雪化粧「よっ。鶴丸国永だ。俺みたいのが突然来て驚いた……」
「ワァー!めっちゃレアじゃん、よろしくよろしくー!いやぁ、鍛刀運使い果たしたかなー。もしかして審神者として優秀だったりする?」
最初の印象としてはえらく騒がしいヤツ、という感想だった。一言話す間に表情が二転三転している。呆気に取られていると
「オレは青人、アオって呼んでな!この本丸の審神者やってる、一応!これからよろしくツルマルー!」
そう騒がしく言って手を差し出してきた。
「こちらこそ、よろしく。きみは何やら面白そうな人間だな?」
差し出された手を握り返した瞬間。アオと名乗った青年はもう片方の手に持っていたらしい包丁で自らの首にぶっ刺した。吹き出る血、それが真正面にいる俺にぶっかかる。まるで水浴びかという程に。鈍い鉄の匂いと、生温い感触が全身を伝う。
「は?」
思わず出た言葉はそれだけだった。いや、おかしいだろ。出会って数秒でこれから主人になる人間の血を体いっぱいに浴びながらようやく出た一言だったんだぜ。
「大将ー、新刃はきたかーって」
その時、一人の少年が部屋に入ろうとしてきた。この惨状を見て、全て納得したようで外へ向かって大声で呼びかけた
「歌仙ー!大将またやりやがった!部屋中真っ赤っかだぜ!勿論、白い着物も真っ赤に染まってるぞ!」
……遠くで何かが割れる音がした。そう言い終わった少年は改めて部屋に視線を向けると、俺と目が合った。
「おっと、いるじゃねぇか。俺っちは薬研藤四郎、あんたは?」
薬研と名乗った少年は己の主である青年に動揺することもなく挨拶してきた。
「あー、俺は鶴丸国永だが……その、コレいいのか?」
目線を倒れ込んでいる青年へ下ろしながら俺は尋ねた。
「あぁ、時々やってんだ。うちの大将の持ちネタのひとつなんだと。」
こんな物騒なネタがあってたまるか!内心ツッコミをいれながらも、驚きを与えられた悔しさが込み上げてきた。
「で、コレは偽物か?にしてはえらくちゃんとした血糊だな。本物の血と変わらん匂いだぞ。」
「いや、全部本物だぜ。そろそろ起きるだろうから、後のことは大将にきいてくれ」
俺は歌仙の手伝いに行ってくる、と薬研は部屋を後にした。
血の池の中に倒れた主と二人きりというなんとも最悪な始まりからこの本丸の初日を迎えることになったのだった。これが俺と審神者との出会い、まさに″手厚い″お迎えだったというワケだった。