フォーチュンドール5章4話唯は幸たちが鍛錬している場所に凛太郎と共に行った。幸たちが唯を見かけると少し休憩しましょうと言い、室内の休憩室に向かっていった。
「唯、そちらの方は?」
「凛太郎さんです。この前仲良くなってからいつも話し相手になってくれるんです。」
「えへへ、よろしくお願いします。」
「おや、お前はいつぞや魔導書を盗んだクズ魔導士ではないか。」
「ひぃ!何でそんなこと!」
「魔導書を盗んだ?」
「こいつは魔導書を盗んでいろいろやっていたようだが、その時の能力は魔導書に戻させてもらった。だがそのための魔女が力を使い果たし眠っている状態だ。」
「魔導書に能力を戻すことは可能なのか?」
「今はできぬぞ、へっぽこ魔導士。」
「魔導書を読んだ尼波に何も起きなきゃいいんだが。」
「え?この中にも魔導書を読んだ人がいるの?」
話をしていると、いつの間にか外は雨が降り出しそうなほど雲に覆われていて薄暗くなっていた。雫が電灯をつけようと立ち上がった瞬間、大きな音とともに外が光った。雷が鳴ったのかと思い、ヒッと声をあげる雫。しかし、外は光ったまま、窓から外を見ると何かがヒラヒラと動いていた。
「おや、最近所々で出てきている魔物というやつか?」
信楽は窓の方を見ていたが、幸達の方を見き直し、お前らの実力を見せてみろと言い、全員外へ向かわせた。すると外には巨大なクラゲのような魔物が雷撃を放ちながら居座っていたのである。
一方その頃、誉は親友の望とともに散歩をしていた。この前来た科学部の施設の近くを歩いていると、何かが目の前を横切った。そしてそれは勢いでその建物にぶつかると建物の一部が崩壊した。何事かと思い、その方向を見るとそこには3匹ほど魔物がいた。誉と望は目を合わせて頷くと武器を構え、魔物の方へと向かった。
科学部の施設の中には夏希がおり、大きな揺れが起きたため、何事かとひとまず、屋上に駆け込み、翔織に何が起きたのか聞こうとした。翔織の叫び声が聞こえ、夏希が翔織の見ている方向を見ると建物が壊れているのがわかった。そして翔織曰く、ちょうど建物の壊れた部分には粒体マナの貯蔵庫があったようで、翔織は半狂乱で、武器に乗りその場所へと向かっていった。夏希がライフルのスコープでその場所を見てみると、ケンタウロスと思われる魔物が3匹、そのうちの1匹は頭が立派なライオンになっているいわばレオケンタウロスで、大きな盾と槍を装備していた。あれが突っ込んできたんだから貯蔵庫はひとたまりもないだろう。そして、その周りには他の科学部の人たちもなんだなんだと集まってきた。レオケンタウロスが槍で薙ぎ払いを行うと、そこそこの人数だった科学部の人たちを一気に蹴散らしていく。それから、その散り散りになった人たちのもとにケンタウロスが突進していくのである。夏希はどこから狙いを定めるべきかわからず、一旦スコープから目を遠ざけ、現場の状況を見渡している。そうしているうちに、レオケンタウロスのもとに望が現れた。望がレオケンタウロスを挑発して意識を向けさせると、翔織は望の後ろに誉がいることを確認した。いろいろと事象が重なり眉間にしわを寄せる翔織はレオケンタウロスを2人に任せて、ひとまず2匹のケンタウロスを片づけることにした。そのうちの1匹は周囲の科学部の人らに指示を出し、倒してもらう。そしてもう1匹はまず自らの武器を当て、動きを鈍くさせ、翔織は夏希の方を向き、合図する。それに夏希は気づき、ライフルでケンタウロスを撃ち、ダメージを与える。そうこうしているうちにケンタウロス2匹は撃破できた。望と誉はかなりの連携力でレオケンタウロスと戦っているが、相手もかなり強く苦戦していた。望の二つの剣、誉の二丁拳銃、互いの炎魔法でレオケンタウロスを弱らせ、さらに、望の剣術でレオケンタウロスの盾をぶっ壊した。その瞬間、ケンタウロスを倒した翔織や夏希、他の科学部の人たちの一斉攻撃がレオケンタウロスにトドメを刺した。落ち着いたところで翔織は貯蔵庫となっていた、建物の一部を見た。大きくため息をつき、後ろを向くとテレポートしてきた夏希が脅かしてきた。ビクリとした翔織を見て、夏希は笑った。それを見た誉は夏希に話しかけた。
「おう、なかなかいい性格してるなおい。」
「はははっ。まぁ翔織さんも落ち込んでないでまた粒体マナ作ればいいでしょ?」
「これだけ作るのにどれだけの労力がかかったと思っているんだ!ふざけんなお前ら!今は顔も見たくねえ!帰れ!」
「まぁ、落ち着けよ。あ、そうだ…蛇でもなでるか?」
「それで落ち着けるバカがいるか!いるなぁ!勝手にやってろ!」
「みんな疲れてるだろうし、とりあえず今日は…ってあれ?」
夏希が場を解散させようとすると、近くに数人の魔女が現れた。魔物の情報をかぎつけてきたようで、騒動に巻き込まれた人たち全員が魔女たちに引き留められた。
幸達は苦戦していた。メンバーが魔法中心の戦闘力の中で相手の魔法抵抗が高く、攻撃が全く通らない。戦闘中に分かったことはクラゲの上部に三つの核があり、それを全て壊せば倒せるというところだが、将信のゴーレムの拳ですら、魔物の雷撃に憚れてまともにダメージを与えることができない。その時、雫が泣き出しそうになり、魔力暴走してしまう。幸はいつもの癖で衝撃吸収を行うが、雫の魔力なら相手をひるませるくらいはできたかも思った。ならば、この衝撃を相手に撃てば…幸は衝撃を解き放ち、相手はひるんだ。その隙に将信がゴーレムで拳を魔物に当てるが、核までは届かず…再び魔物が動き出すと。また、雷撃を放った。信楽は加勢することなく、様子を見ている。凛太郎はこんな時マナイーターがあればなと思うが、何もできない以上、唯と逃げることを考えていた。
「唯ちゃん、ここじゃ危ないから逃げよう!」
「だめだよ!仲間を置いてなんて逃げれないよ。」
「相手に魔法も効かないんだよ、僕にだってどうすることもできないよ。」
「魔法が効かないなら物理でどうにかしよう。そうだ!しず、銃か何か出して。」
雫は戸惑いながら、急いでスケッチブックを取り出し、急いで銃だと思うものを描き、実体化の念を込めてその紙を唯に手渡した。
出てきたものは手斧であった。
つづく