ヒカトキD/S「トキ、"止まれ"!」
言った瞬間、しまったと思った。
今にも駆け出して行きそうだった程小時の身体が、陸光の命令を受けてびくりと止まる。
程小時が驚愕に震えているのが分かる。
これは、commandだ。陸光は今まで一度も、ダイブ中にcommandを発した事がなかったのに何故と。信じられないと最初は純然な驚きで目を見開いた程小時の思考が、徐々に憤りに染まるのは必然だった。
「っ……"光光"!」
張り裂けるような声で程小時が叫ぶ。息を荒げ、顔を蒼白とさせる彼の様子に、後を追ってきた母親が心配そうに駆け寄った。
「お前、ふざけるなよ……やっていい事と悪い事があるだろうが!」
程小時の鋭い非難に、陸光は全身から力が抜けたような心地がした。
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