二人だけの夜 藍忘機は剣を両手で抱きしめたままガタガタと震え続ける魏無羨を己の膝の上に寝かせ、色を失って乾き切っている唇に布に含ませた水を垂らしてやることしか出来なかった。額に霊力を注ぎ入れやっても、まるで底のない瓶のように入れた端から失われていく。
二人、暮渓山に閉じ込められてすぐ、藍忘機が怪我の熱に疲れ切って眠っている間に魏無羨が水を精製するために敷いた陣は、少しずつ光を失い、今にも効力が失われそうだ。
皆を逃すために二人残った夜から、藍忘機の足の怪我の回復を待ちながら屠戮玄武の倒し方を検討するのに二日、残された弓や剣を拾い集め準備を整えるのに一日、決死の戦いで魏無羨が傷ついてから既に三日、水があるからようやく命を保っているようなものだ。
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