フォーチュンドール6章6話「ふふふっ、なぁにその魔女をこっちに渡してくれれば危害は加えないさ。」
「今の姉さんじゃ信用できないね。雫は渡さない。」
「そうか、ではお前たちを倒すまで。」
澪は先程まで餓者髑髏と戦っていたため万全の状態とは言い難いが、雫を守るために必死だった。朝が剣を振るうと、それを夜が大剣で受け止め、その隙を澪が攻撃をする。将信は他に敵が来ないか、警戒していた。しかし、朝は強く、2人を薙ぎ払っていく。そして、的を澪に絞り一気に攻め込んだ。将信も咄嗟に朝の足元を崩すが、朝はうまくそれを切り抜け、澪を攻撃した。固い音がする。ここまでかと思った澪が顔をあげると、そこには帽子をかぶった長髪の男性、瀬津がそこにいたのだった。
「久しぶりだなぁ朝。」
瀬津が朝にそういうと、風が吹き荒れ、風魔法による斬撃が朝を襲う。しかし朝には全く効いていないようでにやりと笑い、以前澪の前でやったように髪が短くなり尾びれと背びれが生え、両腕をブレードにした。悪魔化、朝のその姿はまるでシャチである。そして、朝は瀬津と1対1で勝負をし始めた。互角の勝負であるが瀬津のほうが押されているようだ。夜が澪に駆け寄ると澪は知り合いなのかと夜に聞いた。前に夜が話していた瀬津という人物だと聞くと、澪は加勢しようとした。それに対し、漣が二人の前に行き、ここはプロに任せ、逃げるように促した。しかし、夜は朝の事で逃げるわけにはいかないと食い下がらない。漣はため息をつく。
「それなら、この子と一緒に居てくれないか?僕が瀬津さんの加勢をするから。」
「瀬津さんだいじょーぶ?」
「天音ちゃんはここでお兄さんたちとみてて?」
「プロと言えど小さい子を連れてるというのは…」
「まぁ、こっちもいろいろあるからね。」
漣は天音を澪と夜に預けて瀬津に加勢した。魔法がほとんど効かないとはいえ、足止めくらいはしていた。漣はその体をハーピーの形に変身させ、その鋭い爪で朝を攻撃することもあった。幸と雫も澪が心配になり向かうと澪はお前らだけでも逃げてくれという。その隙に天音が瀬津の所へ向かっていくのに澪は気づかず、夜も手を伸ばすが天音の動きは早く、やばいと思った瞬間であった。
「瀬津さんをいじめるなー!」
天音はおもいっきり朝の向って突進した。朝もそれに気づくが、そのせいで気をとられ、漣の爪にがっしりと肩をつかまれてしまい、突進による天音の頭突きを真に受けた。その隙に瀬津が朝に大きな一撃を与えて、朝を気絶させたのである。朝は元の姿に戻った。
「すいません、一緒に居ろと言われたのに…」
「こういうことがあるから、見ていてほしかったんだけど…はぁ…」
「漣さんお久しぶりです。」
「あぁ、あの時の、尼波さんと譲葉さんだっけ。」
「雫?こっちも知り合いか?」
「あぁ…はい…魔法…教えてくれた…」
「瀬津さん、姉ちゃんの事…」
「殺しちゃいないが、このまま悪魔の状態から戻りそうになかったら、殺すつもりでいる。」
「そんな…」
「当然だろ兄弟、このまま悪魔のもとにずっといるくらいならそういうことも。」
夜は朝を揺さぶった。漣にやめなさい止められる。瀬津は朝の事について、悪魔の事について、幸たちに情報がないか聞いてきた。瀬津が言うには、最近の魔物が増えている件に何か悪魔が絡んでいるのではないかと推測した。幸は悪魔の事だけでなく、魔導書の魔物についての話もした。瀬津は朝をとりあえず回収し、魔物ハンターのもとで調べると言い、朝を担ごうとすると、夜が一言。
「せめて、姉ちゃんを最後に見ることになるかもしれないならやりたいことがある。」
「なんだ?」
「おやすみのキスをさせてくれ!」
澪が噴き出し、漣はポカンとし、瀬津が頭を抱えた。瀬津は天音もいることだし、教育に悪いと断った。
「兄弟…何を言って…」
「夜…いや、朝がそういう奴だったんだよ…あいつ夜を溺愛してこういう教育してたんだよ…」
その場にいた全員がドン引きした。漣が今後の事は任せて今日は帰るように伝えると解散になった。夜は魔物ハンターについていくことにした。
数時間後…瀬津はまた頭を抱えていた。漣も表情がすぐれない。しかし、夜は上機嫌であり、天音は不思議そうな顔をしていた。
「朝…お前そんなに情報あっさり吐いていいのか?」
「あぁ、これが悪魔の目的と情報。」
「そんなことより、お前…どんな教育をしたらこんな弟ができるんだよ!いきなりのスキンシップで洗脳が解けるってどういうことだよ!」
「真実の愛ってやつか?」
「天音ちゃーん、こっちの部屋行こうね~!」
漣は天音を連れてその部屋から逃げるように出て行った。あの後、朝の目が覚めると夜は朝にハグをし、いろいろあって悪魔の体質を保ったまま、悪魔からの洗脳が解除されたようだ。そのまま夜と共に平然と帰ろうとする朝に対して、瀬津は悪魔になってることで魔女たちに目を付けられないかというと、朝は数日待ってある程度ほとぼりが冷めてから、魔女たちに言うことにすると提案。上手くいくのだろうか…
澪は夜からの情報をスマホで確認した。とりあえず、朝が絡める範囲で悪魔の事については一安心といったところか。澪はとりあえず、気分転換のために真昼と雫と買い物に行くことにしたのだった。
あれから数日が経った。将信は本体が回復したので久しぶりに元の体に戻った。幸がそれに対して。
「先輩、人形の姿のほうがかっこいいですよ。」
「やかましい。」
何だかこの会話もいつも通りになってきたな。そんな幸は将信に1つ封筒を見せた。将信もその封筒を持っているようで、中身も同じものであると確認した。「魂の能力者、強化講習」と書かれていた。幸は将信に行くかどうか確認すると、他にどんな魂の能力者がいるのか知りたいと言った感じであった。幸は将信が行くのなら行くと言った感じで一緒に行くことにしたのであった。
フォーチュンドール6章 終