フォーチュンドール7章2話次の日になり、幸と将信は魔女の集会場に来ていた。朝と夜、そして魔物ハンターの瀬津と漣、天音もそこにいた。朝が言うにはもしも人形達が悪魔に操られていたりした場合、魔物を召喚してくる可能性があるという。そこで魔物の気配を察知できる瀬津と漣が人形達を見つけ出すことが出来るのではないか憶測と、本当に魔物を召喚した際に仲間になって戦ってくれるというのだ。
「人形だけは壊さないでほしいのですが…」
「うまく捕らえたらいいんだね?でも朝さんは夜くんの力で解けたけど、人形達が洗脳されていたらどうすれば…」
「そうなっていたら、とりあえず私のカバンに入れておいて、洗脳を解く方法を見つけます。」
「それで君に被害がなければいいのだけど…」
「もしそれでも危険があれば、人形達から魂を抜きます。」
幸は自分の能力と人形達の事について魔物ハンターたちに話した。瀬津が人形達を壊す必要がないと判断すると漣は安心した顔をした。しかし、何かを感じたのか、漣の表情は一変して、別の方向を見始めた。
「瀬津さん、これは僕の勘違いじゃないよね?」
「あぁ、近くに魔物が出現したな。」
「いきなり気配がしたから人形達の召喚かもしれないね。行くよ。」
瀬津と漣は魔物の気配を追い、その場から飛び出していく。幸と将信もついていく。そして天音もついていこうとしたが朝と夜がそれを止めた。
「わぁん、瀬津さん行かないで~。」
「お前さ~、あぶねえからいったん帰ってみんな待とうぜ。」
「いーやーだー。」
「そもそもなんで瀬津はこんなチビッ子連れてるんだろうね。」
「身寄り無かったんじゃねーの?」
朝が天音を担ぐと、天音は体をジタバタと動かして抵抗する。夜はあとで瀬津に連絡するとして、朝とともに天音を魔物ハンターが拠点にしている基地へ連れて行くことにした。
一方、零子は幸の事情を雨に話して、2人で人形探しをすることにした。クランも誘ったのだが床屋に行くから遅れると言っていた。零子は魔女の集会場近くで能力である5感強化を駆使し、人形の匂いがないか探している。
「人形の匂いなんて分かるのか?」
「幸さんをちょっと薄くした感じかな?」
「いや、匂いなんてすぐ忘れると思うけど…」
「そうかな?他人の家とか行くとその人特有の匂いで充満してるとかで覚えたりしない?」
それでも納得いかない雨は零子の能力の弊害かなと思うようにした。匂いフェチでもあるまいし。零子は匂いをかぎ分けていると、魔女の集会場に幸がいることも確認したと雨に言うと雨は零子をストーカー扱いした。
「雨ちゃんひーどーいー。」
「いやぁ、能力とはいえそこまでわかってるとなんかきめぇ…」
「でも幸さんと別の似たような匂いもするから、やっぱり魔女の集会場に一個くらい偵察に来ているのかも。」
悪魔がまだ魔女を狙っているのなら集会場の偵察に来ていてもおかしくないという憶測でこの辺りを探していたようで、どうやら当たりみたいだが、肝心の敵の姿が見えない。零子が根気よく探すと、フェルネリシアを発見した。ミラルージュも確かにお姉ちゃんだとおもいフェルネリシアに近づく。
「見つけた!」
「お姉ちゃんみーっけ!ねぇ、他のお姉ちゃんたちはどこ?」
零子がフェルネリシアに手を伸ばしたが、フェルネリシアはその手を跳ね除け、逃げていく。雨が念力でフェルネリシアの動きを止めるとフェルネリシアは5体ほど召喚し、それぞれに強化魔法をかけ始めた。そのお陰で魔物の攻撃の一撃は重く、雨もフェルネリシアに念力をかけているため全力では戦えず、苦戦を強いられた。ミラルージュは念力で動けないフェルネリシアの近くまで行こうとするが魔物に行く手を阻まれ、それに気づいた零子もミラルージュに傷がつかないように庇っていたら上手く戦えない状態であった。雨が一旦念力を解除すべきか考えていると、魔物の一体の攻撃が繰り出され、それを防御していると、後ろから別の魔物が攻撃を仕掛けてきた。まずいと思った矢先、雨の後ろに光の盾が現れ、攻撃を凌いだのだ。そして後ろにいた魔物に閃光が突き刺さり、その魔物を踏み台にしてクランは雨を飛び越えて剣の形にしたその魔力で雨に攻撃している魔物を切りつけた。
「雨、キツそう?」
「人形の動きを止めるので手いっぱい。」
クランは雨の周りの魔物を倒しきれていないと判断すると、雨が逃げやすいように、フラッシュで相手の視界を曇らせ、雨を零子の所に向かわせたところで2体の魔物の相手をした。光魔法で盾と剣を大量に作り、道場で習った剣術で魔物を倒していく。雨は疲弊している零子に近づき、残り3体の魔物をどうしようかと考えようとしていたが、その時に救助が来てくれた。魔物ハンターの2人が3体の魔物と応戦すると、幸もそこにやってきて、フェルネリシアを回収した。フェルネリシアは再び魔物を召喚しようとするが、そこにミラルージュが駆け寄り、手を伸ばすと、ミラルージュから謎の魔法が繰り出され、フェルネリシアの動きは完全に止まった。フェルネリシアが体をぐったりさせると、ミラルージュはフェルネリシアの顔をあげて目を見つめた。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「ミラルージュ?私はいったい何を?」
「よかった~、誘拐されたって聞いたし、魔物を出すし、びっくりしたよぉ。」
「フェルネリシア、何か覚えてることはあるかしら?」
「とても疲れて、頭が混乱してて…」
幸はひとまず、フェルネリシアを休ませることにしてカバンに入れた。瀬津もクランも魔物を倒し終えたようで、その場にいる全員が幸のもとに集まった。幸は瀬津と漣の引き続き何かあれば連絡しれもらえるようにお願いすると、瀬津の携帯に連絡が入った。夜からのもので天音と共にとりあえず帰っているとのこと。
「天音のやつ、暴れてないといいんだが…」
「まぁ、のんのんもいるんだし、大丈夫でしょ?」
「のんのん?まだほかにもいるのですか?」
「あぁ、のんのんはリーダーの愛称。一応、人形の事もリーダーに話しておくよ。」
漣はそう言い残し、瀬津と共にその場を後にした。零子はミラルージュに危ないことはしないようにと説教すると、幸は大切にされていることでとてもうれしくなった。そしてミラルージュになにか魔法を使ったかと聞くと、ミラルージュは気が付いたら使っていたというが、おそらく洗脳解除関係ではないかと幸は予想し、もし他にも人形を回収したら同じことをしてほしいと頼んだ。ミラルージュはお姉ちゃん達のためなら頑張ると言った。クランは雨と零子がだいぶ怪我しているのを見て心配した。
「みんな必死になってるけど、くれぐれも無理すんなよ。」
「なんだよ~。クランにしては弱気だな~。」
「そりゃ、そんなボロボロになったら心配するって、雨だって自分のこと大事にしてくれよ。」
クランが軽く雨の頭に手をのせると雨は顔を赤くし、うるさいと一言。そういうことが言えるならまだ大丈夫か~とクランが言うといつも通り殴られた。幸はミラルージュの事もあるので零子に他の人形達を回収したら連絡すると言い、今日はしっかり休んでほしいと雨と零子を見送るのだった。
つづく