フォーチュンドール7章4話唯と凛太郎は散歩していた。今日も何事もない平和な一日で、他愛もない話で盛り上がっていたところ、突然ティンダロスが何かを見つけたのか、走り出した。唯と凛太郎もそれについていくと、そこには幸の人形の一人であるリレットがいた。何も知らない唯はリレットが幸の元を離れて、迷子になってしまったのだろうと思い、声をかけた。しかし、リレットは逃げていき、唯が追いかけると、リレットは振り向き魔物を召喚した。
「え?なんで?どうしたの!?」
「ついてこないでほしいのです!」
「待ってよ!幸さんから逃げてきたの?なんで?」
「関係ないのです!邪魔をするなら容赦しないのです。」
唯と凛太郎は状況が読み込めず、魔物と対峙することになってしまった。
幸はミウを回収した翌日、零子と連絡を取り、ミウの洗脳解除のため会うことにした。ミウが魔物を召喚したときのために雨とクランも一緒に来てくれたのだ。ミラルージュの魔法はやはり洗脳解除のものであり、ミウの洗脳も解けた。ミウは蛇神様に会おうとしていた目的は信仰によるものであると言っているのだが、悪魔が蛇を信仰しているというのは考えにくく、本当に魂の能力者を狙っているのは悪魔なのか疑問は増すばかりであった。そんな時に、幸のもとに連絡が来た。漣からのものであった。今、人形と魔物を発見して瀬津が戦っているようだ。そして、巻き込まれた人もいるという情報から、幸は急いでその場所に向かうことにした。将信や零子達も一緒についてきた。
同じ日、夏希は澪と雫を誘って魔女の集会場に来た。幸と将信のことを澪に話し、幸のメモ紙を見せるが、澪も何のことだかさっぱりわからず、とりあえず夏希の姉さんを探すことにした。雫が他の魔女たちに悪魔になった人間のことの話を持ち掛けると、ドクターのもとに案内してくれた。ドクターは何の用かと雫に聞きたとき、夏希は部屋の隙間から上半身のみにされた冬希の姿を目撃する。さすがの夏希も少し動揺し、冬希のもとに駆け寄った。
「こらーまだ研究の途中だがな。」
「なーにが研究だ―!お姉ちゃんは持ち帰るからなー!家族のもとに返してもらうぞ~。」
「なにをー!」
「まぁ、これが目的で来たんだが、ついでに聞きたいことがあって、悪魔の件で知り合いがこのメモを書いたようなんだが、何のことかわかるか?」
「ん~どれどれ?霊魂が体を…吸血…幸運…停止…絨毯…蛇の一族的なもの…ふぅん。一部だけ関連性があるとするなら、サザンクロスかな~?」
「サザンクロスって星か何かか?」
「まぁそうだね、名前の由来はそこからだと思うよ。4人の魔女の不干渉条約と言ったところか。そのうちの1人が信楽だけど、そういえば君たちの仲間の金髪の子が信楽を探してたねえ。」
「そいつのメモらしいが、その4人の魔女と関われば、悪魔から奪われたものを取り返せそうなのか?」
「それは知らんけど。でも信楽も最近見かけてないし、4人の魔女は魔女ネットワークにも入ってなければ、基本的に放浪してるようなやつらだからな~。そうだ!ダメ元だがこの地図の場所に行ってみるのはどうだ?」
ドクターは、部屋の棚から、貝森特区の地図を取り出し、町はずれのとある場所を示し、ここに霊魂の魔女であるコヨリという人物の拠点にしているところがあるというのだ。雫は地図の写真を撮り、幸に送った。夏希も将信の本体回収のための情報収集のために明日ここへ向かおうと澪に提案した。
幸が漣の連絡からその場所へ向かうと、唯と凛太郎がいて怪我をしていて漣が応急手当をしていた。その先に瀬津が戦っており、リレットは逃げようとしているが、どうやら凛太郎の樹属性魔法で木に引っかかっており逃げられないようだ。そこへミウとミラルージュが駆け寄り、リレットの洗脳を解く。瀬津も魔物を倒すと、洗脳解除を確認した。
「唯、ごめんなさい大丈夫?」
「まぁ、なんとか。それより、どうしたんですか人形達。」
「悪魔に誘拐されて洗脳されているようなの。まだ全員回収できてないわ。」
「そうなんですか!魔物も召喚して大変ですね。」
幸達は情報を整理するためにその場にいた全員で近くの施設に集まった。しかし、人形達からの情報を集めても悪魔の目的が何なのか、そもそもこれは悪魔の計画なのかも怪しくなってきたところ、幸の所に雫から連絡が来た。地図の画像と魔女の集会場で聞いた情報が記されていた。サザンクロスという4人の魔女の不干渉条約、そこに信楽も入っていて、何より気になったのがこの地図の記している場所は霊魂の魔女の拠点ということだ。霊魂が体を取り戻そうとしているという言葉が頭を過ぎったのでそれを全員に共有していた時、鳥型の魔物が窓から割って入ってきたのだ。壊れた窓の外を見るとそこにはアリサとカーマインがこちらを見ていた。
「邪魔者発見、報告しなければ…」
アリサはそう言い、1人だけ逃げていく。幸達が外に出ると、カーマインは魔物を大量召喚し、幸達に立ちはだかった。雨と零子は先程の鳥型の魔物、漣は負傷している唯と凛太郎の守護、瀬津と幸と将信はカーマインの周りの魔物討伐とカーマインの確保をした。人数がいたのと役割分担ができていたので、難なくカーマインを回収することはできたが、アリサは逃がしてしまった。しかし、雨は違和感に気付いた。この場からクランが居なくなっているのだ。零子が視力を強化して、近くの色にずれがないか探したがクランはどうやらいないようだ。ひとまず、施設の管理者に魔物が現れて建物の一部が壊れたことの報告をし、ある程度の掃除をしたところで、雨の携帯にクランから連絡が入ってきた。まず位置情報が送られてきて、電話がかかってきた。
「おい、クラン!なにしてんだよぉ。」
「黙っていなくなってごめん、光学迷彩でもう1人の人形を追いかけてた。おそらく悪魔のいる場所にたどり着いた。今、送った位置情報のところだから…はっ!?」
クランは話途中、振り向くとそこにはアリサがいた。雨の携帯にそれからクランの声は入らず、雨は混乱した。なんどもクランを呼びかけるが応答はない。雨は位置情報を確認し、すぐにでも向かおうとするが、それを瀬津に止められる。
「今から行くのは危険すぎる。」
「なんだよ!クランを助けに行かないと!」
「万全の状態じゃないのに強敵に向かうのはよくない。」
「でも…」
「ここは僕たちに任せて、体制を整えて明日その場所に向かうよ。場所を教えて。」
雨は気が気じゃなかった。漣が雨に深呼吸をさせて位置情報を確認する、そして幸も雫からもらった地図の場所と照らし合わせた。同じ場所だ。幸は人形の事、雨はクランの事もあり、自分たちも同行させてほしいという。瀬津と漣は少し考えたが、それを許可した。しかし、仲間を回収し、悪魔との戦いになったらすぐにでも逃げるように言った。幸達は承諾し、次の日に備えることにしたのだ。
つづく