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    あかさん

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    あかさん

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    地元の話したかったからぶぜまつ書いた。付き合って、、、るのかわかりません、、、

    多分付き合ってるぶぜまつです。「日焼け止めは持った?あと着替えと、土産用のメモと……」
    「持った持ったって!ほら」
    そう言いながら豊前はトランクを開くとこっちへ向けてきた。
    「入れたってさっきからいっとったけん、聞いてねぇのはまつだって……ま、気持ちは分かるけど。一泊二日だし、そんな沢山荷物入れるものもねーよ」
    そう言ってトランクを締め直しながらブツブツと豊前は不貞腐れた。
    「ごめん、僕も浮かれてたみたい」
    しょんぼりとすると、責めるわけじゃねぇよ。と慌てる
    「久々の二人の20年代遠征だから羽を伸ばしてきなって主も太っ腹だよなー!ほら旅行、行きたいって言ってたろ?」
    この時期の旅行は人が多い、特に僕たちが向かおうとしてる先は祭りが多い地域だから尚更だった。と言うより、この時期はどこも多いのだけれど……。
    「まぁ、俺のいた時期よりずーっと後だからよくわかんねーけどさ。その時代の俺も案外そこら辺にいたりすんのかな」
    「それは……」
    豊前江は現在においても行方不明者の刀だ。こうして本丸に顕現できているだけでも特異な事だと考えてもいいと思っている。
    「でもさ、そうだとしたらワクワクするよな。実はずっと名前の通り豊前にいたんだぜって!」
    そうはにかむ。その笑顔がなんだか眩しくて……
    「あ、鼻血」
    いつも通りに鼻血が出るというわけだ。


    「祭りが多い時期って話だったけど……まさか小倉祇園の時期とは思わなかったな」
    「人多いな……はぐれそうだ」
    それなりに身長はあるし、感覚でお互いの場所は分かるけれどあまりにも人が多い。確かこの小倉祇園太鼓はこの時代の流行病の関係で三年振りに開催されたんだったっけ?
    「ほら、こっち寄れよ。はぐれねーようにしないとな」
    そう言って肩を寄せる。
    「わっ!」
    突然のことに驚き、声が出てしまった。人が多いとは、それなりに声をだしてもすぐかき消される訳で……僕の声も誰に届くことも無く消えた訳だけど。
    「そんな驚くことねーよ?」
    声の原因以外には。突然こう事をするから本当に困る。
    「ねぇ、それみんなにやるのやめてあげなよ?ほら豊前すぐそういう事やるから驚くよ。」
    「誰でもってワケじゃないだろ。お前だからやってんだよ」
    そんな事を恥ずかしげも無くいうからこっちが負けた気になる。
    「それよりほら!太鼓が出てんじゃねぇか!クッソ〜俺も鳴らしてみてぇ!」
    太鼓の音を鳴らしながら動く行列をキラキラした目で見つめる豊前を見て微笑ましくなった。
    「まるで少年のようだね」
    「子供っぽいっちこと?」
    「うーん、そうかも?」
    「祭りは誰でも好きだろ?そりゃあ太鼓の一つや二つ持ってみたくなるんだって!」
    そこに子供っぽさは関係ないと言い張る。祭りの熱に浮かされていつもよりもその気持ちが高まっているのだろう。
    「じゃあ参加したらいいんじゃない?意外と飛び入り参加受付とかしてそうだし」
    「法被もなんもねーし、お前一人にするはずもないだろ?また来りゃいーんだよ!太鼓の音も落ち着いてきたし、ほら屋台行こうぜ」
    何から何まではやい。でも足の速さは僕に合わせてくれてるし、誰かに合ったはやさを知ってるんだろうなと思うとそのはやさも好きになる。

