それは、とても小さな「何か、俺としてみたいことはないのか?」
唐突だった。鍾離に連れられて、軽策荘で筍を掘っていた時だった。無言で土から出たばかりのそれを取っては籠に入れていると、同じく筍を吟味していた鍾離に声を掛けられたのだ。
「……特には、ないです」
一秒程考えてはみたが、何と答えるのが正解かわからず、思い浮かぶものはなかった。
「ほう? 俺は、お前と筍を掘ることも、お前としたいことの一つだった」
「左様でございますか…… 」
自分と筍など、いくらでも掘れる機会はあるというのに、それが鍾離のしたいことだというのが意外だった。
「どんな些細なことでも構わないんだ。お前の好きなことを俺に共有してくれるのでもいい」
「なるほど……」
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