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    光时
    3-5話のD/Sバースif

    ヒカトキD/S「トキ、"止まれ"!」
    言った瞬間、しまったと思った。
    今にも駆け出して行きそうだった程小時の身体が、陸光の命令を受けてびくりと止まる。
    程小時が驚愕に震えているのが分かる。
    これは、commandだ。陸光は今まで一度も、ダイブ中にcommandを発した事がなかったのに何故と。信じられないと最初は純然な驚きで目を見開いた程小時の思考が、徐々に憤りに染まるのは必然だった。
    「っ……"光光"!」
    張り裂けるような声で程小時が叫ぶ。息を荒げ、顔を蒼白とさせる彼の様子に、後を追ってきた母親が心配そうに駆け寄った。
    「お前、ふざけるなよ……やっていい事と悪い事があるだろうが!」
    程小時の鋭い非難に、陸光は全身から力が抜けたような心地がした。
    ダイブ中のcommandは二人の間でのご法度だ。そもそも、同意のないプレイは通常のパートナー間でも犯罪なのだ。
    commandを程小時が遂行できた時には誉めなければならない。でも程小時は言葉だけで褒められるのは足りないと嫌う。すぐにdropしてしまうから、撫でてやれないダイブ中にすることはできない。
    それなのに焦燥に駆られ咄嗟にcommandしたばかりか、彼にセーフワードまで言わせてしまった。
    セーフワードはsubにとって負担が大きい。実際程小時の意識は今にも途絶えそうだ。
    陸光はなんとか気持ちを落ち着けると、すぐさまケアを始めた。
    「トキ、俺が悪かった。お前は何も悪くない。お前は良い子だ。優しくて……純粋で」
    辿々しく陸光が言葉を紡ぐと、程小時は恐慌状態から少し落ち着いたようだった。それでも彼は陸光に反応を返すことなく自転車のペダルに足をかけると母親の手を振り切って走り出す。陸光は何を言うことも出来ず、ただ程小時の行動を見守った。

    結局、村人を説得できず傷心のまま帰路についた程小時は、先刻のことも相まって再び恐慌状態に陥りそうだった。
    「ヒカル……」
    「どうした」
    「母さんだけでも、救いたい」
    駄目だ、とはどうしても言えなかった。ここで強く否定をしても、程小時に命令し強制的に言うことを聞かせようとしても、彼はまたセーフワードを使うだけだろう。これ以上負担をかければ、本当にdropしてしまう。
    「……分かった」
    程小時が安全に戻って来られれば、それで良い。戻ってきた後にどれほど責められても、憔悴していても。陸光の手の届く範囲に戻って来ればケアをする事ができる。

    物事は陸光の思い通りに進み、案の定程小時はdropを起こしかけて戻ってきた。
    ガタガタと震え、焦点の合わない瞳から涙を流している程小時を抱き寄せ言葉をかけ続けると、だんだんと瞳が輪郭を取り戻していく。背を撫でて深く呼吸をするよう促し、陸光は程小時の身体を強く抱き込んだ。
    dropの状態は抜けただろうか。確認するため程小時を覗き込むと、彼は光を失った昏い瞳で陸光を見返した。近づく陸光を押し除けて、一人で立ち上がる。
    陸光も程小時に合わせて立ち上がると、二人はしばらく無言のまま見つめあった。
    「しばらく、依頼は受けない」
    先に沈黙を破ったのは程小時だった。程小時の言葉を既に予測していた陸光は、従順に頷く。
    「ああ」
    「プレイもしない」
    冷静でいようと努めていた表情が一瞬固まった。
    しかし、パートナー関係は信頼を前提として結ばれる。今回のことでその信頼が崩れてしまったのだから、程小時がプレイを忌避するのも道理だ。
    感情をなんとか飲み込んで、陸光は是を返す。陸光の答えを見て、程小時は無表情のままついと指をあげた。
    その指がそっと彼の首輪に触れたことで、陸光は頭が真っ白になった。契約を示す黒い首輪。それを外すということは、パートナー関係を解消するということだ。
    思わず手を伸ばしてしまいたくなる衝動を、陸光は拳を握り締めて耐える。奥歯を噛み締め、それでも縋るように程小時の首筋を睨む陸光の様子に、彼は何を思ったかピタリと指を止めた。
    考え込むように沈黙して、しばらくの後、程小時は腕を下げる。彼はそのまま何も言わずに背を向けて、階段を上って行った。

    程小時の背中を見送ると、どっと冷や汗が出た。足がガクガクと震えて全身から力が抜ける。陸光は先ほど程小時がしていたのと同じように床に膝をつくと、背中を丸めた。
    間違いを犯したのは自分だ。たとえ未来を変えてはいけないのだとしても、程小時を止めるためにcommandを使うのは横暴すぎる。そうと分かってはいても、パートナー契約が切られそうになるのを目の当たりにすると冷静ではいられなかった。
    程小時の方から契約が切られることはないだろうと驕っていた。
    陸光は両手で顔を覆って、必死に息を落ち着ける。
    命令したい衝動が強く襲ってくるが、陸光の欲望を埋められるのは程小時しかいない。程小時が駄目だと言えば、陸光に欲を満たす術はない。
    どうすれば程小時との関係を戻せるのか、疲弊した頭で考えながら、陸光は長い間リビングに蹲ったままでいた。
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