに夕立に降られた生徒がいたら傘に入れてくれるだろう。そしたら、密着作戦大成功!これは妙案じゃないか?

     校門から月島が出てきた。小さい岩みたいな男が駅方面に向かって歩き出す。空気中に湿気を帯びた匂いがしてきた。駅までここから1キロちょっと。いつもは遠くて嫌になるこの距離も、今日ばっかりはありがたい。見失わないように後ろから、あくまで駅に向かって下校する生徒のひとりとして歩いていく。

     ぽつ、ぽつと雨が降り出した。夕立は降り出したらあっという間だ。マンションの自転車置き場の屋根に雨が当たる音が響く。ものの数分で傘が要る本降りになった。ザーザー音がうるさいほど。さあ、作戦決行だ!
     鯉登はターゲットに向かって駆け出した。初速が命のスプリンターだ。

    「月島せんせーっ!」
     走ってきた勢いそのままに傘に飛び込み、月島の逞しい二の腕にしがみつく。

    「鯉登!?」
    「傘、入れてくれ!持って来てなくて」
     飛び込んだ勢いのまま、月島の二の腕を自分の胸に密着させる。
     密着作戦、大成功!

    「傘持ってきてないのか?予報で言ってたろ」
    「そうなのか?朝テレビ見てなかったから、知らない」
     月島の肩口に頬をつけ、唇を尖らせて至近距離で月島を見つめる。月島、ドキドキしろ……!

    「でもお陰で月島先生の傘に入れてもらえて、ちょっと嬉しいかも。先生は嫌かもしれないけど」
     月島をまっすぐ見つめたまま、反応を探る。

    「嫌も何も、土砂降りで濡れ鼠の生徒を振り払うわけにはなぁ……。でも、もうちょっと離れてくれると良いんだが」

     やっぱり本当はちょっと嫌なのか?がっかりしたが、せっかく密着したのが名残惜しくてほんの少しだけ身を引く。
     
    「あのな、これは単純に今後気を付けたほうが良いと思うから言うぞ」
    「何を?」
    「鯉登、お前雨に濡れて服がスケスケだ!」
     
     キエエエエエエ!
     作戦の副作用に鯉登は猿叫を上げた。
     
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