空から変な奴が降ってくる1999年7の月、空から恐怖の大王が降ってくる──
「──で、世界が滅亡しちゃうんだって!どうしよ、燈矢兄?」
このところの冬美ちゃんの流行りはこれだった。
ノストラダムスの大予言に言及したメディアが連日嫌と言うほど目に耳に入ってくる。
「そんな予言当たらないよ」
「みんな当たっちゃうって言ってるよ!」
みんなって誰だよ。どうせ、クラスの噂好きの女たちが騒ぎ立ててるだけだろ。俺はクラスでそんなの、聞いたことない……聞く気がないから、聞こえてないだけかもしれないけども。
どうしようどうしよう!と独りごちながら冬美ちゃんは部屋から出て行った。
メディアもメディアだ。
大の大人がそんなものに踊らされて、連日新聞やニュースや雑誌で取り上げて騒ぐなんて馬鹿げてる。
本当に世界が滅びるなら、それならいっそ、もっと前に滅べば良かったのに。
ちりんちりん、と縁側の風鈴が鳴る。
窓から空を見上げれば、入道雲のなりかけが見えた。もうそろそろそんな時期になる。
(──今月の授業参観、お父さん来ないんだろうな)
ならいっそ、やっぱり、滅んでしまえばいいのに、こんな世界は。
ゆっくり形を変えていく入道雲のなりかけを見つめながら、そんなことを思っていた。
静かな日だった。
最近鳴き始めた蝉の鳴き声と、それとうちの縁側の風鈴の音だけが聞こえる。
入道雲のなりかけは、相変わらず入道雲になりきれずに流れていこうとしている。
そんな時だった。