思いついたところだけぞくり
身の毛もよだつとはこのことか。『その』時はいつだって不快極まり無かった。
永久に続くかのように見えた安寧と静謐から無理矢理引き摺り出される感覚。意識が無から浮かび上がっていくというのに、まるで水に沈められているかのような感覚。
苦しい、苦しい。さっきまで息をする必要なんて無かったのに、肺は酸素を求め、下手糞な呼吸を再開する。
割れた頭蓋、溢れた脳漿をそのままに、ぐちゅぐちゅと嫌な音を立てながら、人工物みたいなショッキングピンクの肉と血が隙間を埋めようと蠢く。
鉛のように重い身体。そう認識できる意識が形になって、手足のひとつも動かせないまま藻掻き苦しんだ。
やがて、耐えかねて口を開け、浅く息を吸う。それと同時に瞼をカッと開いた。
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