    「お、これなんてどうよ!」
    「射的かい?」
    豊前が立ち止まったのは射的の屋台だった。祭りの屋台、特に射的や輪投げなどはやはり子供たちが多いようでそこに混ざる豊前はなぜだかとっても似合っていた。
    「オヤジさん、これ一回!」
    そう言って一回分の射的の料金と弾を交換する。
    「それッ」
    狙いを済ませて的の角を狙う。ふらついたが重心がしっかりしているのか、定位置へ戻った。残りの数回もそのような感じで残弾が切れた。

    「上手いこと行かねーなぁ……」
    取ったと思ったのだろう、頭に手を当て悔しがっていた。射的の屋台を離れ、軽い食べ物を買った後近くの神社で休憩することにした。
    「豊前、夢のないことを言うとね……祭りの屋台の射的って基本的にズルしてるんだって。」
    景品の裏にシールがあったり、重しを入れてたり……という話をすると
    「んじゃ次こそはその部分も含めて俺がもっと上手い銃の扱いをすればいいって事だな!」
    より一層燃えたらしい。そんな所も含めて彼が好きなんだけれど、何事にも一所懸命で……。にしても、刀が銃の使い方を学ぶだなんて考えたこともなかったな。
    「陸奥守なんて先生役にいいんじゃない?彼もきっと喜ぶよ」
    「そうだなぁ。」

    「ほらまつ、ソースこぼれそ」
    手元を見るとたこ焼きのソースがこぼれかかっていた。危ない危ない、これは主から僕らに渡された大事な反物なのだ汚すわけにはいかない。直ぐにたこ焼きを置いてこぼれていないか確認する。
    「危なかった……助かったよ」
    「いいって、その着物似合っとるけん汚したらもったいねーよ」
    「そういう豊前だって」
    「おう、丁度いいだろ?これ主に頼んだんだよ小倉織の着物にしてくれって。小倉祇園に小倉織。俺の名前じゃねーけど、俺いっぱいって感じですげー楽しいよ」
    「……うん、僕も楽しいかな。久々に豊前とゆっくり過ごしてる気がする。」
    最近は近侍や出撃任務ばかりで江の皆ともあまり会えてなかったから、余計に染み渡ってるのかも、と笑うと
    「疲れてる時はさ、ハグが効くらしいぜ」
    そう言って手を広げる
    「俺、両手空いてっからさ。」
    全く豊前には敵わない。言われるがまま豊前に体を預ける。やはり人の体というのは不思議だ、こうも人肌に触れるだけで心の臓を温めてくれるなにかを感じる。
    「いつも桑名とか篭手切に貸してるもんね、膝。」
    「おう!だから腕はお前専用ってこと」
     僕は、幸せを噛み締めることを許されているのか分からないけど今この瞬間くらいは許してくれるだろうか。血にまみれ、血を浴びる事でしか贖罪を果たせない僕だけれど。
    「また、難しいこと考えてんだろ。いーよ、今はただ楽しむことが俺たちの役目ってやつだ。これもまたお前の役割ってことだから、さ。」
    「豊前……僕は……」
     言葉が詰まる、きっと誰にも言えないこの気持ちは僕自身だけのものだから、それを抱えていくことも僕に与えられた贖罪の一つなんだろう、と。
    「だから、堅苦しい話はナシ!話したくなったら話せばいいんだって!」
    「あ、だったら難しいこと考える暇もないくらい楽しい思い出、沢山作ろうぜ。もし今度また旅行いけたらさ、今度は熊本も行ってみたいっちゃ」
     熊本城も見てみてー!……なんて、気を使わせてしまったかな。
    「じゃあ、その時は僕が案内するよ。」
     そういうと、また豊前は夜空に上がる花火のように眩しい笑顔で笑った。こうして、僕らの小旅行は幕を閉じた。



     後日、江のみんなや主に小倉土産を配っていた時に、熊本?行きたいなら行っておいで―、夏だしね。という適当な主の一言を放った。
     それから僕らが熊本を訪ねるのはまた別のお話し。
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