距離の縮め方「おーい、来てやったぞー!」
「パイモン、もう少し静かに。」
風立ちの地と呼ばれる場所にある大木の前で空とパイモンはディルックと待ち合わせをしていた。
いつもならどちらかと言えばもっと薄暗く、モンド城内の薄暗い場所が多かったりするのだが今回は風通しも良く、青空のよく見える場所に呼ばれたものだと空は思った。
「やっと来たか。」
「相談ってなんなんだー?」
パイモンを連れてきたのは間違いだっただろうか、そう思いながら頭を抱える。
が、ディルックが何時にもなく悩んだ様子だったので木陰に座って話そうと提案する。
「パイモン、これあげるから少し離れてて」
「これは鹿狩りの新作のお菓子!流石相棒分かってるなー!」
そう言って大木の上の方へ飛んで言ったと思うと、枝の上に座ってもぐもぐと食べ始めた。
しばらくは静かになるだろう。
「で、話って?」
「以前、お前達兄妹の話をしてくれただろう」
離れ離れになる前はずっと一緒に旅していた事を空は、エンジェルズシェアで話していた。いつも一緒で、何をするにもずっと一緒だったこと、可愛い妹であること。
その妹と離れ離れになることなんて考えておらず、寂しいと話したこと。
「いつ会えなくなるか分からない、それは僕にも言えることだと思う。」
それは独り言のような、自分の感情を整理するように、空に語りかける。
空も、彼がここまで話してくれると思っていなかったため、静かに話を聞いていた。
「確かに、それは少しの歪みだったかもしれない。僕達は、君達の様な仲の良い義兄弟ではなくなってしまった。」
「うん。」
「しかし失うと考えた時、怖くなったんだ。」
静かに一つ一つ言葉を紡ぐ。空も静かに頷く。
彼ら双子も今はすれ違ってしまっているから。だからこそ、ディルックの気持ちを軽くしたいと思った。
「ディルックはどうしたい?」
「…歩み寄れたら、と考えている。」
「俺に話してくれて、ありがとう。」
空は笑顔でそう返す。出来ることは何でもするよ、付け加えて。
「だが、相手は奴だ。」
「そうだね、飄々としてて掴みどころがないよね」
「そうだ。」
何を考えているかさっぱり分からない、2人はそう同時に評した。
腹の中が見えなすぎる、すぐ騙してくる、すぐ巻き込んでくる。そう2人は話しているとディルックが少し楽しそうで、空はつい笑ってしまう。
「前よりも笑うようになったね、ディルック」
「そうか?」
きょとんとした様子でディルックは空を見る。
ディルックが変われたら、ガイアも変わるよ。そう空は笑顔で言った。
それはどこか、道を違えてしまった蛍への思いもあったかもしれない。
「そら〜!!お菓子無くなったぞ!」
「パイモン!タイミングを考えて!?」
ぎゃいぎゃいと騒がしくしている2人に、ディルックはふと笑みを零していることには自分で気付いた。
少しでも歩み寄れるだろうか。昔のようにとは言えなくても、少しでも。
また共にこの大木の下で語り合える日が来ると信じて。