【ヴェラン】熱帯夜「ランちゃーん!」
バーンという大きな音がして扉が開いたかと思えば、そこには枕を持ったヴェインが立っていた。
正確には左の脇に枕を抱え、右手にピッチャーとグラスを載せたトレーを持っている。
ここは俺の部屋で、時刻は夜中。俺はベッドの中で本を読んでいた。当然、ヴェインもパジャマ姿だ。
真夏の夜は暑苦しく、短パンにシャツで寝ていたけれど、ヴェインは長ズボンのパジャマを着ている。子供の頃、薄着で寝ていると腹の調子を崩していたからだろう。
彼は扉の立てた音の大きさに自分で驚くと、人差し指を唇に当て、「しー、しー! 静かに!」なんてドアに向かって言うものだから、吹き出してしまった。
大丈夫だ、ここは一軒家で、隣家はずっと離れている。多少うるさくした所で、誰に咎められるわけでもない。
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