フォーチュンドール7章3話フェルネリシアを回収した翌日、昼すぎ頃にようやく気が落ち着いたフェルネリシアは幸と話す準備ができたようで幸と将信、グレーラの前で思い出せる範囲で話そうとする。
「たしか…それは霊魂で体を取り戻そうとしてて…」
「先輩のように霊魂で彷徨うことのできる存在なのかしら?」
「いや、俺は魂を交換するだけで魂を漂わせることはできないぞ…」
「絨毯…?吸血…?幸運…?停止…?えーっと…」
「どうしたの?その単語が結びつくの?」
フェルネリシアはだいぶ記憶が曖昧になってきたようで、ひたすら関連しそうな言葉を羅列していく、その中でグレーラが気になった言葉があった。それは「蛇」であった。グレーラは蛇壺の件を思い出した。
「蛇ねぇ…うちは苦手だなぁ。もう二度とあんな目には遭いたくないわ…」
「蛇…なにか一族だったような…」
「一族…?」
メモを取りながら話を聞いている幸は何も思いつかず、どうしたものかと考えた。その時にグレーラが不本意であるが、鶴花に何か蛇に関連する一族など詳しくないか聞いてみるのはどうかと提案した。幸は携帯で鶴花に連絡してみた。
鶴花はそのころ、兄である誉と貝森特区内にある借家で話していた。最近、友人の作った動く人形が盗まれたという話であるが、誉はあまり興味がないようで、呪いの大蛇を召喚して愛でていた。そして噂をすれば影か、幸から電話がかかってきた。
「もしもし、ちょうどお兄様にあなたのことを話してたところ。」
「と、突然すいません。人形の一つを取り戻したのですが…」
「あら、よかった~この調子で他の子も見つかるといいね。」
「それが情報を得ようと、人形に話を聞いたときに蛇という言葉が出てきて…関係する一族とか知らないかな~って…」
「私の生まれ育った村は蛇を崇拝しているわ。そこの一族育ちで、だから蛇壺を持っているのだけど…」
鶴花が電話中にふと窓の外を見ると、小さな人、いや猫耳のついた人形が借家の中をのぞいていた。
「ねぇ、もしかして幸さんの人形に黒い髪で猫耳の子っている?今、目の前にいるんだけど。」
「あ、はい!私のミウって子です。もし捕まえられたらお願いしていいですか?」
「わかったよ。とりあえず今の場所情報、そっちに送っておくから待ってるね。」
幸の携帯に鶴花の位置情報が送られてきた。幸は今いる人形を連れてその場所に向かうことにした。家を出てすぐ、夏希とすれ違った。夏希は幸の近くに人形姿の将信を見かけるとまた本体に何かあったのかと察して、話かけて来た。
「おう、将信~そんな姿でどうしたんだい?」
「悪魔に体を持ってかれてしまってな。」
「なかなか面白い趣味してる悪魔っすね~。」
「とりあえず、尼波の人形も盗まれて利用されているようだから取り返そうとしているんだ。もし見かけたら回収してほしいが、魔物を召喚するから注意してほしい。」
「OK!ついでに将信の体も探してみるよ~。」
「そういえば、お前の姉さん、魔女の集会場で実験体にされそうだったぞ…」
「まーじか!情報thank you!今日は用事があるから明日行ってみるよ!」
夏希と別れようとしたとき、幸はふと先程書いていたメモを夏希に渡し、もし魔女の集会場でこれらの言葉のヒントの情報を得られたら連絡が欲しいと言った。夏希は首をかしげるが、悪魔に誘拐されて回収した人形が言った言葉であることを夏希に説明し、自分ではよくわからないかもしれないと、魔女の集会場に行く際に澪も誘うと言って別の用事に向かっていくのだった。
鶴花は窓を開けるとミウが中に入ってきて、家の中を見渡し、鶴花がミウを捕まえると、抵抗することもなくミウは鶴花を見つめ、一言放った。
「ねぇ、蛇神様に会いたいな。」
鶴花は大変驚き、咄嗟に誉の方を向き、誉を呼んだ。誉は何事かと、呪いの大蛇と共にミウのもとへ行く。ミウは誉たちに対して蛇を崇拝する一族であること、誉の連れているのが呪いの大蛇であること、そして蛇神様に会うにはどうすればいいかという。それらの単語がすらすらと出てくるだけで誉はミウを睨み、銃を突きつけた。
「何者だ?お前は何を知っている?」
鶴花が、これは先程言った友人の人形であるため、あまり壊さないように言うが、ミウは鶴花の手から離れ、外に逃げて行こうとする。しかし、鶴花がすぐに蛇壺を持ち、ゲートを出してミウを捕まえ、中に閉じ込めた。誉は人形ごときが蛇を崇拝する一族の事をなぜここまで知っているのか不思議に思ったため、鶴花にその友人ことを聞いた。鶴花はさっきまで話していたことを最初から話した。悪魔に数体の人形が盗まれて、何体かは取り戻したが、その人形も蛇という単語を出したようで、関連性はいまだわからず。そうこう話しているうちにインターホンが鳴った、幸であった。鶴花は幸を迎え入れ、ミウを蛇壺に入れたと説明して、どうしたらいいか聞いていると、そこに誉が割って入った。
「お前は蛇を崇拝する一族の事をどれだけ知っている?」
「え…あ…っ何も…」
幸はかなり冷や汗をかいている。誉が幸を威圧すると、将信が相手すると言い、幸を庇った。
「俺たちはそんな一族の事は知らない。知ってるなら俺たちを狙ってきた悪魔のほうだ。人形がお世話になったようだが何か言ったか?」
「俺たちの一族にしかわからないことを淡々と話していた。どういうことだ。その悪魔とやらはどんな奴なんだ?」
「死神のような見た目だったが何かわかるか?」
「さぁ、分からないな。」
幸が心を落ち着けると、将信にさっきフェルネリシアが言っていた言葉の関連性を聞くように言う。
「あぁ、そういえば回収した人形も蛇とかその一族とか言っていたが…あと他には…えーっと?停止とか幸運とかだっけ?あとは絨毯?」
「絨毯…」
部屋の奥から深緑の長い髪、黄色い目、紫の服を来た男性が一つの単語に引っ掛かり現れた。幸はその顔の良さに咄嗟にその人の方を見た。番外編を見た人なら分かるかもしれないが呪いの大蛇が人に化けたものである。
「蛇の絨毯…それが悪魔の目的だというのなら…まずいな…」
「ロイ…まさか…」
「あぁ、俺はいったん村の社殿に戻るぞ。」
「蛇の絨毯とはなんだ?」
「それはこっちの話だ。最近の事だ、上級の蛇使いでもないのにミズチを下ろした奴もいる。こちらとしても情報を集めるため人形を回収したらもう帰れ。」
「悪魔の目的がわかるなら教えてくれ。」
「まだ蛇壺の中の人形が悪魔の味方をしてるならここで話すのは危険だ。」
ロイと呼ばれた男はさっさと幸達を追い返す。幸がミウを受け取り、その場を後にし、零子にまた人形を回収したことを伝えた。誉がロイに悪魔の目的を聞く。しかし誉たちの住んでいる借家近くにもう一体、人形がいることに誰も気付かなかったのである。
「ミズチを下ろした…なるほどねぇ~。」
アリサはこっそり操っている主のもとに向っていくのだった。そして、ロイを蛇神様の所に送ると、ロイは他の蛇たちに蛇の絨毯であるフィオの様子をしばらく見ていてほしいと伝えていくのだった。
つづく