A.逃しませんが何か?「お前は、人間じゃ無いから」
「だから、好き」
お気に入りのヌメ革のソファに沈み込みながら、ミスタがぽつり。と呟いた。
極自然に、ほろりと落したその言葉に幾つかの仮定を立てながら、ヴォックスは持って来た毛布でミスタを包み込むとぎゅっと抱き締めた。
暫くモゾモゾと逃げ場を探すように身動いだ後、漸く観念して自分に身を預けたその背を撫ぜながら、彼の中で膨らんで弾けそうな思考をもう少し、吐き出させんと言葉をかけた。
「それで、永遠か刹那の、何方に折合いが付いたんだい?」
ヒュッと息を呑む音がして、悪戯を咎められた子供のような顔でちら。とこちらを見たかと思うと、さっと首を縮めてグリグリと肩口に擦り寄った。
「ひとつ。私がミスタから離れても、ペットに飽きたとでも思えば諦めが付く」
799