太陽ですら月には勝てない「シュウ、シュウ」
蜂蜜をたっぷり溶かしたような、とろりとした甘い声にゆっくりと瞼を開ける。暗い部屋にぼんやりと浮かぶふたつのすみれ色が、こちらをじっと見つめていた。
寝起きで定まらない視界のまま軽く当たりを見回して、まだ夜であることを確認する。回らない頭でなんとなく状況を整理していく。
そういえば、今日はあっちの仕事で遅くなるって言ってたっけ
「ん、ん…るか…?おかえり」
「シュウ、ただいま。ごめんね、起こして…」
僕が起きたことに気付いたルカが、嬉しさと申し訳なさの混じった微妙な顔のまま口をもごもごさせて覗き込んでくる。珍しい表情に面白さよりも心配が勝った僕は、目を擦って軽く身体を起こした。
「どうしたの?なにかあった?」
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